表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

今日

「ん?」竜はカリカリが喉を震わせているのに気付きました。

竜が見つめていると、カリカリが口を開いて鳴き声を出す仕草をしました。

しかし出したのは鳴き声ではありませんでした。


「…い…ぅ」


カリカリはじれったい様子です。

竜は落ち着く様に喉を鳴らしました。

カリカリは息を吸ってもう一度口を開きます。

そして。


「い・こ・う」


カリカリは竜に、一緒に行こう、そう言ったのです。


竜はカリカリの初めての言葉に驚きました。

そして竜は カリカリの成長をとても嬉しく思いました。


でも一緒には行けません。足には枷がはまっているのです。

竜は足を指さしながらゆっくりと首を横に振りました。


するとカリカリは足元を見ながらまた口を開きます。


「な・い・よ」


「え?」


竜は足元に鼻先を寄せて探ってみました。

鎖も足枷もありませんでした。


竜はカリカリがここのところ、硬い実は無いのに何かをかじっていたのを思い出しました。

どうやら魔法のかかった鎖と足枷をかじって食べてしまったようでした。

いつの間にかカリカリが竜の拘束の魔法を解いていたのです。


竜は足元からカリカリに視線を戻すと、

「カリカリ?」と尋ねます。

足枷はカリカリが外したのか?と。

カリカリは首を振り、

「コリコリ!」と答えます。

カリカリした のではなく、コリコリしたのだ、と。

会話に慣れていないので 少しずれている事に、ふたり共気付いていません。



竜は自由です。

どこにでも行けます。


竜はゆっくりと立ち上がりました。本当に久しぶりに視線が高くなりました。

でも、足が前に出ません。

なんだか怖かったのです。

少し前の怖がりのカリカリの様でした。竜はあの時のカリカリの気持ちが初めて分かりました。

竜はカリカリの勇気を知りました。


カリカリは竜の頭の上に駆け登りしっぽをピンと立てて、

「い・こ・う」

もう一度言いました。


竜はぐっと足に力を入れ、藪をまたいで越えました。

一歩踏み出せば、、もう大丈夫です。

竜は周りを見渡すと頭の上の相棒にどちらに行くのか尋ねます。


「コリコリ?」


さっきの会話で竜は カリカリが自分の名前は「コリコリ」なのだと主張したのだと思ったのです。

そしてカリカリは 自分が竜に贈り物(魔樹の実)をしたので、お返しに新しい名前をくれたのだと思いました。


「カリカリ」改め「コリコリ」は魔樹のあった方向を向き、しっぽを嬉しそうに ゆらゆらさせて言います。


「いこう」


竜もしっぽを嬉しそうに ゆらゆらさせて答えます。


「ああ、行こう」


竜もしっぽをピンと立てて 足を進めます。



ふたりの去った後には竜がずっと座っていたくぼみと、かき分けられた藪だけが残っていました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ