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1ー6 帰ってきました

 エレナを先頭に、洞窟の出口へと向かう。


「あ、あの…」


 その時、1人の女性の冒険者が尋ねてきた。


「なんでしょう?」


 前を向きながら、エレナは女性に答えた。


「え、エレナさん?だったっけ。あなたも冒険者なの?」

「ええ、そうですよ。今はほとんどやってませんけどね」

「そ、その…階級はどれくらい?」


 女性がそう質問すると、エレナは振り向き、口に人差し指を当て、笑顔でこう言った。


「ヒミツです」


 その顔をまじかで見た女性は、顔を赤くしてしまった。遠目からみた男達も然りだ。それほど、エレナの笑顔は可愛いものだった。そのせいで、男の冒険者が自分に好意を持っていると勘違いし、襲ってきたこともある。

……まぁボコボコに返り討ちにしたのだが。


 エレナが階級を言わなかったのは、単に目立ちたくないという理由だけでは無い。冒険者というものは、自身の実力について、あまり公言してはいけないのだ。これは無駄ないざこざを無くすためでもある。その事を思い出したのか、女性がそれ以上追求することは無かった。


「あ、そろそろ出口ですよ」


 そんな話をしているうちに、洞窟の出口へと到着後した。ここまでの道のりで、盗賊や兵士たちに会うことは無かった。なぜなら、鉢合わせる前に、エレナが魔法で眠らせていたからである。無論、冒険者はその事に気づいていない。


 洞窟から出ると、外はもう太陽が顔を出していた。


「思ったより時間が経ってしまいましたね」


 この時間になると、外に出ていた盗賊たちは仮眠を取っているらしく、同じ場所に留まっていた。


「ちょうどいいですね。では帰りましょうか」

「「「「はい!」」」」


 洞窟から出られたことで、少し元気が出てきたようだ。

 盗賊が寝ていると思われる場所を避けながら、森を抜ける。


 途中魔物の反応があったが、エレナは、それら全てを出会う前に瞬殺していった。

 さらにしばらくして、やっと森を抜けることができた。そして森を抜けたことにより、キュリソーネ領の壁が目に入った。


 キュリソーネ領は、魔物が住む森が近くにある影響で、遠目からでも立派な壁が聳えているのだ。


「や、やったー!」

「帰ってきたぞ!」


 壁が見えたことで安心したのか、冒険者たちが叫びだしだ。中には涙を流し、抱きつきあっている冒険者までいた。そんな冒険者たちに対して、申し訳なさそうにエレナが口を開いた。


「あの、感動しているところ申し訳ないのですが、一旦ギルドまで来ていただけますか?誰がいるのか確認する必要があるので」


 実の所、エレナはここにいる冒険者全員の名前を分かっているのだが、これはギルドの規定なので仕方ないのだ。


「ああ、それくらい大丈夫だ」


 周りの冒険者も頷く。もしここで我儘を言う冒険者がいたら、エレナは少しオ・ハ・ナ・シするつもりだったのだが…その必要はないようである。エレナは少し残念そうな顔になったが、すぐに気を取り直して、門へと向かった。


 門の前には既に多くの人が並んでおり、通るのは時間がかかりそうだった。


「そういえば、エレナさん何歳なの?見たところ15歳くらいだけど…」

「それもヒミツですよ」


 いつもならすこし揶揄うのだが、周りに聞き耳を立てている人が多くいたため、エレナは言わなかった。こういうのは、少しづつ明かしていくのが楽しいらしい。とはいえ、今まで詳しい年齢を言ったことはほぼないのだが。


 そんな会話をしている内に、順番が来たようだ。


「次!あ!エレナ()()!」

「…っ!ふふっ」


 前までエレナちゃんと呼んでいた門番が、さんと呼んだことに、つい笑ってしまうエレナだった。


「え、エレナさん?」

「あ、すいません…つい」

「そ、そうですか…後ろの方々は?」

「彼らは冒険者です。証明証は持っているはずです」

「分かりました。じゃあ確認しますね」


 前とは違って敬語で話す門番に、エレナはクスクスと忍び笑いをした。


「確認完了です。ではどうぞ」

「はい。ありがとうございます」


 確認を終え、街へと入る。そしてそのまま真っ直ぐギルドへと向かった。


「ようこそ、キュリソーネ領ギルド支部へ…ってエレナ!?」


 ギルドに入ると、カーラがマニュアル通りの挨拶をした。だが、エレナの姿を確認すると、すぐにカウンターから飛び出してきてしまった。


「エレナ、何処も怪我とかしてない?」


 そう言ってエレナの体をぺたぺたと確認していく。カーラは獣人である影響で、寿命が長い。なので、数少ないエレナの歳上である。そのせいで、時々お姉ちゃんみたいな感じに心配してくるのだ。


「どこも怪我してないよ」

「ほんとに怪我してない?」

「ほんとだって。それより彼らの身元確認お願いできる?」


 エレナがそう言うと、疑いの目で見ながらも、了承してくれた。

 ちなみに、カーラはエレナが吸血鬼であることを知らない。だが、長い寿命ということから、ハーフエルフなのではないかと思っている。


 ハーフエルフとは、エルフと他の種族との間に生まれる種族のこと。寿命はエルフに劣るが、それでも長い。エルフの特徴である尖った耳は、受け継がれる場合もあるが、受け継がれない場合もある。

 エレナは吸血鬼であるため、耳が少し尖っている。だが、エルフにしては丸い。それが、ハーフエルフと思われる原因となっているのだ。


「では、こちらへ来てください」


 仕事モードに入ったカーラに、冒険者たちは戸惑いながらもついて行った。


「おかえり、エレナ」

「あ、はい。シモンさん」


 カウンターで作業をしていた男の職員が、エレナに話しかけた。彼はシモンという名前の人間だ。イケメンで優秀な職員である。エレナは男の職員に対しては、さん付をする。女性の職員は呼び捨てしているが。


「シモンさん、ギルマスは何処にいるか知ってます?」

「ギルマスはたしか領主邸に行ったはずだよ」

「領主邸ですか…分かりました。ありがとうございます」


 エレナはシモンにお礼を言うと、ギルドを出て、ギルマスに報告に行くために、領主邸へと向かった。


ちなみにエレナは、街に入る前からギルマスが領主邸にいることは分かっていた。だが、職員との会話も大事なのことなので、エレナはわざわざシモンに居場所を尋ねたのだった。











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