第四話 【青い栞】
短い話が続いて、書いていて気持ち的には少し楽です。
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放課後を告げる鐘が鳴り、肩にのしかかる重りが抜ける。
気がついたら季節は変わっていた。秋風からは夏の気配は遠のき、緩やかに吹く風に乗って漂流する草の匂いが教室にまで届かなくなってきた。開けた窓からは時折、凛する低い温度の風が肌を刺す。鼻に針を通すような冷風が冬の兆候を示す。
俺と綾瀬はまた図書室へ行く。何度もここへ出入りしているので常連の顔は覚えれるようにはなっていた。
俺達は窓辺の席を陣取る。ここが所定の席になっていた。
「普段は何気なく興味ないから目を通さない本だってここに図書室にいるとついつい読んじゃうよな」
綾瀬が本を数冊、手に抱えて戻ってきた。
「知能指数が5くらいは上がった気がするよな」
「これ、難しそうな本だな」
「いや、簡単な本だよ」
表紙を見てみると、小学生でも分かる物理学と書いてあった。
いつも綾瀬はここに来ると時間を潰すためにジャンルの違う本を選んで持ってくる。俺は悩みたくて最適解でここ選んだ。だけど最近はそれも手持ち無沙汰になってきていた。
ここらへんで読書に手を出してみるのもありだな。無性に何か読もうと思い席を離れる。
ジャンルごとに名前の入った札が本棚に貼られてある。俺は一番奥まで歩いて〝病気”という札が刺さっている欄を見つける。
そこは窓が一切なく陽の光は遮られ、陰気な気分になりそうな場所。まるで闇の世界の入口のような湿っぽい廃墟に似た雰囲気がそこら一帯にあった。
棚の上から
看護学、人体解剖学、生物学、身体疾患、血液病、医学、獣医学と雑に分類されブックエンドで閉じられている。
カビ臭い匂いが鼻の奥を殴りつけられる。下の欄へ視線をずらすと精神病の欄に移る。不謹慎な話だが、普段聞かない病名にどこか惹かれてしまい、指で端からなぞって興味が湧きそうな本を見落とさないように探す。
強迫性パニック障害、アレキシサイミア、ADHD、ボーダー、共有精神病性障害、鬱、カサンドラ症候群、統合失調症、たくさんの聞いたことのない病名ばっかりだった。
「面白そうだな」病名を知るだけで賢くなった気分に浸れる。
そして唯一はある本の帯紙が目に着く。
「クラスにいる静かな子はこんな病気かも」と表される巻末の字。
興味よりも強い無意識がその本に手が引っ張られる。
「場面緘黙症の人の暮らしと日々・・・」
俺は、最初のなんページを読んだ。すると、初めにという前書きから場面緘黙症の特徴が記されていた。
――――患者の悩みは話ができないのではない。話せないだけなのだ。
そう書かれた文章は菜乃花のことを言い当てているようだった。まだ続く文章の全てに思い当たる節があって、彼女と過ごした時間を思い出して当てはめた。
この本の特徴がそのまま菜乃花に類似するなら・・・・・・。
「菜乃花のことを知りたい」その一心で俺はこの一冊を手にして席に戻って読み始めた。




