日々
「カリカリ」竜が呼びます。
「ぴ」カリカリが応えます。最初の頃は返事はありませんでしたが何度も呼びかけている内に「カリカリ」というのが自分の名前だというのが分かってきたようです。
カリカリは竜の側を離れるのが恐いらしく食べ物を取りにもなかなか行きません。しょうがないので竜が魔法を使い集めてあげます。いくつか集めた中からカリカリはいつも最初に食べた実ばかりを手にします。
竜は同じ物ばかり食べていると 魔力が偏って大きくなれないと思い、他の魔草や魔樹の実も食べるように教えます。カリカリは硬い実がもらえないと渋々他の物も食べます。ひととおり食べてから硬い実をあげます。
すると、取り上げられないようにか竜の足元に這い込んで、カリカリ、カリカリ、カリカリ、カリカリ、かじります。
竜はカリカリと遊んであげたいと思いましたが、なにせ体の大きさが違いすぎるのでなにをしてあげたら良いのか分かりません。ちょっと動いただけでもカリカリをぺちゃんこにしてしまいそうです。
竜が困っていると、カリカリが首をかしげなにやら考えている様子をしています。と、カリカリは竜の足を登り始め、足から腰へ、腰から背中へ、背中から首へ、首から頭の上へ、くるくると楽しそうに走り回ります。
竜は少し くすぐったかったのですが、カリカリがとても楽しそうにしているのと、あちこち動く感触が面白くなってきたのとで、喉の奥を震わせて笑ってしまいました。
竜は自分が笑っている事にとても驚きました。長い間笑うどころか感情を動かすことなどすっかり忘れていたのです。
竜は体中に暖かいなにかが巡るのを感じました。それはずっと昔に感じた事があったものでした。
竜は嬉しくなって今度は体を震わせて笑ってみました。
すると、頭の上にいたカリカリが足元の頭が急に揺れたもので、ころころと頭の上から首へ、首から背中へ、背中から腰へ、腰から足へ、最後はもといた足元へ転がって戻ってしまいました。
カリカリはぴぃぴぃと文句を言っていましたが、これはこれでなかなか面白いと気づき、また竜の足を登り始めたのでした。