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人類滅亡前に転生させられた『遊び人』だけど!~幼児のSMゲーム~ 作者:ろぼろぼ

第2章イルディア編

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ヒーロー帰還する(下)

その頃、イルディア王宮の玉座の間は大混乱の極みであった。

黒衣の大賢者(カール)が撃破されただと!?」
「いや、三頭龍と死霊王に降伏したと聞いたが」
王国最狂(ルカ・バウアー)が生還したと言う噂も……」
「いや、まだ抗戦は続いてると言うぞ!」

パニックになる者、怯える者、慌てて逃げ出す者、様々な噂が飛び交い阿鼻叫喚の様相を呈していた。

皇女(クリスティーナ)の父であり帝国宰相であるレオン公爵は、混乱する大臣達を一括すると、最新の情報を持ってきた兵士の話に耳を傾けてる。

「ば、ばかな。本当に生きていたと言うのか……5年もの間…魔王軍でか…」

「はっ!間違いないかと。ただ………容姿が変わっていないなど理解出来ない報告もあり。また王国最狂(ルカ・バウアー)が申した事も………」


帝国宰相(レオン)は考える。報告に理解できない部分が多いのは現場も混乱しているからであろうと、王国最狂(ルカ・バウアー)が兵士に伝えたと言う『長期休暇(バカンス)』『談合(だんごう)』『南国海岸(トロピカルビーチ)』などの理解不明な物は伝達の際におきた齟齬だろうと、だが一つだけ確かだろうと判断できる言葉は『妹に会いに来た』であった。

王国最狂(ルカ・バウアー)は、妹の現状を把握して助けに来たのだ。イルディアを滅ぼすのを厭わずにだ。だが何故このタイミングでなのか、まさか古代魔法が完成する直前まで待っていたのかと。そう考えた時、帝国宰相(レオン)に恐怖が大波のように襲ってくる。やはり王国最狂(ルカ・バウアー)は恐るべき者だと。

その時、玉座に鎮座していた若き皇帝が立ち上がりマントを翻し皆に告げる

「あの小娘に古代魔法の準備をさせろ!標的はイルディア中部の森林地帯!」

傍に控えていた周りの兵士達はその答えに絶句する。この若く太った皇帝は、イルディアの為、家族の為に戦っている者達を敵ごと焼こうと言っているのである。

更に皇帝は饒舌に演説を続ける。

「皆の者安心せい!既に総動員令を発動しておりイルディア首都の民は全て武装した兵である。この軍勢を前に誰が攻め込めようか!」

旧王女(カミーラ)は最悪の選択だと目を伏せる。街に残る者の半数は女性であり多くは子供や老人など戦闘に向かない者なのである。彼女は強い男が好みである、だか、この世で一番力を持っているはずの皇帝が汚物の様に見えていたのである。

その時、皇女(クリスティーナ)旧王女(カミーラ)の傍まで来ると耳元で話しかけてくる。

「ねぇ、貴方はどう思う?例え魔王軍(てき)についたとして、あの幼児()が住民を犠牲にしてまで来られるのからしら。見かけによらず優しい幼児()よ」

彼女は少し考えて答える。

「分からないけど必ず来る気がする。少なくとも妹を見捨てる奴じゃないよ」

皇女(クリスティーナ)は彼女の迷いの無い一言に驚くが直ぐに納得いったとばかりに頷くがその時、


ドゴーーン!

と玉座の間に落雷が走り辺りを真っ白に染め上げた。
焼き焦げた絨毯が花びらの様に舞う。

玉座の間に居た全ての人間が信じられないモノを見たとばかりに唖然として固まる。

閃光の後に現れたのは敵の総大将であるルカ・バウアーなのである。

何のことはない、幼児は転移(ゲート)魔法(アイテム)の出口を6年前の時点で宮中に設置しており自由に出入り出来たのである。かつて彼が神出鬼没であった所以(ゆえん)である。

その恰好はマントを羽織った道化師であり、それはどこか幼児服の様で皇女(クリスティーナ)は思わず可愛いと胸がキュンとするが、

(ボリス)、例の準備を急いで!時間が無くてよ」

と直様に指示を出す。例の準備とは古代魔法ではない。

ここまで来られては最早、未完成の古代魔法の存在意義は消えたと思えた。

幼児は、魔王軍と言う組織を捨て単身で敵の首脳部へ来たのである。その行動は大胆不敵にして豪胆、圧倒的強者のみに許される行為であろう。

皇女(クリスティーナ)筆頭執事(ボリス)に命じているのは、『真実の水晶』と言う国宝級の魔法道具(マジックアイテム)の使用であった。

嘗ては王妃に化けた悪魔の正体を見破り傾国から国を救い、またある時は王が妃達の浮気を調べ大臣が何人も失職する大スキャンダルに発展したと言う曰くつきの道具であり、彼女はそれを使用し敵味方定まらぬ幼児を見極めようと言うのである。そしてそれは、この謎の極まる幼児の正体を明かすとも思われた。

そこで皇帝の恐怖と悲鳴に近い叫び声が宮中に響き渡る。

「な、何をしておる、皆の者、こ、この者を殺せ!」

宮廷兵士達が彼を取り囲む中、旧王女(カミーラ)は簡単に言いやがってと心の中で舌打ちしながら雷神の剣を抜くと幼児と正面から対峙する。

彼女の額を嫌な汗がつたう。
幼児の姿は彼女が知る5年前から時が止まった様に変わっていない。それは親しみを感じると共に恐怖を感じさせる。彼女は心の恐れを封じ込め昔の様に友好的に話かける。

「まぁ……幼児(あんた)がアタシにした貞操帯(しうち)は許そう」

「5年間、他の女とイチャイチャしていたとして浮気も許そう…」

と言った所で彼女は幼児が不思議そうに頭を捻ってる事に気づく幼児は彼女の事が誰だか分かってないのである。カミーラは一瞬で頭に血を上らせると露出狂の様にバッっとマントを開き貞操帯を見せて叫んでいだ。

「アタシだよ、アタシ!旧王女(カミーラ)だ!」

幼児(ルカ・バウアー)は納得いったとばかりに頷く、10代の少女の5年での変化は幼児の予想以上に早かったのである。旧王女(カミーラ)は恥ずかしさの余り顔を赤く染め一瞬俯くが、一度深い深呼吸をし話を続ける。旧王女(カミーラ)の剣が深く沈む。

「だが、幼児(あんた)が魔王軍についたと言うなら話は別だ!」

旧王女(カミーラ)の魔剣が紫の放電を纏い唸る、これは一撃に全てを込めた彼女にとっての最大の攻撃である。

マントを払い幼児(ルカ・バウアー)が片腕で刀を払い、それをうけ旧王女(カミーラ)の顔が歪んだ。

剣を払った幼児の腕は一瞬で黒く炭化し弾け飛んだからである。

だが次の瞬間に彼女は驚きの余り目を見開く、幼児の腕は白い煙に包まれ何事もなかった様にみるみる再生していったからである。

その光景に筆頭執事(ボリス)は信じられないとばかりに皇女(クリスティーナ)に耳打ちする。

「お、恐るべきかな…あれは伝説のエリクサーの効果ではと。死を除く全ての傷を癒すと言われる伝説の回復薬です。実在すれば街一つが買える品かと」

皇女(クリスティーナ)も鳥肌を抑える様なしぐさをするが、冷静を取り繕いつつ筆頭執事(ボリス)に『真実の水晶』での幼児の鑑定を進めるように伝える。

旧王女(カミーラ)は脱力し幼児の胸の中に顔を埋める、本当に全力を込めた一撃であったのだ。

「本当に幼児(おまえ)強い(すごい)な……」

旧王女(カミーラ)は幼児の胸の中で、幼児(ルカ・バウアー)が生きてて良かったと言う想いに愛おしさも加わり感情の堰が切ったように泣いた。瞼から溢れる涙を止める事が出来なくなったのだ。幼児は子供をあやす様に泣きじゃくる旧王女(カミーラ)の背中を擦る。

幼児が大人の女をあやす光景は、この幼児が只者では無い事と二人の勝負がついた事を周囲に知らしめていた。


その時、玉座の間に更なる落雷が走り幼児達が現れた転移魔法(ゲート)の出口より、もう一人の人物が現わす。

それに対し今度は幼児が目を見開き丸で鞭で叩かれたように驚く事となる。

「その乙女は今日の晩餐の食材と思って良いのだろうな。三頭龍将軍(ルカ・バウアー)よ!」


転移魔法(ゲート)より出てきた褐色の幼女(まおう)はブラック企業の上司さながらに告げる。


長期休暇(バカンス)は取りやめだ」




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ヒーローとは愛と正義の味方。


そして悪を倒す力を具現化した者である。

ルカ・バウアーの妹であるニーナ・バウアーは今年10歳になる黒髪で可憐な美少女である。
そんな幼い彼女は、この世界に深く絶望していた。

彼女の前には常に彼女を苦しめる悪が存在したからである。

イルディアの監獄での兵士達の対応は優しいモノでなく、言葉による責めから時には暴力まで含まれていた。

それは魔王軍に追い詰められた兵士達の焦りと焦燥から来るものであり、
その責任を『少女』に押し付ける弱い人間の行為であった。

そしてその日も数人の兵士が幼馴染のジェシカを連れニーナのもとにやってくると
首錠をし夕方の温い空気に満ちた宮殿の廊下を歩かされる。

宮殿の壁には豪華な装飾が施されているが彼女にはどこか禍々しい宮殿の様に映り目を背ける事となる。

その日は何時もと宮殿の様子が違っていた。
普段は高圧的な兵士達も何かに怯え、隣に居るジェシカの顔も青く、その手は僅かに震えている。

その理由を理解したのは、宮殿の最上階の玉座の前に連れてこられた時である。
そこは幾本もの円柱に支えられたローマ宮殿の様でありイルディアの全域からが一望出来る。

夕日に照らされ辺り一面は黄金色に染まってとても美しいが、
そこにいる権力者達はひどく醜く哀れに怯え慌てふためいていた。

その様子に彼女は理解する。

この国は…人は、もう滅びようとしているのだと。

そして兵士達は死を前にして怯えていたのだろうと。
悪魔に魔物に不死者(アンデット)に。

まるで檻に入れられ食べられるのを待つ家畜の様に。

最後に玉座の間に描かれた魔法陣を見て思う、
多分この魔方陣は今日も作動はしないだろうと、99%は起動するが最後の一かけらが足りない。

自分には何か足りない物があるのだろうと。

夕日は彼女の姿を赤く染め、
彼女も心に刻みこむように美しい夕日を眺める。



その時、宮殿内に落雷が轟き辺りを白く染める。



そこに居たのはニーナより年下の幼児の姿。
でも、その姿をニーナが見間違うわけはなかった。

6年前と何一つ変わっていないのだから。
ニーナの両目より涙が自然と流れ落ちる。

隣のジェシカは少しショックを受けているが、

ニーナはどこか納得する。完全なる者の姿が変わるわけはないのである。

焼けた絨毯が花びらの様に舞い、ニーナの兄ルカ・バウアーを美しく映し出す、
今では三頭龍と呼ばれ魔王軍きっての魔将であるがそんな事は関係なかった。



魔女を滅ぼし、悪魔を従え、不死者(アンデット)を従え、人を従え、何者をも恐れず、(ひる)まず、挑む勇者。


その日、ニーナにとってのヒーローが帰ってきたのだ。






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