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わらしべ長者編 完結 神の就〇活〇

使用制限を解除し、泥棒を追いかけ行きついたのは、とある廃れた神社だった。


「お前ら、誰だ?俺の家に何の用だ?」

 

この廃れた神社を家と言う泥棒。その正体はホームレス、ではなく神様だった。

なぜ神様がBSBを盗み出したのか。廃れた神社に居続ける理由とは。

果たして赤矢と日和は無事BSBとマジックモンスターハントを手に入れることが出来るのか...わらしべ長者編完結



泥棒を追いかけて行きついたのは、人気が全くない廃れた神社の境内。正直言って、この街に長らく住んでいる俺でさえ知らなかった場所である。そんな場所に泥棒はまるで慣れ親しんだ場所であるような足取りで奥へと進み、本殿に入ろうとする。


 「おい、ちょっと待て泥棒!」

 「!?」

 突然背後から声を掛けられ、体をビクつかせる泥棒。神の力を使い、神速で駆け抜けた自分に追いつく人間などいないと思っていたのだろう。ゆっくりとした挙動でこちらを振り返る。


 「お前ら、誰だ?俺の家に何の用だ?」

 俺の家?ここに住んでいるのだろうか、この廃れた神社に?見た感じ野宿をしているバックパッカーではない。ボサボサの髪と汚れきった白いワイシャツ。ホームレスか?


「言っただろう、泥棒って。お前が盗んだそのアタッシュケース、返してもらうぞ」

 「それはわたくしのものですわ」

 泥棒に向かって追いかけてきた理由を話す。日和も気が早い。まだBSBとマジックモンスターハントは日和のものではない。


 「嫌だ、これは俺のものだ!渡してなるものか」

 大事そうにアタッシュケースを胸に抱えてしまう泥棒。そんなにそのゲームが欲しかったのか。でもここ電気通ってます?電気が通っていないと充電できないですよ?


 「駄目だ。欲しければきっちりお金を払って手に入れるんだ」

 「27万9千円ですの」

 「払えるかそんな金額!ぼったくりもいいところじゃないか」

 全くその通りである。それを受け入れてしまった俺の感覚は麻痺しているのか。神の力などというプライスレスな力を手に入れてしまったからだろうか。


 「そうだな。だがそれでも盗んでいいってことにはならない。さぁ返してもらうぞ」

 掌を上にした状態で右手を前に出し、ゆっくりとした足取りで泥棒に近づいていく。だが


 「これは俺のものだ。渡してなるものか」

またもや同じことを言い、アタッシュケースを賽銭箱の上に置き、日和の力が込められたビニール傘を両手で持ち、刀のようには構える泥棒。日和の傘ってあの使い方で合っているの?刀として使われているところしか見たことないんだけれど。それとも流行か何かですか。


 「仕方がない」

 日和を背中から降ろし、俺は拳を前に構える。特に格闘技をやっているわけではないので、素人丸出しの構えだが、美月の力を使う俺にはあまり関係のないことだ。足に力を込め、一足で泥棒の懐に潜り込もうとしたその時


 「行くぞぉ!」

 泥棒が気迫の籠った掛け声と共に前へ出てくる。その速度はすさまじく、一瞬俺の視界から泥棒の姿が消えた、と思った次の瞬間


 「はっ」

 吐息が聞こえたと認識した次の瞬間には逆に俺の懐に泥棒が潜り込んでいた。そしてそのまま持っていたビニール傘を横なぎに振るう。


 「くっそぉっ」

 間一髪、後ろに飛び、直撃は回避する。すぐさま体制を立て直そうとしたのだが


 「なっ」

 後ろへの慣性が収まり、体が制止した時にはすでに泥棒は再び懐に潜り込み、再びビニール傘を振るう。


 今度は避けることが出来ずに左わき腹目掛けて振るわれたビニール傘を左腕を下ろすことでガードする。美月の力は日和よりも上だ。そのため俺に大きなダメージが伝わることはない筈なのだが…

 

「痛ってぇ」

 思わぬ痛みに顔をゆがめる。それは普通のビニール傘で殴られるよりも遥かに痛く、まるでこん棒にでも殴られたようだった。


 「へぇ、これを食らっても立っていられるなんて、お前普通の人間じゃないな?神の力でも授かっているのか?」

 突如意味不明のことを言い出す髪の毛ボサボサ、汚れきったワイシャツの泥棒。何を言っているんだ。普通の人間じゃない?神の力を授かっている?なぜそれを知っている。


 「お前、何者だ?」

 相手の認識がただの日和の力を一時的に得た泥棒から得体のしれないものへと変わる。


 「ははっ、さっきから気になっていたけれど、本当に最近の人間は口の利き方を知らないな。まぁいいか。教えてやる。俺はこの神社の守り神。まぁ今は忘れ神と言った方が正しいのかな」

 自嘲的に話す泥棒。髪がボサボサで汚れきった白いワイシャツを着ているこの男が神だと?いったい何の冗談だ?


 「日和さん...」

 意見を求めるため、本物の神である日和に声を掛ける。


 「可能性としてはなくはないですわ。神社の守り神となった神は人々の信仰を持ってして己の力とする。ですが信仰を失った守り神は徐々に力を失い、やがて人間となる。普通ならば完全に人間となる前に神界に帰るものですが、この男はもうゲームショップの店長に視認されるほど人間化が進んでいますわ。それにいくらわたくしの力の入ったビニール傘を持っているとはいえ、お姉さまの力を使う下僕にダメージを与えるなんて…一体どうやって?」

 どうやら日和の口ぶりからして、目の前の泥棒は本物の神様らしい。


 「さぁどうする人間?このまま俺の領域にいるというのなら、守り神としてお前を排除しなければならないが」

 初めてこの神を見た時感じた、いわゆるニート臭は消え去り、神としての神々しさを取り戻し始めた守り神。


 「悪いが俺はそこのアタッシュケースの中に入っているゲームを持ち帰らなきゃいけないんだ。返してくれたらこの場から立ち去る。だから返してくれ」

 俺の目的は守り神がなぜか盗んだゲームであり、この境内に侵入することではない。故にゲームさえ返してくれれば一件落着なのだが。

 

 「返してくれれば、か。何も知らない人間が…力ずくで帰ってもらうぞ!」

 またもや視界から消え去る守護神。俺はと言うと繰り出される斬撃?を腕で防御するしかない。防戦一方だ。


 「なぜ、貴方は神の身でありながらそのゲームを手に入れようとするのです?」

 同じく神の身でありながら、仲間外れにされたくないが故にゲームを手に入れようとしている日和が問いかける。


 「ははっ、まぁ神社の守り神なんて役職に就く必要がないような優れた神様たちは知らなくて当然だよな…教えてやる」

 余裕なのか、俺への追撃を止め、説明をし始める守り神。


「あれは10年ほど前、ここはまだ何も建っていない空き地だった」

 遠い過去を思い出すように目を瞑り、語りだす。何だか最近はよく神様の過去話を聞くな。


 「当時の俺は高校卒業を目前に控え、就職活動中だった。だが大した能力のない下神である俺には神界ではまともな職に就くことが出来ずにいた」

 高校やら就活やら本当に神様ですか?実は人間なんじゃないの?


 「周りが内定を貰っていくなか、俺だけが今だに内定を貰えていなかった。もう何でもいいから雇ってくれ。そんな気持ちが心を埋め尽くした、そんな時だった。ここに人間による神社の建設予定が出来たのは」

 視線を俺と日和から廃れた本殿をへと移す。俺たちもそれに習う。

 

 「昔から長きに渡って祭られている神社や寺の守り神ならいざ知らず、新しくできたばかりの神社の守り神なんてはっきり言って人気がない職柄だった。そのため倍率なんてほぼなかった。俺は何を奉る神社なのかも調べずにエントリーした。そしてそのまま内定を得た」

人間でもよくある話である。取りあえず何でもいいからエントリーしとけ。内定を貰いいざ入社したら自分には合わない職柄だったと。そう言う話だろうか?


 「いざ、この神社の守り神として下界に降りてきた。俺がまず目にしたのは大勢のスーツを着た人間の男女。そして眩いほどの光を放つ四角い箱だった」

 守り神は眩いほどの光を放つ四角い箱を表現する為か、両手をL字にし、左右の親指と人差し指をくっつけた。アレはカメラか?


 「それらの視線の先には俺が降りてきた目の前にいた1人の男に集まっていた。そしてその男の手には…BSBとマジックモンスターハントが握られていた」

 守り神は俯いてしまった。その背中は少し寂しげであった。


 「そしてそれらはこの神社の奥に大切に奉納された。そう、ここはゲームを奉る神社だったのだ」

 衝撃の真実を述べる守り神。ゲームを奉るって流石は現代人。考えることが違う。


 「最初のうちはここは参拝客でいっぱいだった。毎日が同じゲームを持った人間が来ては賽銭を納めていく。自然と俺自身の力も増していった」

 あぁあれね。俗に言う聖地巡礼ってやつだ。アニメやゲームの舞台となった場所をめぐるヤツ。その会社なかなかやるな。


 「だが、ある日を境に参拝客は減り、神社は廃れていった。ゲーム会社の倒産だ」

  そう言えばマジックモンスターハントってパクリ疑惑が出ていたんだっけ。そりゃ倒産するわ。


 「この神社の神主である社長は失踪。もちろんこの神社に参拝に来る人間も次第に減っていた。現在の神社の有様を見れば分かる通り、人々からは忘れ去られた場所となってしまった」

 だったらなぜ守り神としていまだにここにいるのか。


 「だが、会社は無くなれどゲームのユーザーまではいなくなるわけではない。今も少数ながらゲームで遊ぶ人間がいる。それが信仰心となり、ご神体であるBSBとマジックモンスターハントを通して俺に力を与えてきた。俺としてはそれだけで良かった。正直、働きたくないし、ただいるだけで生きていくだけの力が流れ込んでくるなら別に良かった。メシウマだった」

 何この神様。もう現代人そのままなんですけれど。共感できてしまうんですけれど。


 「だがある日、1人の男によってその生活は急変してしまう。俺が微かな信仰心で生き抜いてきた平穏な毎日をあの男は奪ったのだ。あろうことかご神体であるBSBとマジックモンスターハントを盗み出すという神をも恐れぬ所業を行って!」

 再び振り返り、こちらを睨んできた守り神の顔には誰が見てもわかる感情が出ていた。怒りである。


 「ご神体が置いてあった場所にはなぜか代わりに催涙スプレーが置いてあったよ。何でも置いておけばいいと思ったのだろう。だがこれで俺は信仰心の供給を受けられなくなった。このままでは力を失いただの人間になってしまう。急いでこの街を探し回った」

 苦労を思い返してなのか、苦痛の表情に変わる。そこで初めて静観をしていた日和が声を発する。


 「では、なぜ神界に帰らなかったのです。帰りさえすれば力はここまで失われることはなかったはずですの」

 日和の疑問に対し、まるで理解できないというような表情を浮かべる。


 「何を言っている。目の前には何もせずに生活していける方法が転がっている。それをみすみす手放すわけがないだろう?」

 手に余る駄目神である。


 「ほぼ力を失い人間にも姿を認識され始めた頃、俺はようやく盗んだ人間の居場所を掴んだ。それがあの店。わかるだろう。あの店の店主が俺のゲームを盗んだんだ」

 つまり、盗んだ側と盗まれた側は逆だった。泥棒だと思っていたこの守り神は実は自分のものを取り戻そうとしていただけだったのか。


 「俺はあの店主に詰め寄った。盗んだゲームを返せと。だが店主はシラを切り続けた。これは盗んできたものではないと。ご神体を本殿から盗まれ、力を失った俺には奪い返す力も買い取る金もなかった」

 話長いな。まだ続くの?


 「力の供給を絶たれ、消え去るのも最早時間の問題。そんな時に話しかけてきてくれたのは偉そうな態度をした幼女、君だよ。赤髪の女神」

 守り神は日和を見つめ、微笑む。


 「君が俺に渡してくれた傘のおかげで借り物ではあるが神の力を取り戻した俺は、その力が体になじむまで待った。そして今日、奪い返す行動に移し、見事に奪い返した。そして現在、こうしてご神体は本殿へと戻り、俺は力を取り戻した」

 両腕を横へと広げ、愉快そうに高笑いを始める。


 「だからもう帰ってくれ。俺はただのんびり暮らしたいだけなのだから」

 そう言い残し、アタッシュケースを持ち、本殿へと消え去ろうとする。


 「ちょっと待った。また盗まれそうになったらどうするつもりだ?」

 BSBとマジックモンスターハントは制作会社が倒産したため、もう製造は行っていない。また出荷台数が少なく、手に入れにくい。そのため、いつまた同じように盗みにくる輩がいるか分かったものではない。


 「その時は力を行使し、守らせてもらう」

 その言葉に危うい物を感じる。自分のものを守るためならば相手などどうなっても良いというような危険な感じを。その時だった。


 「はっはっ、やっと着いた。俺のBSBとマジックモンスターハントはどこだ!返せ!」

 神社の境内に息を切らしながら入ってきたのはスキンヘッドのゲームショップの店長だった。膝に手を突き、立ち止まりながら目の前の光景を確認する。


 「貴様...泥棒が!なぜこの場所だと分かった?」

 守り神がスキンヘッドの店長を見て驚きの声を上げた。それを聞いた店長は


 「決まっているだろう。そのアタッシュケースに発信機を付けといたんだ。お前のような泥棒から守るためになぁ」

 お互いがお互いを泥棒と呼び、罵り合う。


 「ふん、傲慢な人間だな。葬り去ってやる」

 守り神がビニール傘を構え、一歩前に出る。そしてスキンヘッドの店長に向かって走り出そうとした。が


 「ふぅ、やっと着いたか。これからまたお世話になる神様に報告をしなければな…おや、珍しいね、こんなところに参拝者とは。ん?そこにいるのは馬場谷(ばばたに)?馬場谷じゃないか!?」

 そこに新たに表れたのは数日前、駅で鼻血を出していた中年男性だった。黒色のスーツを着て、青いネクタイを締め、ビジネスカバンと変わらぬ恰好をしていた。


 「げっ、社長!」

 スキンヘッドの店長は鼻血の中年男性を見て社長と呼んだ。


 「久しぶりだな馬場谷。会社が倒産して以来か。どうだ、元気にやっているか?」

 「えぇ、お陰様で...」

 何かの社長とその社員が久しぶりの再会を果たしていた。とても和やかな雰囲気である。その周りには抜いた刀《ビニール傘》をどうしたら良いか分からない様子の守り神が。取りあえず下せば?


 「今は何をやっているんだ?」

 「しがないゲームショップを経営しています」

 「お前がゲームショップを!そうか、良かったな!」

 社会人同士の会話が続く。俺たちはどうすればいいの?こういうのって長いイメージがあるからなぁ。早く終わりにしてよね、明日学校があるんで。


 「ところで、わが社が開発・販売していたゲーム機、ブレススタンドアップボーダーを見込んで資金提供をしてくれるところを見つけたんだ。そこで、昔の仲間を再び集めて再出発をしようと思っているんだが...」

 「本当ですか社長!だったら俺も入れてください。正直言ってゲームショップなんて全然儲かってなくて...もう店を畳もうと思っていたところなんですよぉー」

 見た目からは想像がつかない低姿勢を見せ始めたスキンヘッドの店長。


 「あぁそのつもりだ、馬場谷。ところで、つい先日会社が倒産した後、実家があるキュウシュー地方に帰郷した車中くるまなかに偶然再会したんだがな。アイツ、キューシューからママチャリ1つでこっちまで来たそうだ。何でも道に迷ったんだと。全くとんだ笑い話だよ。まぁ親切な青年が帰るための資金を恵んでくれたらしいんだがな」

 笑いながら話す社長。その親切な青年は俺です。世間っていうのは狭いな。


 「車中くるまなかが言うには久しぶりにこの神社に立ち寄ってみたらご神体であるBSBとマジックモンスターハントがなかったようなんだ。しっかりと鍵を閉めて保管しておいたはずなのにな。なぁ馬場谷、何か知らないか?」

 先ほどまでの温和な表情が陰りを見せ、厳しい表情になる社長。それを見て汗が止まらなくなるスキンヘッドの店長。

 

 「さぁ俺は何も知りませんよ。どこに行ったんでしょうねぇ」

 目が泳ぎまくっている。ウソつくの下手だなぁ。


 「本当か?この神社の鍵番をしていたのはお前だったよなぁ馬場谷。鍵どこやった?」

 「あれぇ、俺でしたっけ。すみません鍵なくしました。拾ったやつが盗んだんじゃないですかねぇ。ひゅーひゅー」

 馬場谷が口笛を吹き始めた...いいや吹こうとしていた。実際には吹くことが出来ないのか空気が出る音しかしなかったが。ごまかすために口笛を吹こうとするなんてヤツ初めて見た。貴重な体験をありがとう。


 「ごまかすんじゃない馬場谷!お前が自分の店でBSBとマジックモンスターハントを高値で販売していることは分かっているんだ!シリアルナンバーを調べればすぐにわかるぞ!正直に言え!」

 境内に響き渡る叱責。怒られていない俺と日和、守り神までもが背筋が伸びた。


 「くっそぉバレちゃ仕方がねぇ」

 馬場谷はそう言うと一番近くにいた日和の後ろに回り、首に手を回す。しまった人質か。


 「何をするんですの?」

 急に首を絞められ驚きの声を上げる。


 「うるせぇ黙っていろ。さぁ社長。このことは不問にしろ。さもねぇとこの嬢ちゃんの首を折る。どうする?アンタが許すだけで命1つ助かるんだ。安いもんだろ」

 自分の首を絞める行為だと気づかない馬場谷。それだけ追い込まれているのだろう。だが困った。日和は現在美月が作った人型に入れられており、神の力はなく、普通の人間程度の力しかない。つまり自力での脱出は不可能だ。


 「馬鹿な真似はやめるんだ。そんなことをしても何も変わらない」

 社長が馬場谷の説得を試みる。


 「いいや変わるさ。アンタが許せばな。そこの連れの兄ちゃんと泥棒。お前らもここで会ったことは忘れろ。いいな」

 矛先は俺と守り神にまで及んだ。これはもう約束するしかない。そう思ったとき


 ゴソゴソ


 日和が一張羅の学校指定赤ジャージ(上のみ)の首元から手を突っ込みゴソゴソと中を漁っていた。一体何をやっているんだ。


 「おい嬢ちゃん何やっている。あまり動くんじゃねぇ」

 馬場谷も気になったのか釘を刺す。


 「あっありましたの。わたくしを拘束した罪は重いですわよ人間!」

 そう言って首元から取り出したのは1本の缶、物々交換で守り神から手に入れ、元はBSBとマジックモンスターハントの代わりとして置いていった馬場谷の所持品、催涙スプレーであった。その噴射口を馬場谷の目に向け一気に引金を引く。


 「げほっへほ。やめろ、、目が痛えぇ。クソ」

 目を押さえ、涙を流し始める馬場谷。その隙に日和が俺の後ろに隠れる。


 「このクソガキがぁ!」

 怒り狂った馬場谷が微かな視界を頼りにこちら目掛けてタックルを仕掛けてくる。俺はそれを美月の力で迎え撃とうとする。その時


 「バカ野郎!」

 突如目の前に社長が飛び出し、向かってきた馬場谷の顔面に握りこぶしを食らわす。その衝撃で馬場谷がかけている色付きメガネが割れる...だけに留まらず境内を20メートルは吹き飛ぶ。


 「ふぅ、少しは頭を冷やせバカ谷が」

 信じられないような怪力を見せた社長。アレ生きているのバカ谷さん?社長はもうそちらへは目を向けず、本殿の方へ足を運ぶ。


 「すみませんでした。お見苦しいところを見せてしまって。神様」

 そして賽銭箱前に立つ守り神の前で頭を下げる。その光景を見て俺はとても信心深い人なのかと思った。だが


 「いいんだ社長。俺もアイツは前から気に入らなかったんだ。スッキリしたよ。それと心配しなくてもアイツにも死なない程度に力を与えておいた」

 そう言えば目の前の守り神はもう神の力を取り戻していた。つまり常人には見えなくなっているはずだ。それなのに社長と馬場谷は普通に話をしていた。つまり


 「社長と店長はその守り神の従者?」

 それ以外にはあり得ない。この2人が霊能力者でなければの話だが。

 

 「あぁその通りだよ。青年。神様が見えているということは君も従者なんだね。もっとも私が、と言うよりかはわが社がと言った方が正しいか。私たちの会社がこの神社を建て、BSBとマジックモンスターハントを奉納したときに神様が現れてね。その時は驚いたよ」

 過去を思い出すかのように上を見て、笑い出す社長。それにつられてなのか守り神も小さく吐息を漏らす。


 「神様。今まで放っておいて大変申し訳ございませんでした。遅くなりましたが、もう一度BSBを世の中に広める算段が整いました。良ければご一緒に世の中にBSBを布教していただけませんでしょうか」

 またもや頭を下げる社長。いやおかしいよね。その神様、ただ単にここに住んでいるだけだから。タダ飯を食べているだけだからね。


 「いいだろう。もう一度だけだぞ」

 だが偉そうに返事を返す守り神。その顔は少し安堵しているように見えた。失業しなくて済んだと。


 「赤髪の女神」

 「なんですの」

 

 

 「貴方のお陰で俺はまた守り神としてやっていける。感謝してもしきれない。

何と礼と申せばいいのか」

 守り神が日和の方に近づき頭を下げる。


 「礼と言っては何だが良ければ奉納されていたBSBとマジックモンスターハントを持って行ってはくれまいか。もちろんそこの従者も」

 その言葉に社長が気づき、こちらへ向かってくる。


 「それはいい考えですね神様。ですが旧式ではなく新機種をお礼の品として差し出すのはどうでしょうか。実はもう完成品を持っているんですよ」

 そう言い社長はどこからともなく箱に入った新品のBSBを取り出す。日和といい勝負だ。


 「そうだな。さぁ遠慮せずに受け取ってくれ。さぁ」

 何だかこの2人からは布教の匂いを感じる。だが


 「まぁそこまで言うのなら受け取ってあげなくもないですわよ。ありがたく思いなさい。ですからもう1台つけなさい」

 目当ての物を手に入れ、今にも笑い出し、飛び跳ねたいのを堪え、上から目線を貫く日和。ちゃっかりもう1台要求する。恐らく美月の分だろう。


 「もちろん、何台でも。宜しければご家族、ご友人の分も用意いたしますが」

 またもやどこからともなくBSBを取り出す社長。最早マジックである。


 そんなこんなで無事に目当ての物を手に入れた俺と日和。物々交換も捨てたもんじゃないな。



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