第七話 「地獄へようこそ」
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第二章 秋の紅葉と二人の悪い事 :第七話
菜乃花と目を合わせれなくなっていた。今俺がどんな顔をしているのかさえ分からなくて、どうやって表情を作るのかも忘れてしまっていた。
あれ?笑いってどうやってするんだっけ?あれ、今悲しいのかな?もう言葉さえ、出てこないや。
心のコントロールができなくなっていた。勝手に体が動いて言いたくもない事も唇が勝手に動いて脳ミソがセリフを吐かせていた。
今、菜乃花は自転車の荷台に座っている。坂を下っていつもの国道に出ると、夜の星と車のライトが光っていた。 一応自転車のライトをつけてペダルを漕いだ。重たかった。国道の所の何軒かあるスナックの一つから楽しそうに店を出ていく大人たちが見えた。
夜が更けるというのは、さっき家を出たときの暗さよりも遥かに漆黒になっているということだった。
その間も無言で、肌寒い風が横切っていった。
俺は菜乃花の説明やこれまでの思い出などを自転車の上で記憶をリピートさせていた。今までの関わりは彼女からしたらなんというのか、仮初のような偽物のような、そんな気がしてきた。俺が接しているこの時間も単なる通過点でしかなく、俺は捨て駒のように使われていたのかもしれないと、暗いことを考えていた。でも逆にそんなことはなくて、仲のいい友達程度と思われていてもいいなってどこか気持ちを切り替えるために、無理やりマイナス思考を消している俺がいた。
俺は
「・・・・・・」。
菜乃花も
「・・・・・・」。
夜風が二人の髪の毛を横に流していった。どちらも無言になっていた。
どんなにプラスなことを考えてもマイナスな想像に上塗りされ不安が雪崩のように襲い掛かった。そうやって、頭の中でぐるぐる回っていた。
住宅街に着いて菜乃花の家の前で自転車を停める。彼女が降りて頭を深々と菜乃花が下げると、「じゃあな、また明日」
俺は言う。はてなマークを浮かべて笑って手を振った。自分がちゃんと笑えているのかさえ不安になる。彼女も小さくだが、スッと手を出し小さく振ってくれた。
家に着くと物置に自転車をしまって家のドアの前に立った。
――――自室で服を脱ぎ、ベッドに倒れこんだ。
ベッドの中で転がりながら帰りの道のりと同じ事を考えていた。あと、父さんの言っていることが、言葉として理解はできたけれども心にしっくりとは来なかった。
菜乃花からrainが来ていたのに気が付いた。でも今は返したくなかった。目を通す気すら起きなかった。
あした、やる。