独り暮らしも10年を越えると、人はぬか床を持ちはじめる
おなじみの、私的見解ですけどね。
僕は子供のころ、漬け物がかなり苦手でした。
食べられないこともないけど、「こんなもん食ってうまいうまい言ってる大人は、ヘンだ」とかまた思い込んでたんですよね。
自分も成人して、30を越えたころに味覚も変わってきて(新陳代謝の過渡期のせいでしょうか。体が欲しがる食べ物が違ってくる)、大好きだった甘いものにそれほど興味がなくなり、地味な食べ物の割合が増えました。
それで、幼少期なら考えもしなかったんですけど、漬け物もスーパーで買ってたまに食べるようになります。
「おおう。昔の武士だって、こうやって質素倹約、たくあんをポリポリ食べながらお茶をすすったんだろうなあ」としみじみ目を閉じたりもしました。(ウソつけ)
それで、ある日友達三人で酒を飲んでて、「ぬか漬けってすごい美味いよなあ」という話が出たのです。
当然僕は、そうか? そんなにか?
普通のスーパーのたくあんや白菜のつまみと、何が違うんだ?
と思いました。
それで、その時ちょうどマンガ「凪のお暇」を読んでたんですよね。
まだランキングに入る前だったと思うんですが、すでにそのころ百万部を目前にしていたような気がします。
「これ、売れてまっせ」帯にやられて買ったんですが、相当面白い。
その中で、主人公の女性が母親にぬか床を幼少時代からかき混ぜさせられる話がありました。
ナスや大根、ニンジンや干し椎茸など(変わった所では、ゆで玉子なんかもいけるそうです)、1日2日突っ込んでおけば、なんでも熟成させて漬物化してくれる魔法の小箱です。
でも1日に1、2度かき混ぜて空気を送り込んでやらねばならず、冷蔵庫の中だとまだ長持ちするようですが、やがては悪臭を放つ、ゴミと化してしまいます。
それで母親はまったく手も触れないのに、娘は業のようにそれをかき混ぜさせられ続ける。
イヤでイヤで仕方なかったはずなのに、母親と離れて暮らすようになっても、何故か自前のぬか床を大切にして、時には救いのようにすら感じてしまう。
飲み友達の話と、そのマンガが重なって、思い込みの激しい僕は「そうか。自分もそろそろ、ぬか床を持つ頃なんだな」と勝手に思ってしまいました。
そして買って来ましたよ。
今なら、食品売り場ならたいてい置いてあるんですね。
色んな食べ物を入れて、自分で時間をかけて育てたぬか床でなくとも、それなりの熟成漬け物を作ってくれる商品が。
まるで子供のころに戻ったように、ワクワクと混ぜて、食べ物を投入してみましたよ。
それで初めてだったこともあり、時間的には1日でいいキュウリを、念入りに2日浸けて、ポリポリやりました。
「ふうん」
て感じでした。
まあ不味くはないよな。ぐらいの。
それでも、”何かあと一品欲しい”という晩ごはんの時には結構な味方になってくれるので、これからも糠をちょいちょい足しながら、Myぬか床を育てて行きたいと思います。
いったい何の話をしてるんだ、ということになりましたが、友達の少ない僕に、新たな小箱の親友ができましたよという、報告だったんですね。(ホントにどうでもいい!)
え~、申しわけありません。
ほんの一月足らずで、カビて終わってしまいました。
自治会の雑務に追われて、また、見知らぬ人に頼み事をしに行ってにべもなく断られ、それが続いて心が折れていたところ、糠さんたちはカビてしまっていました。
腐敗防止策の”からし入り糠”も使っていたんですが、「これくらいで終わるのなら、この先もどうせ大変なことはあるだろうし無理だな」という判断で、これまで通りふつうに漬け物を購入することにいたします。
情けない報告になってしまって申しわけありません。
しかし、いい経験になりました。
けっこう捏ねるのが楽しかった日もありましたし、「こんな世界があるんだな」と勉強できたのも良かったと思います。
やっぱり、本当に好きなことか、必要なことしか人は継続できないような気もしますが……
こんな所まで、お付き合いありがとうございました!
※2年後のことになりますが、感想欄でアドバイスをくださった方がおり、現在2年続いております。
冷蔵庫に入れてると、3~4日ぐらい混ぜなくてもいける。
味は相変わらず「ふうん」なんですが(味の素や、醤油をつけて食べている)、まあいいかな、という気がしています。
いつか旨くなるといいなあ……