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藤川菜乃花は喋れない 。  作者: 白咲 名誉
第三章 やりきれない程の切ない秋祭りと二人の温度。
29/55

第十話【盲目な決意】 綾瀬の内心Part2

おもしろいよ!


最初の文は、彼なりの思いです。映画の冒頭で主人公がストーリーテラーやるみたいなやつです


 生きることは難しいことだ。何も考えずに生きていればその分のツケがいつか来るだけだ。利息を支払うにはもがいて苦しむしかない。



 生きるのが難しくなるのは後々になって何をしてこなかったかを数え始めてからだ。人を傷つけ人に傷つけられる経験があるほど心は洗練する。そう綾瀬は考えている。



 高校のクラスの人達から言われのない発言や人として扱われていない行為を受けてもなんともなかった。綾瀬は自分の信念のもとに耐えていられたのだから。



 クラスでの立ち位置が似ている2人だが綾瀬幸太あやせこうた高杉唯一たかすぎゆういちより上手に生きている方だと自信を持っていた。



 小学生の時から唯一は同い年の連中から距離を置かれてしまう。あいつは人がついてくる性格をしてはいない。でも友達は俺以外にもいた。しかしいつしか綾瀬だけが残ってしまう。



のはずだった。



 藤川菜乃花が転校してきてから、俺は自分を客観的に考えて行う人付き合いが難しくなって孤立した。明光町での付き合いは皆無なのに常に懺悔ばかりが頭に浮かんでしまうようになったのが原因で粗暴な態度になってしまった。そしてオタクと嘲笑されてしまった。そこからの挽回には時間はかかったが、クラスで堂々と話せる相手を作れるようになった。



 でも最も最悪だったのは高杉と藤川さんが接点を持つようになってからのこと。俺のことを覚えていなくとも幸にはならない。自分のした行為を俺は覚えている。俺は聖人じゃない。だからここでツケを払わないといけないように生きる事が簡単には立ちいかなくなってしまった。





「何でもない・・・唯一」


 

 高杉の名前を呼ぶ。祭りの喧騒に遮られない程度の声量。頭にハテナを生やしている。何を言いたくて俺は彼に声をかけたのか分からない。



喋る内容はあった。でも思い出そうとすると喉が焦げるくらい熱くなってヒリヒリした痛みで邪魔をされる。



 彼女が受けたものが現実であって欲しくない。でももう過去のこと。俺には何も関係ない。背けて逃げ出せるのはいつだってやれる。どうする?



 自問自答を繰り返し着地点を見出さないようにした。頭を回さなければ事が収まる。今日、祭りの手伝いができてよかった。無理やりにでも笑顔を振り絞れる。



 綾瀬は取り留めた意識に上乗せさせて自分が守っていた心の居場所を守ろうとした。自分が生きていくなかで培った心の諌め方で衝撃的な出来事を打ち消せるように努める。




しかし膨れ上がる名前がつけられない情動が弾けたがっていた。



 俺は今日、藤川さんの隣に立っていた。彼女にわざわざ謝って、俺の中でだけは無かったことにしようと今まさにしようとしている。



藤川さんが唯一に手紙を渡そうと決意するまでにどんなことを考えて生きてきたんだろうか。



復讐だろうか、憎しみだろうか、やはり和山への好意と感謝なんだろうか?



そして、



—————俺は、何がしたかったんだ?



俺は藤川さんに募る思いをすべて伝えた。俺は覚悟していた。藤川さんの過去を俺が償うと。



返ってきた言葉は



【幸太君は、私の人生を弁償してくれますか?】だ。




そのつもりでいたが度の超える深い問題に俺は退こうとしていた。曖昧な覚悟は見事空中分解。




 甘い期待をしていた。これからの人生をうまく送れるような気がした。だから許しをもらいたかった。そしてあわよくば、彼女の人生を救いたかった。



歯がゆいな。どんなに悔恨の言葉を並べても、過去が変わらないってのは。



 俺の知らない間で人生を歪ませられるほどのいじめを受けたのは知っている。解っていたつもりだ。もしも小学校の時に和山じゃなくて俺が止めていれば、何かが変わっていたんじゃないだろうか。俺は異変に気が付いていた、はずだ。なぜ、動けなかったんだろうか。そんな悔しさ。



 そして恥ずかしいな。“彼女を利用してまで計画した惨めな思いをチャラにしようとした俺”っていうのを藤川さんの双眸に映っていた事実があるのが。



 手のひらいっぱいに砂をすくっても指の隙間から落ちる流砂の粒のように襲いかかる虚無感が俺の心を支配する。




今日の出来事は遂に俺のキャパをオーバーする。歯を強く噛み締めすぎて血のにおいがある。




 長年、苦しんだ。なのにまだ苦しむ。もう俺に何ができるのかなんて限られているんだ。藤川さんが失った青春の精算を俺がするしかない。



 俺は藤川さんからすれば役不足だろう。俺は和山にはなれない。唯一にもなれない。クラスも離れていて、家も近いわけじゃない。それでも俺は、何かをしたい。



報われるとは思わない。償えるとも思わない。



 許しなんてのは乞えば「はい許します」の1言で済んでしまう。考えれば誰でもわかるよう事を考えないから最初から人は人を苦しませる。



でもだ、なんで藤川さんは、喋れないだけであそこまでされないといけないのか。だから決めた。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


と。



笛や太鼓といった祭囃子が聴こえる。


 今回は綾瀬くんの回です。時間と話数が飛びすぎて、なんてことがありプロローグの綾瀬くん回を忘れている人がいるかもしれないんで余計なことをやりました。グダグダとこの話を書くのに時間を使ってしまい、読んでもらえた方に申し訳ないです。そのために補足的な意味合いを込めて書きました。



綾瀬君の感情を心情、大体矛盾してる気がするんすよねー。



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