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藤川菜乃花は喋れない 。  作者: 白咲 名誉
第四章 学校祭と憤怒
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十二話【バラバラココロ】

今できる全力を注いで書いた気がします。


人格を否定するような文章が幾度か組み込まれているので悲しい想いをされたら申し訳ありません。ですが、こんな風に考える人間もいると思って読んでいただけると嬉しいです。


 二人でその背中を見送った直後、綾瀬が心無い発言をした。



脳裏に三科、癸、そして菜乃花の顔が浮かぶ。



――――唯一は綾瀬の頬を殴った。



あいつは数歩先に吹っ飛ぶ。産まれて初めて人を殴った。



脳みそが沸騰する思いは何度もしてきたが、今回は初めて暴力へ出力していた。



「どうしてそうなるんだよ!癸が何かしたのか?」



 一息で言葉が次から次へと連ねる。綾瀬のお尻には土ぼこりが舞い、しりもちをついた。



「お前の狭い偏見じゃ、きっと辛かったんだろうなってしか考えられないだけだ!」



 膝に手を当ててゆっくり立ち上がる。俺を睨むがもう自分で我を制御できずにいる。



殴り返されることの恐怖なんてない。




「何も、していないだろ」



綾瀬は俺の目の前に走って向かってくる。



「じゃあどうしてそうなるんだ」



俺たちは胸倉を掴み合った。



「不具合を持って産まれても尚、逆境を跳ね除けられないのが惨めなんだよ。変えられないから逃げたんだろあいつらは」



随分と上から目線で綾瀬は自分の思想を語る。




「・・・・・・菜乃花もか!三科もか!三人共頑張って足掻いているだろ」




俺の胸倉を掴む手は強くなる。



「いじめている方が悪いのは百も承知だ。でもな自己防衛だってできたはずだ。

 なのに自分の弱さを認めた、そのうえで、いじめを耐えられない理由に、自己の弱点を使うのが腹立つんだよ。

 状況を打破するよりも苦しんだり憎んだりして思考を止める。

そういう延長で学校を辞めたんだろ。

 へらへら笑って薄っぺらな交友関係を築くのも自分を守るからなんだろ。

 そんなやり方がもう弱者なんだよ。もっと利己的に考えたらいじめを止めるには相手を破滅をさせないといけない。

 でも・・・・・・それをすると新しい環境になるからやらないんだよ」



綾瀬の放つ怒声は止まらない。俺は力が抜けてしまう。



 あぁ癸の気持ちを綾瀬はそんな風に汲み取ったんだ・・・・・・。そして何も言わず俺は殴られた。




綾瀬の瞳の全てに俺が映っている。憐れみの表情をしている俺が立っていた。



この瞬間を皮切りにこれまでの友達としての認識に亀裂が入った。



「勉強ができたって所詮は障害者だ。

 いじめの的なんだよ。健常者には分かる世渡りの仕方を知らない。だから嚙み合わない。

 それが嗄声や緘黙、発達、知的の弱者の要素の一つなんだよ。

 いじめの対象例として叩ける名目が増えたって辛いのは変わんないだろ。脳が足りないから今の位置に居座るんだ。今が楽なんだ。

 他人の靴を舐めて機嫌を取れていればと自分を下にしているやり方で歯向かえない。


そういうお前もかわいそうだよな!」




 俺には綾瀬の発言を理解出来なかった。お互いに意思の疎通が取れないほど気持ちが昂ぶっていたのもある。もう理論のぶつけ合いじゃない。二人とも自分の中で譲れないものを大声で主張しているだけになった。




「確かにイジメはおかしいさ。見て見ぬふりをするのを正義みたいな面しやがる。

 それでも、そんな中でこれ以上の被害から身を守るためにやり過ごす手段なんじゃないのか!

俺はもうそれを弱さだと比喩はしねえよ綾瀬!」



うるせえ、そう言って綾瀬は再度、俺を殴った。



 綾瀬も俺も運動なんて無縁なため、藁みたいに細い腕をしている。非力な腕でも頬は痛みから熱が走る。



「いいか、唯一、お前がしているのはな、俺たち共通の敵を弁護するって言う事だぞ。

 口に出さなくともお前だけは分かってくれていたとばかり思っていたよ」


「そうかい、そりゃ悪かったな」


「それだけお前は弱くなったっていう証拠だよ。前までは周りのあいつらが嫌いだったんだろ?

 だって簡単に人を陥れるような奴らしかいないからな。だから距離を取るようにした。他人が何しようが知らぬ存ぜぬな顔をして寝たフリをする。

 

 誰とでも程度の差はあっても深く関わろうとはお前からはしてこなかったはずだろ?見てれば分かるよな?あいつらは狂ってんだから。


 俺はそんな人間じゃないって自分に言い聞かせて自分を守っていたんだろ。それがお前の強みだった。


なのに今じゃテメェが傷付く事を恐れてる!腑抜けやがって!

 

 何もしていないおかげで危害を加えられずに済んだのにさ。それを保っていればよかったんだよ。


 そんなお前が仲間なんて言って吐いて徒党を組む事で安心し、思慮する事をやめた連中と何が違うんだ。生温い所で足を浸けるのは同じだろ?それくらい身の丈を図って行動しろよ」





 誰もいない公園。どちら共の拳が肌に当たって鈍い音が宙に響く。



鳥たちが羽ばたく。



 脳が揺れ、目の前で地震が起きるような酔い方をする。




 何度も殴られて、身体に鈍い振動が伝った。何度右手で殴って、拳骨を痛めたのだろうか。



 口が切れても尚、殴り合う。左手で襟をつかみ、離さずにどちらかが認めるまで相手の生き方を否定し続ける。



「じゃあ何で綾瀬テメェは過去に後悔してんだよ」



「今までなら、もう遅い、手遅れだ。そう後悔して過去に縋っていたよ。そんな俺も自分が恥を欠かせない生き方を選べるようになったんだよ」


 カンガルーの喧嘩だ。生まれて初めてこんな風に喧嘩をした。そして誰かが見かねて通報したのだろう。警察が仲裁に入って喧嘩が終わった。



目頭が腫れて日光が普段より眩しく感じた。



読みにくくて申し訳ありません。ですが、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


 綾瀬は叱る、ではなく怒っているので伝えたい論点がぶれぶれなんです。唯一も冷静ではいられなくて、受信しなくなりました(汗)なので二人とも伝える努力が欠けていたりします。


しかし、本心は一つではなく、無数にあります。言葉として一つに紡ぐのはむずかしかったりするんですよね。


文字書きとしてのプライドに反すると思いますがね。

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