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人類滅亡前に転生させられた『遊び人』だけど!  作者: ろぼろぼ
第1章王都編
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死の盆踊り

フランク・ゲーゼは6人の部下を持ち王都アンツの治安を守る警備兵長である。

王国大学を出て3年と言う事を考えれば平民では異例の出世であり彼自身それを誇りとしていた。


そんなフランクが部下と街を巡回していると、血の気の失った一人の女性が彼に駆け寄り、そして隣の家に強盗が入り酷い事になっていると救いを求めてきたのである。


直感的に事件だと判断したフランクはすぐさま彼女の向かいの家に駆け付ける事となる。最近は中流家庭への強盗が相次いでおり、その現場は大抵凄惨なものなのだ。


駆け付けた家の前には既に幾人もの野次馬が来ており、その時点で人死にが出ている事をフランクは確信する。


彼は人ごみをかきわけドアの前にたどり着くとドアを慎重にあけ中に駆け込んだ。


薄暗い廊下である。


カツン


彼の足に陶器の破片の様なものが当たる…

それを拾い上げ彼はギョッと肝を冷やす。


それは頭骨に頭皮や髪がついた破片である。

その持主は廊下の角に横たわっていた・・・・

頭の無い大男の死体である。


フランクは知る、室内が暗いのではなく廊下一面が粉末状になった男の血で塗装されていたのだ。


しかも男の頭部は天井から床・廊下の端の壁にまで飛び散っており。

まるで強大な魔物が暴れたような状態である。


更に奥に転がる2体の死体。その身なりから彼は死んだのは盗賊団の方であり、これは自分一人ので手でおえる事件でないと判断する。


フランクは部下を呼ぶと国最高の宮廷魔導士と死体鑑定に暗黒街に詳しい者を連れてくるよう指示し一旦現場を離れ目撃者を捜す事にした。


野次馬達に聞きこみをするとすぐに現場に居たと言う2歳程度の幼女を見つける事ができた。

事件のあらましを聞こうとしたが、


「お兄ちゃんはちゅごいの」


と兄を絶賛するばかりで要領を得ない。少しすると暗黒街に詳しい情報屋がき、宮廷魔導士の到着を待って現場検証を再開する事となった。


最初にドギモを抜かれたのは情報屋であった。


「こいつらぁ、ベアー三兄弟でっせ……暗黒街でも1番のAランクの超危険人物ってやつだ。頭を吹っ飛ばされてるのは親殺しのブルーノ!身体(からだ)の刺青も奴のものでさぁ」


フランクも言葉を失う。


彼の能力判定は高い物でもCだがそれでも将官級(しょうかんこうほ)と言える部類なのである。Aランクは犯罪者になりさえしなければ戦士長そして騎士になり貴族になれたかもしれない能力値であった。


そのAランクの戦士長クラスが殺される事件が、この現場で起きたと言う事なのである。


次にフランクはニーナに事件の事を尋ねる。


「あのね。突然この人達がおうちにはいてきたの。で酷いのお兄ちゃんこの人達にけられたみちゃいでお腹おさえてたの。でもお兄ちゃんが皆やつけちゃた」


盗賊達が押し入ったのは確かなようである、だが兄がやっつけたと言うのが良く分からない。


よほど歳が離れた剣の達人の兄なのだろうか。フランクは情報屋に目をやると。


「いや~、多分それは無いしょ。ポポスさんの長男なら確かまだ4歳だったかな・・・産まれた時に一度記事にしたんでさ。今では近所でも評判の可愛い幼児らしいっすよ」


宮廷魔導士もその歳では、ありえんと首を横に振る。


フランクはニーナに更に詳しく兄の行動や言動を尋ねていく。


ニーナは首を傾けつつ懸命に思い出そうとしている。


「ん~、あっちょう! 殺ち合え!って言ったの。そちたらこの人達ブンブン踊りだしたの」


3人は驚きで目を合わせる。盗賊団達は兄弟3人で同士討ちまたは仲間割れをした可能性がでたのだ。


しかし理由が分からない兄が言った「殺し合え」がヒントの気がするがそんな事が可能なのだろうか、


二人の目が宮廷魔導士の方へ行く。


「信じられん・・・幻覚…言霊…精神支配…いや兄弟同士を殺し合わせる様な強力な精神支配など聞いたことがない。……じゃが現場を見れば確かに二人は殺し合った形跡があるのも事実じゃ。いやブルーノだけは違うかの。そう奴は殺し合いでも生き残ったんじゃないのか。?」


殺し合いをしたのなら誰か一人が生き残る可能性がある。

そしてそれは腕が一番立つブルーノで有る可能性は高かった。


3人の目は次の言葉を求めニーナに向かう。


「うんそうよ。でも、お兄ちゃんが『りゅーいんおーあ』て言たら大きいのも弾けたの。花火みたいだたよ、お洋服汚れたけど」


また兄である・・・・


その幼児が言葉を出すたびに何かが起こっているのだ『りゅーいんおーあ』とは…3人は考える。

いや幼女は母音と子音をまだ上手く話せてないのだ…兄が言った言葉は別の物だろう。


ふと宮廷魔導士が顔を青くして言う。


「いや……まさか『竜神闘気(リュウジンオーラ)』と言ったのでは」


ニーナは満面の笑顔で答える


「しょーしょれ。しょれ」


フランクと情報屋は目を見開く……

竜神闘気(リュウジンオーラ)、ドラゴンと同じ力を得ると言う伝説級スキルである。


勇者ポポスが使えるとは聞くがそれも自在と言うわけでもなくクリティカル的に出ると言う話だったのだ。だがその幼児は名前を叫んでいるように竜神闘気(リュウジンオーラ)のスキルを使いこなしているように見える。


そんな人物なら人を操るくらい出来るのかもしれない。


しかし、それでこの凄惨な現場が説明できる、上位ドラゴンが暴れたのと同じなのである。当然死体もこれくらい破壊されるだろう・・・。


フランクは事件を整理すればするほど『お兄ちゃん』なる幼児の意図が浮かび上がるようで恐ろしかった。


そう・・・全てが過剰なのである。


もし竜神闘気(リュウジンオーラ)が使えるのならば兄弟3人を互いに殺し合わせる必要はなく、兄弟を殺し合わせるほどの精神支配が出来るなら、殺す必要すら無く鎮圧できたのではないか。


では何の意図があるのだろうか。彼は思う、それは自分を蹴った者達を『生き地獄』に落とすが目的ではないのかと。


ベアー三兄弟は加害者としてこの悪魔の如き幼児の住む家に来訪し被害者となった。


3人は兄弟で殺し合うと言う狂気の宴をさせられ、最後に頭を爆破させられると言う死を強要されたのである。


ニーナは嬉しそうに話を続ける。

ニーナからすれば信頼する兄の悪者退治の武勇伝なのである。


「それでね、お兄ちゃん大笑いして。でね、この大きいのをこうー蹴たの」


ドヤ顔でするニーナの蹴りマネに、


「人間の所業じゃ無い…」


思わず情報屋とフランクは呟いていた

笑いながら頭を失った死体を蹴る幼児の姿を想像していたのだ。

3人にとって『ルカ・バウアー』は、もはや幼児の姿をした悪魔となっていた。


そして、この事件はニーナが踊る様に殺し合ったと話した件から

『死の盆踊り事件』と言う名で情報屋の口によりルカ・バウアーの名と共に王国・暗黒街に広がって行くのである。


ルカ・バウアーは王国から褒章されると共に、密かに王国のS級の危険人物に指定される事となった。





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