国王変死事件簿!
王国から騎士へ叙任されたルカ・バウアー卿5歳です!
いや~、英国風にサー・ルカ・バウアーと名乗りましょうか
または、ドイツ風にルカ・リッター・フォン・バウアーも良いかもしれませんね。
いえ意地でも名乗ってみせますよ!
私が今どこで何をしているかと言うと、
馬車の荷台に揺られ隣国の帝国属領(旧イルディア帝国)に向かっている所です。
えぇ、冒険と言えば馬車は定番デスヨネー。
荷台では私を挟む様に髭面の二人の大男が座っています。
新しいパーティメンバーでしょうか?
二人は刑事ドラマの刑事の様に私に話しかけてきます。
「いや~バウア~、悪い事はできねーもんだな~」
「これで王国ともお別れだ!ちゃんと目に焼き付けとけよ~」
「あんな事して捕まらないとでも思ったか?お前の人生終わりだよ」
などなど小気味よい事を言ってきています。
良い人達デスヨネー。
私はと言えば木の手枷・足枷をされ、小さな鉄の檻に入れられふて腐れています。
はい、どう見てもただの囚人の護送です!
どこからともなく
ドナ ドナ ドナ ドナ~♪
と聞こえてきます。
☆☆☆☆☆☆☆☆
これが只今、王都アンツの街角や酒場で熱い話題となっている
『国王、ルカ・バウアー騙し討ち事件!』
の結末であった。
国王が騎士候を餌にルカ・バウアーを城におびきよせて捕えた後に
国外へ追放したと言うものである。
だが事実は噂とは若干違うものであったのです。
その日、騎士叙任と言う事で意気揚々と登城したルカ・バウアーであったが、
謁見の間に現れた顔色の悪い国王のプロフィールを見て笑顔を引きつらせる事となる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『アルベリヒ・アンツ国王』
職種:国王
【プレイヤー好感度】
恐怖 :99
【プロフィール(940~984)】
暗君として知られる、生来気が弱く984年の暮れに突然の変死をとげる。
当初は毒殺・暗殺が疑われ、数多の者が投獄・過酷な尋問を受ける事となる
だが後世の調査により国王の遺体の脳より腫瘍のあとが見つかり
彼が病死であった事が確認される。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
この不吉極まるプロフィールの国王を前に
さっさと叙任を済ませ難を逃れようとした幼児であったが、
国王の生来の気の弱さと幼児の持つ凶悪な恐怖スキルがそれを許さなかったのである。
魔女討伐と言う無理難題を命じた事により、
幼児に対し酷く怯えていた国王は、幼児を目の前にして見事に意識を飛ばしてしまったのである。
それは猛獣を前に意識を失う小動物の如く実害の無いモノであったのだが
当然、目の前で昏倒した王を見た近衛兵達には、幼児が何かしら弑逆を計ったようにしか見えず
即座に彼を捕縛する事になったのである。
その後の医師による診察から国王が精神的疲労から軽い貧血を起こしただけであると言う事は判明していたが、ルカ・バウアーの存在を快く思わない王妃や一部の勢力は、そのまま簡易裁判を行い国王が目ざめる前に幼児を国外追放にしてしまったのである。
事情を知らないルカ・バウアーは、最後まで近衛兵達に「国王は寿命であり無実だ」と訴えていたと言う。
邪魔者を排除した事により内心喜んでいた王妃達だが、その年の暮れにその笑顔を引きつらせる事となる。
国王が、まるで幼児の呪詛に祟り殺される様に衰弱していき、
新年を迎える事なく幼児の言葉通り亡くなったからである。
それ以降巷では
『王国最狂の秘技30日殺し!』
『追放されし王国最狂、王都の国王を殺す!』
と語られ、また暮れにかけ城内で続いた小火や怪我人まで、実しやかに『ルカ・バウアーの怨念』説として語られ追放に加担した王妃や臣下は幼児のこの有り得ない祟りの報復に怯える事となる。
だが結果として、多くの無辜の被害者を産むはずだった国王変死事件は、
限りなく黑と思われるが白であるルカ・バウアーの尊い犠牲により
他に累が及ぶ事を防いだのである。
☆☆☆☆☆☆☆☆
一月後、人々で賑わう帝国領イルディアの都では
豪華な鎧に身を包んだ帝国の上級騎士達が多数駆け回っていた。
「そちらには居たか!」
「いや、ダメだ!もう奴隷商に売られてしまったらしい!」
「何てことだ!公爵様から手厚く保護しろと言われてるのに・・」
「彼を売り払ったアンツの奴隷商を捕えておけ!」
物語は次の舞台に移るのであった。。。