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人類滅亡前に転生させられた『遊び人』だけど!  作者: ろぼろぼ
第2章イルディア編
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三頭龍(ルカ・バウアー)襲来する

ここはイルディア東部の国境に広がる荒涼とした砂漠地帯、大陸行路から大きく外れている為に人の往来(おうらい)は稀であるが、そんな場所に巧妙に偽装された軍事施設が存在した。


朽木(くちき)が目印の小さな丘の下にあり、巧みに砂で隠された布の扉をくぐると、大人一人が楽に通れる横穴が姿を現わす。そしてその先の空間では多くの魔法術式が展開され絶え間無く映り変わる文字や映像が洞穴の床や天井を照らしていた。


帝国時代に多数設置された情報伝達施設の生き残りの一つである。そこでは中年兵と部下と思われる若い兵士の二人が日夜情報と格闘していた。



その時、部屋に警告音(アラート)が鳴り響き赤い暗号文字が浮かび上がる。それは神聖王国の方面に潜り込んでいた工作員からの非常事態を伝える合図である。若い兵士は暗号文を読み上げると顔をしかめ隣の老練な中年兵の顔を覗き込む、にわかには信じられない内容であったからだ。


そこに記されていたのは、イルディア方面に向かい多数の魔王軍が動いたと言う報告であった。信じられないのは、その陣容で魔王配下の悪魔の王2名の(ほか)に8人の悪魔公爵と400を超える軍団が動いたと言うのだ。その数は魔王軍主力の半分以上になる。


その直後に施設内に無数の警告音(アラート)が鳴り響く。それは各地に潜り込んでいた工作員達から非常事態を伝える警告が舞い込んでいるのである。中年兵はすぐさま魔法の水晶を取ると、まだ警告を出していない工作員へと連絡を取る。


「チース、桃樹村(タオシュツン)(ジン)っす!帝国の旦那、おひさっすね~。」


呑気で軽い声が施設内に響く、そして壁一面には平穏でのどかな街並みとチャラい恰好をした黒髪の若者が映し出された。


中年兵は慎重に言葉を選びながら(ジン)に数時間内に訪れる可能性が有る魔王軍について説明する、そしてその陣容を一部始終を魔法の水晶で映する様に命じたのである。


だが次の瞬間には「シャーラ!」と(ジン)の驚きに満ちた声が水晶に響き渡り先ほどまで閑散としていたはずの街の通りは地と空を埋め尽くす黒い悪魔の軍勢が濁流の如く溢れていたのである。


その光景に中年兵は思わずうなり声をあげる、その軍勢は(まさ)に神速であり、平和な街中は一瞬にしてダンジョン最下層が具現化したようなデッドゾーンに様変わりしていたのである。


彼は長年冒険者として生活し引退後に、その知識を帝国軍に買われ諜報部隊へと配属されていたのだが水晶にはダンジョン最下層でも滅多にお目にかかれない凶悪なの魔物が列を成して次々と飛びかっていたのだ、その中には彼が知りうる最凶の天災である魔王軍四天王の姿すらあったのだ。


風の如く次々と飛び去って行く先陣、そしてその後には大将旗を掲げた圧倒的な魔王軍の本隊が姿を現す。その軍も先陣に劣らぬ神憑(かみがか)りな速度を維持し迫りくる。中年兵は異様なものを感じつつ、ひるがえる旗を確認し声を漏らす


「て、敵の総大将は三頭龍将軍・・・か」


死の力を象徴した悪魔の軍団とその先頭上空を飛ぶ巨大龍。中年兵はこの巨大龍が噂に聞く三頭龍だろうかと思う、龍の頭には何者かが騎乗している様にも見えるが水晶からでは小さすぎて確認できない。


そして中年兵は先ほどから感じていた違和感の正体に気づく。この悪夢の様な大部隊を掌握しているのが魔王では無かったのである。軍隊とは常に謀反の危険性を孕んでおり王にとって最大の軍権は生命に係わる事であるはずだ。魔王より余程の信頼を得ている魔将なのか、もしくは既に権勢が魔王を上回っているのか。中年兵は魔王軍上層部に起こる不気味な変化を感じつつイルディアへの回線を繋ぐ。


数十分後、永遠とも思える怒涛の軍勢が通り過ぎ去った街で(ジン)は茫然としつつ身体をブルブルと震わした。それは嵐で巨木がなぎ倒されるのを見た子供のように、ただただ圧倒的な力を目にし凄いと感じたのである。


最後に(ジン)の呟きが静けさを取り戻した街に響く。




「これで帝国も終わりっすかね・・・」






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆





皆さま、こんにちはー!


5年ぶりですが覚えていらっしゃるでしょうか!

この度、魔王軍から晴れて帰郷を許された三頭龍ことルカ・バウアーもうじき12歳ですー!

いやー魔王軍に捕らえられて幾月、生きて帰還できるとは思いませんでした。


今朝方ですが魔王様の元にイルディアの古代魔法についての報告が入ったさい

妹のニーナの名前が有りましたので、



思い切って里帰りの長期休暇(バカンス)を申し出たら、



な、何と認められたのですよ!驚きです!

言ってみるものですね。


休暇ですよ長期休暇(バカンス)!何より嬉しいのが、

この危険極まる様な最前線を離れ比較的安全な内地のイルディアに行ける事です。

余りの嬉しさに心躍る気分です。


イルディアでは妹との久しぶりのリゾートを楽しむつもりです。


その後は、何かと理由をつけて前線への復帰を拒否し魔王軍の現地部隊にでも編入させてもらいましょう。


都合の良い事にイルディアとは膠着状態と聞きますし

旧知の黄金の薔薇十字騎士団などに手心を加えて貰って内地での安全ライフですよ。


えぇ、気楽にお昼寝して過ごしましょう!


本来は、一人で帰郷するつもりだったのですが、

この大所帯は何かと言うと、どうやらイルディアまで送り届けてくれるようなのです!

見た目はアレな悪魔達ですが気のいい連中なんですよ。




では楽しい長期休暇(バカンス)の報告をご期待下さい!




☆☆☆☆☆☆




ここは旧帝国と神聖王国との間を貫く山脈の一際高い(いただき)に新たに築かれた魔王の城である。その玉座の間は豪華絢爛にして古今東西に比類なきぜいをきわめたものではあるが、今はどこか寂しく色あせて見える。本来控えるべき数多(あまた)の将兵が三頭龍と共に出征した為に広い室内がガランとしているのである。


そこにカツンカツンと足早な音を響かせ魔王軍四天王の首席を務める悪魔サタナスが訪れる


「魔王様、なぜ三頭龍将軍を行かせたのですか!奴は危険だと度々お伝えしたでは有りませんか!どこまで彼を甘やかせれば気が済むのです」


焦りと怒気を含んだ表情で詰め寄る四天王首席(サタナス)に、大きすぎる玉座に深々と座る褐色肌の幼女は、叱られた子供の様に憮然とし、


「私は甘やかしておらぬわ!彼奴(あやつ)が一人で行くと言ったのに部下達(バカタチ)が勝手についていったのだ!私は知らん」


尚の事悪いでは無いかと四天王首席(サタナス)は片手で顔を覆う。既に四天王からも二名、王や貴族なども多数、もはや三頭龍(ルカ・バウアー)のシンパは魔王軍を二分する勢力になっているのだ。直ぐに転送門(ゲート)の呪文で三頭龍を追い、手遅れになる前に奴を始末すべきなのだ。幼女は難しい顔で考え言葉を選びつつ答える。


「奴の力は本物なのだ・・・・・・」


魔王は、三頭龍(ルカ・バウアー)にしても真偽を確認する為に行動を注意深く監視させていたのだ。そして、その結果は驚愕するほどであり、三頭龍(ルカ・バウアー)は常に魔王軍のあるべき人間関係・行動全てに変化を及ぼし、その(うず)の中心に位置した。それは魔王が呆れて失笑してしまう程であったのだ。


「・・・神の作りし歴史に抗う力ですか」


その力において魔王は三頭龍(ルカ・バウアー)の足元にも及ばないと言う。四天王首席(サタナス)は天を仰ぎ見る、それでも彼は三頭龍(ルカ・バウアー)の手足をもぎとり達磨(ダルマ)にしてでも地下に幽閉しておくべきだと思う。猛威の力を振るう者を自由にさせるなど、(まさ)(とら)()に放つ行為以外のなにものでもないではないかと。


三頭龍(ルカ・バウアー)は、確かにイルディアに長期休暇(バカンス)に行くと言ったのですね」


四天王首席(サタナス)は念を押して尋ね。魔王は肯定とばかりにコクリと頷き、今朝方のやり取りを思い出す。もたらされた報告は、イルディアでの戦略魔法の実験が最終段階に入ったと言うものであった。それを聞いた魔王は頭に血が(のぼ)り思わず手にしていたラムネソーダ入りのグラスを地面に叩きつけて割っていた。あの酒呑童子(バカ)は何をしていたのだと。魔王の怒気をうけ、その場に居た魔将達は震えあがる。大戦を左右する戦略魔法は各国が研究しており、その分野に関して言えば魔王軍は数年は遅れていたのだ。


全ての原因は魔王復活前の勇者ポポス・バウアーの行動にあり、彼等が異世界への門を内から閉じた為に本来使用するべき魔王軍の戦略魔法が使用できなくなっていたのだ。そして一から魔法の構築が必要になった魔王軍は他国より開発が遅れる結果となっていた。それを知った時の魔王は悔しいと同時に見事だと唸ったものである、数年先を見越していた上に開発まで人族がもちこたえると信じたから出来た神の一手であったからである。


魔王の怒りで場が静まり返る中、一歩踏み出したのは三頭龍(ルカ・バウアー)であった。屈強で凶悪な悪魔達がひしめく中、魔王と同年代の幼児が歩みを進める、人であるのに『北の森の魔女の不老』の影響で5年間成長していない三頭龍(ルカ・バウアー)はそれだけでも異常ではあるが、この場でそんな事を気にする者は居なかった、この恐るべき魔将を『人』と侮る者など既にこの場には居なかったのである。


三頭龍(ルカ・バウアー)は平然と魔王の前に進み出ると不敵に笑い、自分が向かうむねを伝え魔王に了承させると踵を返し、


「イルディアに、ちょっと長期休暇(バカンス)に行ってくる」


と魔将達には目もくれずに片手を上げる事でニヒルに伝え一人去っていったのだ。映画のワンシーンを思わせる光景に魔将達が我に返り急ぎ後を追ったのは、彼がドアの外に消えた後であった。その光景を思い返し幼女は真摯な表情で呟く。


「まことに恐ろしい男だ、三頭龍(ルカ・バウアー)は」


それを聞き四天王首席(サタナス)も難しい顔で呟く、


長期休暇(バカンス)・・・、これは自ら世に出て暴れると言う宣言なのではないでしょうか!やはり、今からでも奴を連れ戻すべきです。一度天に昇った昇竜は、二度と地に戻らぬモノです!」




お久しぶりです、もうすぐ終わりです。

上手く纏めよう纏めようと思うと中々書けなくて

あと2・3話くらいかと。。。

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