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わらしべ長者編 創造の代償 まるで〇〇〇の速〇制〇みたいだ

ピンクデラマンデラとの死闘を演じ、美月と上神のモンローの過去話を聞き、ピンクデラマンデラの相方であるタカハシタカシからカンサイジングッズを手に入れた赤矢と日和。5万円相当のブツを手に物々交換に向かい早数日...


時間が許す限り、人通りが多い駅周辺で物々交換を持ちかけた。サラリーマン、ОL、小中高校生。大学生。フリーター、ニート。老若男女ニューハーフありとあらゆる人間に声を掛けた。だが、みな一様にこう答えるのだ。


 「えっ?誰それ」...と


期限の日である6月22日を迎えてしまった2人は一か八かの賭けでカンサイジングッズを持ってゲームショップ店長の元へ向かおうとするが...

6月22日

 今日は部活がある曜日。いつもなら部活に直行しているところだ。だがしかし今日はそういうわけにはいかない。


 「行こうか」

 「今日が最後のチャンスですの…」

 今日はとある期限の日。この日を逃せば俺たちは目的の物を手に入れられなくなる。それだけは避けなければならない。その目的の物とは…


 ブレススタンドアップボーダー通称BSBビーエスビー。とある中規模ゲーム会社が会社の命運をかけ開発した携帯ゲーム機で、その見た目はまるで大手電子機器メーカーが販売する携帯ゲーム機にそっくりであるため、敬遠されがちな機体である。それとそのソフト、魔法を使ってくるモンスターをこちらは魔法と武器を使い、自分で作成したキャラクターを操作して討伐するというゲームだ。これが発売されたときの世間の反応は「どこかで聞いたような内容だな」である。この2つを手に入れるため俺と日和は1週間以内に27万9千円を用意し、裏路地にあるゲームショップの店長である厳つい顔をし、色付きメガネを掛けたスキンヘッドの中年男性に渡さなければならない。のだが


 「駄目ですのー。誰も交換してくれないですの...」

 日が徐々に沈みかけ、町に学校帰りの学生たちで賑わいを見せ始める頃。俺たちが今手に持っているのはお笑いコンビカンサイジンのグッズ詰め合わせ。カンサイではプレミアム価格が付き、5万円という高値で取引されているらしい。だがそのプレミアム価格を付けられた品も彼らの名が全く売れていないここでは全くの無価値。ゴミ同然である。それでは誰も交換などしてくれない。カントーでは無名の芸人のグッズ詰め合わせを欲しがる人間など存在するのだろうか。


 「こうなったら俺の創造で…」

 俺は自分の両腕を見てつぶやく。つい先日、対ピンクデラマンデラ戦で美月から新たに授かった特殊能力で、俺が頭で思い描いた物を実体化できる能力である。これさえあれば27万9千円なんて金額、あっという間に用意できる。


 「やめておけパシリ、神判が下るぞ。、まぁそれでもいいっていうならやってもいいが」

 楽しそうに頭の中に話しかけてくる主神の美月。このやめておけはやれということである。


 「やめときます」

 

 それから時間が許す限り、人通りが多い駅周辺で物々交換を持ちかけた。サラリーマン、ОL、小中高校生。大学生。フリーター、ニート。老若男女ニューハーフありとあらゆる人間に声を掛けた。だが、みな一様にこう答えるのだ。


 「えっ?誰それ」...と

 

「もうしょうがない...これを持って直接交渉をしましょう」

 俺が現在持っている最も高価な物、カンサイジングッズ詰め合わせ。お金には換金できなかったが、これはカンサイではプレミア価格がついている品物だ。ならばカントーにおいては更に希少価値があるはず。あとは交換相手のゲームショップ店長がお笑いコンビ、カンサイジンのファンであることを願うばかりである。


「無謀ですわ...下僕...」

 最早話す気力すらないのか、小さな声で否定する日和。それでも何もしないよりはマシだ。最後の気力を振り絞り、スキンヘッドの中年男性が店長を務めるゲームショップへと向かおうとした。その時


 「てめぇ待ちやがれぇ!」

 

 ビクッ


 突如、俺が曲がろうとした大通りの横道から大きな声が聞こえた。一瞬俺が言われたのかと思い、体がビクつく。だが違った。


 「どけっ」

 ドン


 俺の体を押しのけるようにして駆けっていく1人の男性。髪は伸びきってボサボサ、汚れきったワイシャツを着ていた。その両手にはそれぞれ違うものが握られていた。右手には現金でも入っていそうなアタッシュケース。左腕には


 「おい日和さん...あれって」

 「わたくしが与えた傘ですわね」

 日和が先日、この男と物々交換した神の力が入ったビニール傘であった。


 「ぜぇぜぇ、クソ、やっぱアレをやっていると体がヘタってしょうがねぇ...やめるか...」

 その男を追いかけるように横道から出てきた息も絶え絶えの男性。俺たちがこれから向かおうとしていたゲームショップの店長であった。


 「どうしたんですか?」

 「おぉ、お前ら確かこの前の…悪いな今は構っている暇はねぇんだ」

 だが店長は膝に手を突き、動けないでいる。


 「あのーもしかして今のアタッシュケースって...」

 最悪の事態を想像し、思わず声に出る。


 「あぁその通りだ。あの中にはBSBとマジックモンスターハントが入っている。なのにあの野郎、見せてほしいっていうから見せてやったのにいきなりそれを奪って逃げやがった。俺が組織から抜けるとき、命からがら持ち出したブツだってのによぉ...」

 またもや怪しげな言葉をつぶやく店長。あーあ、盗んだ奴捕まったらひどい目に会うぞぉ。


 「下僕、今すぐあの泥棒を追いかけますわよ」

 話す気力すらなかった日和が凛と立ち、逃げた男の方を見据える。


 「あれを奪って…むふふですの」

 よからぬことを考えている表情をする日和。絶対に取り返した後、そのまま持ち逃げするつもりだ。それは駄目だぞ。


 「店長さん、アレは俺たちが捕まえますんで、先に店に戻って待っていてください。それでは」

 そう言い残し、日和をおぶった俺は逃げた男の追跡を開始する。


 「居ましたわ。あそこですの」

 大通りを駆け抜け、しばらくした頃、日和が逃げた男を発見する。現在歩道橋を登り切り、俺たちとは反対側の歩道に移動している最中であった。その移動速度はすさまじく、まさに風の如く駆け抜けていた。それでも常人よりは、と言う意味で、美月の力をフルに使った俺には足元にも及ばない。


 「日和さん、あの力を奪うことは出来ないんですか?」

 俺が授かっている力は日和よりも強い美月の力だ。それ故、逃げた男に追いつくことは容易であるのだが、周囲には大勢の人間でごった返していた。人目に付きたくないということはもちろんのこと、謝って体がぶつかってしまい、相手の体を粉々に砕くというスプラッター的な事件を起こしたくはない。そのため、俺は力を最小限に留め、追いかけているのだが


 「無理ですわ。アレは直接契約している下僕と違い、ビニール傘を媒介に一時的に授けた力、つまり使い捨ての力を使っているに過ぎませんの。媒介に入っている力は最早わたくしのコントロール下を離れていますわ。それを止めるには力を使い果たす、もしくは媒介つまりビニール傘を使用者の手から放すしかありませんわ」

 

「じゃぁこのまま追いかけ続ければいずれは力を使い果たし、普通の人間が走る速度になるというわけですね。このままのペースだったらあとどれくらいですか?」

 無理に追いつかなくてもこのまま追いかけ続ければいいのならそれに越したことはない...だが


 「あと365日ですわね」

 わぉ、すごい長持ち。とても使い捨てとは思えない。LEDでも入っているの?


 「あの男を操ることは?前は操って俺を襲って来た時のように操れば逃げることも出来ないはず」

 まぁ操るにはネックな条件をクリアすることが必要なのだが。清いことというとても悲しい条件が…

 

 「それは先ほどからやっていますわ。あの泥棒は条件をクリアしています…ですが操れないんですの」

 困ったような声色で唸り始めてしまった。こんなことは初めてなのだろう。


「そんな…じゃぁあの男に追いついて直接傘を奪うか破壊するしかないってことですか?」

 「まぁ・そう・言う・こと・になりま・すわね」

  階段を駆け降りる衝撃で日和の言葉が途切れ途切れになる。例えるならばワレワレハウチュウジンダ状態である。


 「なら、少し無茶をしてでも追いつかなくちゃいけないですね」

 「くれぐれも気を付けて。わたくし、グチャグチャになった人間など見たくありませんわ」

 俺だって見たくない。すれ違いざまの肩パーンなど…細心の注意を払い、美月の力を30パーセントほど使い、徐々に走る速度を上げる。少しずつではあるが泥棒との距離が縮む。一般人としては早いが、人間離れした速度ではない。これならば暫く追いかけて行けば追いつく。そう思っていたのだが


 「あれっ?距離が離れていく?」

 歩道橋を渡り、反対側の大通りを直線に追いかけているのだが、徐々に泥棒との距離が離れていく。もしかしてあの泥棒、まだ全力で走っていなかったのか?


 「下僕、なぜ力を緩めたのです!このままでは見失いますわよ!」

 日和が俺の耳元で怒鳴り散らす。そんなことは分かっている。のだが


 「あれ...これ以上力を込められない?」

 美月の力の30パーセントで徐々に距離を詰められた。先ほどまでは20パーセントで距離を保つことが出来た。だが現在、フルで力を使おうとしても10パーセント程の力しか出ないのだ。いったいどうしたというのか。この間にも泥棒の背中が遠くなっていく。


 「しっかりしなさい、下僕!」

 俺の頭をポコポコ叩く日和。無理です。俺は馬でもドМでもないので叩いたところで速くはなりません。その時だった。


 「あーあー、聞こえているかパシリ。私だ」

 突如、頭の中に美月の声が聞こえる。唐突なのはいつものことだ。おぶられている日和が「お姉さま!」と叫んだところを見ると日和にも聞こえているらしい。


 「どうしたんですか美月さん。今は忙しいんですけれど」

 正直、話すことすら辛いほど、今の俺は一般人に近い身体能力しかなかった。それだけ美月の力の恩恵を受けていないということだ。一体どうして?


 「重要なことだ。いいから聞け。いいか、現在お前には神の力の使用制限が掛けられている」

 神の力の使用制限?初めて聞く言葉だ。なんなんだ。


 「つまり、お前は神の力の使用が許されている容量を超えてしまったんだ。そのせいで私の力を100パーセントの割合で使うことが出来ない。せいぜい10パーセントと言ったところか」

 美月の説明を聞き、俺はこれとよく似た現象を思い浮かべる。スマホのデータ使用量制限である。決められた使用量を超えた途端、制限がかかり、通信速度が一気に遅くなる月末の敵。解除したければ金を払えという悪魔の契約である。


 「通常、身体能力を強化するだけでは滅多に使用制限を超えることはないんだがな。この間の特殊能力、創造を使ったのがまずかったな。アレは人間が使うには大きすぎる力だ。たった1回の使用で軽々と使用限度を超えてしまう程な」

 もっともらしいことを言ってくる美月。俺も女神が言うならばそうなのだろうと信じ始めていた。


 「へ―、そんなものがありましたの。わたくし知りませんでしたわ。流石はお姉さま」

 一緒に美月の言葉を聞いていた日和が感嘆の声を上げる。なんだか雲行きが怪しくなってきた。


 「ゴホン…つまり、お前がこれまで通りに私の力を万全の状態で使うには、その使用制限を解除するしかない」

 咳払いをし、話を続ける。咳払いって大抵都合が悪くなった場合に聞く気がする。


 「つまり?」

 「私の指定した物を献上しろ。もちろん今すぐなんて鬼のようなことは言わない。約束してくれるだけでいい。今はな」

 見計らったようなタイミングでの使用制限。そしてそれを解除するために指定した物の献上。間違いない。使用制限なんて嘘だ。ただ単に欲しい物があるだけだ。


 「…一体何が欲しいんですか?」

 「それは後で言う。さぁどうする。制限がかかったままではもどかしいだろう?イライラするだろう?破壊衝動が起こるほどに」

 もうスマホの話である。この女神、スマホを持っているのか?


 「んーどうしようかな?」

 「何!?そのままでいいのか?」

 正直言って俺としてはBSB とマジックモンスターハントを手に入れたいわけではない。何を献上するかわからないリスクを負ってまで無理をする必要はない。のだが


 「駄目ですわ。絶対に泥棒を捕まえるんですの!だがら使用制限を解除するですの!」

 「えー、解除しなきゃ駄目ですか?」



 頑なまでに自分の意思を曲げない日和。そこまでしてあのゲームがやりたいのか?


 「もう、仲間外れは嫌なんですの…」

 日和がボソッと、耳を傾けなければ聞こえないほどの声でつぶやく。仲間外れ?いったい何のことだ…その時。


 「うわっ何だ!?」

 泥棒を追って大通りを走っている俺の脳裏に走馬灯のようにとある光景が鮮明に映し出される。


 そこは青空がどこまでも続き、白い雲が地面として存在する場所。神々の住まう神界。目の前にはまだ幼い顔立ちと体つきの女神が3人。1人の幼い女神がこちらを見て言ってくる。


 「アナタは仲間に入れてあげなーい。だってお人形を持っていないんですもん」

 そう言う幼い女神の手には女の子の形をした人形が握られている。それは他の2人も同じだった。2人目の幼い女神が続けて言う。


 「何でお人形を持っていないの?アナタのおウチは良家なのに?」

 そんなことを言われても分からない。そんな悲しい感情が俺に流れ込む。3人目の女神が言う。


 「ほら早く。あっちに行って遊びましょう」

 そう言い、3人の幼い女神は向こうに行ってお人形遊びを始めてしまう。その場にはただ1人、手に何も持っていない自分1人だけ。白い雲の地面に雨が降る…


 「全く、自分の感情を垂れ流しにしてしまうとは、どこまで未熟な女神なんだ?日和」

 幻想的な空間と悲しい光景から美月の声が聞こえ、再び大通りに戻ってくる。躓きそうになるのを必死にこらえ、何とか追跡を続ける。


 「イヤですわ。わたくしったら…今のは忘れてください!」

 そう言う日和の声は少し弱々しかった気がした。多分俺の気のせいだろう。しかし…


 「いいですよ美月さん。制限を解除してください」

 「ほう、一体どんな風の吹き回しだ?」

 美月が意地の悪い声で聞いてくる。本当に悪い女神だ。先ほどの光景を一緒に見たはずなのに。


 「別に。ただ妹が欲しかったなぁっていうだけですよ」

 「はっ、シスコンめ。いいだろう、思いっきり暴れてこい。献上の話、忘れるなよ」

 美月の力の使用制限が解除されたのだろうか、力が戻ってくる。いきなり戻ったので危うくすれ違ったサラリーマンの肩をパーンとしそうになるが、寸前のところで避ける。


 「あっぶねー、美月さん、戻すときは言ってくださいよ!もう少しで見るのもおぞましい光景を作り出すところでしたよ!」

 抗議の声を上げるが返事がない。全く、自由気ままな女神さまだ。


 パーン


 突如、耳に破裂音が聞こえる。違う。俺は肩パーンなどしていない。


 「誰が妹ですの?力が戻ったのならさっさと泥棒を追うですの」

 その音は背中にいる日和が俺の頭をはたく音だった。妹がいるっていうのはこんな感じなのかな。西白の気持ちが今ならわかるよ…面倒くさい。


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