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人類滅亡前に転生させられた『遊び人』だけど!  作者: ろぼろぼ
第2章イルディア編
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黄金の薔薇十字騎士団

ここは険しい岩場が永遠と続くイルディアの山岳地帯。


そこを北へ向かい行軍する大部隊がいた。

イルディア各地から集められた『魔王討伐隊』である。


その者達の猛牛の如く膨れ上がった筋肉と身体に刻まれた数多の古傷が彼らが恐るべき歴戦の強者(つわもの)達である事を物語っていた。


そして集団の先頭に立ち彼等を率いる筋骨逞しい初老の男こそ帝国の筆頭英雄にして嘗てイルディアを滅ぼした男と言われる青獅子将軍(ローベルト)である。


彼の元に黒衣を纏った長髪の男が馬で颯爽(さっそう)と駆けよる。この男は『魔王討伐隊』の参謀にして青獅子将軍(ローベルト)の片腕である大賢者カールであった。


「領都より新な増援部隊の知らせです」


黒衣の大賢者(カール)からの報告に青獅子将軍(ローベルト)は髭を撫でながら顔をしかめる。


報告にあったのは、貴族の学生を中心に新しく編成された100人ほどの部隊であり、指揮官には帝国と旧イルディアのそれぞれの姫の名があった。


「あの名物お嬢様たちと…貴族の子女達の新兵だと?」


驚きと共に信じられないとばかりに青獅子将軍(ローベルト)の機嫌は険しくなり思わずよろめく。彼が待ち望んでいたのは最前線で鍛え上げられた生え抜きの勇者達であり新兵ではないのである。


日が傾きはじめると彼等は一面に篝火を焚き陣幕を築くと野営の準備を始める。

そして殺気みなぎる強面の者達を陣幕の前に整列させると新設された増援部隊の子女達をもてなす事となったのだ。兵士達は口々に噂する。


「将軍からは貴族の娘達に戦場の怖さを十分に教えてやれとのことだ」

「さっさと領都い返せという事か」


「お、おい、増援部隊が到着したぞ!」


だが増援部隊の到着を知らせる兵士の顔はどこか青ざめておいた。そして辿りついた部隊を見た強面の兵達は誰もが息を飲み、まるでモーセの十戒の様に道を譲っていったのだ。


増援部隊が余りに常軌を逸していたのである。高貴な子女特有の凛々しさ、魔法をおび財をつくした装備に煌びやかな衣装、そして中央の馬車はとても戦場に向かうとは思えないほどの装飾が施されていた。その王宮のパレードを再現した様な場ちがいな財力と力を前に精鋭兵達の方が怯んだのだ。


そんな中を純白のマントに黄金色の鎧で身を包んだ二人の女性騎士が青獅子将軍(ローベルト)の前に歩み出る。


金髪の縦ロールをなびかせた女性は、現在の帝国皇帝の孫にしてイルディア領主の娘であるクリスティーナ公爵令嬢、そしてもう一人の赤髪の女性は旧イルディア王の娘であるカミーラ侯爵令嬢である。


二人の凛々しいいでだちは十代にして既に王者の威厳と風格を備えているように思われた。


黒衣の大賢者(カール)は、姫達に片膝をつき礼をすると彼女らの装備に目を向け息を飲む。


彼女等の腰に有る装備『炎の魔剣』『雷神の剣』は、嘗ての魔王や勇者が装備したとして伝説に謳われる武器であり、またその他身に纏うモノは全て本来宝物殿の奥深くに国宝として保管されるべき類のモノであったのだ。


だが黒衣の大賢者(カール)を本当に驚かせる出来事はそれからであった。


馬車の方角から鐘が鳴り響き、


彼女等の後ろに控える貴族の子女達が一斉に馬車に向かい列を作り地面にひれ伏したのである。

それは彼等より高位な者の登場を意味していた。


流石の青獅子将軍(ローベルト)も目を細める。

皇女であるクリスティーナを超える存在に考えが及ばなかったのである。


この場の全員が息を飲み見守る静寂の中、馬車の扉がゆっくりと開き、その中からマントを羽織った幼児が地面に降りたつのである。



いや正確には、ひれ伏した貴族達の頭の上に降り立ったのである。


そして幼児は、そのまま帝国貴族の子女達が作った人の道を踏み締め椅子に座る青獅子将軍(ローベルト)の前まで歩いてくると旧王女(カミーラ)皇女(クリスティーナ)を平伏させ、その麗しい背を椅子とし平然と腰を降ろしたのである。


それは、すでに帝国の権威に一切敬意を払わないどころか人を人とすら思っていない魔王の所業であり登場であった。


実際にイルディア領都では領主のレオン公爵が今回国宝の武具やアイテムを幼児達が勝手に持ち出した事により、胃痛から地面をのたうち回り大神官が急遽宮殿まで呼びだされる事となっていたのである。


幼児は貴族風に一礼し自らを名乗る。


「わたくし新設した黄金の薔薇十字騎士団で荷駄隊員しております、ルカ・バウアーと言います」


幼児の返答に黒衣の大賢者(カール)は唖然とする。


そう目お前の幼児は、唯の荷駄隊員なのである。

確かに幼児の首にはジークヴァルト家の奴隷と言うプレートが掛かっている。


その奴隷が姫様達を尻の下にしき貴族の子女達で作られた道の上を歩いてきたのである、もはや黒衣の大賢者(カール)は半ば思考するのを止めそうになりつつ幼児を見やる。


青獅子将軍(ローベルト)は、当初と打って変わって面白そうに幼児とその部隊の様子を眺めている。その目の奥には獲物を観察する獣の光を宿している。


そして一言だけ幼児に尋ねる。


「お前の目的は何だ?」


この過剰に武装した部隊と、それを纏めるこの幼児が只の増援とは思えなかったからだ。

幼児は満面の笑みで答える。


「古代魔法の探索任務も行おうと思っております」


黒衣の大賢者(カール)は全身に電気を浴びたように震える。


今回の大戦を左右する戦略兵器にあたる古代魔法の探索は、黒衣の大賢者(カール)(いにしえ)の書物を長年研究した末に発見し、彼と青獅子将軍(ローベルト)とで進めている極秘事項だったのだ。


それは最大級の国家機密であり、一市民の幼児が知っている事ではなかった。


この幼児の中身は怪物だ!危険すぎると黒衣の大賢者(カール)は大粒の汗を流しつつ目で青獅子将軍(ローベルト)に訴えていた。


だが青獅子将軍(ローベルト)は、そんな彼の考えを感じ取るもニヤリと笑い思考に入る。


まず黒衣の大賢者(カール)青獅子将軍(ローベルト)にしても、2人の姫の天性の素質については認めていたのだ将来素晴らしい勇者に育つと、だが以前に見た彼女達はまだ精神的に幼く彼女等が帝国に必要な勇者になるには、まだまだ先であろうと予想していたのだ。


だが目の前の幼児は、そんな帝国の将来秘蔵のカードを手中に収め、そして更なる最終兵器を得る為に先に行こうとしているのだ。


その手腕は尊敬に値するほどに。


そしてルカ・バウアーの名も思い出す、王国最狂…与太話だと聞き流していたが、実際みた幼児は噂で聞いた狂人どころではなく国の将来を左右する英雄の様に感じた。




青獅子将軍(ローベルト)は一呼吸置いた後に言う


「黄金の薔薇十字騎士団に先陣1000人を任せても良いか」


幼児は満面の笑みで即答する


「ぜひお任せ下さい」


帝国とイルディア北部の間には都市王国があり、そして数時間前に都市王国が魔王軍の先鋒にして最精鋭の死霊王と言う王によって攻め落とされたとの報告があったのだ。青獅子将軍(ローベルト)は死霊王に幼児をぶつけて実力を測る気なのである。


そしてこの後、


都市王国の戦いで薔薇十字騎士団の名は人類・魔王軍に轟く事となる。



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