その日々
「ふむ」竜は考えます。
カリカリは食べる時も遊ぶ時も、もちろん眠る時だっていつも竜の側から離れません。
このままではカリカリはひとり立ちできずに弱い子どものままになってしまうのではないか。
いや、いけない。初めてカリカリに会った時に自分がこの子どもを育てようと決めたのではないか。
もっと自分ひとりでいろんなことができるように厳しく教育しなければ。
「ぴ?」
厳しく。
「ぴ?」
………
「ぴ?」
…まぁ、まだ小さいし。
「ぴ?」
かわいいし。
「ぴ?」
‼︎
竜は自分がカリカリのことを かわいい、と思ったことにびっくりしました。自分の中にそんな気持ちがあったことを思い出したからです。
そんな気持ちを持っていたのはとても昔のことで、その頃自分には何か大切なものがあり、その大切なもののために何かを約束して、今自分はここに座っている。
約束のことは思い出せません。でも大切なもののことを可愛いと思っていたことは思い出しました。
今、なぜか大切なものは側にいません。
今、カリカリは側にいます。
竜はちょっと怖くなりました。
カリカリも、何時かいなくなってしまうのでは。
「ふむ」
今はまだこのままでいいのではないか。カリカリが自分から離れていくまで一緒に居てもいいのではないか。
かわいいし。
「ぴぃ」
竜はカリカリを頭に乗せて喉の奥で笑います。
すると、カリカリはうまく全身でバランスをとると楽しそうに 今はすべすべになったしっぽを振ります。
そうして竜は、カリカリが自分の身体を滑り降り、足元に這い込んで、何やらコリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリかじる音に耳を澄ましていました。