わらしべ長者編 ピンクデラマンデラ 職業 〇〇
ママチャリ太郎から汗でベッタベタなママチャリを手に入れた赤矢。呪いの装備を携え再び物々交換へと戻っていくと
「まずいまずいこのままじゃ遅刻してまう。でももう足が。走られへん。どこ行ったんや」
うさん臭いカンサイ弁を使う男性が現れた。そのカンサイ弁男はどうやら人探しをしているらしい。
「いた、あそこや!あの地味な男がワイの相方や」
そう言ってカンサイ弁男が指をさす。その先を目で追うとそこには特大のアフロヘア―で首にピンク色のシャンプーハットを付け、ピンクの半袖、ピンクのスカートを穿いた男性がいた。
「待て、ピンクデラマンデラ!」
汗でベッタベタなママチャリにカンサイ弁男を乗せ、全身ピンクの変態を追い始める赤矢。果たしてこの変態からBSBにたどり着けるのだろうか...
「まずいまずいこのままじゃ遅刻してまう。でももう足が。走られへん。どこ行ったんや」
そんな時、俺の目の前で膝に手を置き呼吸を整えるうさん臭いカンサイ弁を使う男性が現れた。
「あの、どうしたんですか」
迷った挙句声を掛けてしまう。
「あぁ、どうしたもこうしたもあらへん。これからお笑い番組のオーディションやってのに相方と来たら腰抜かして逃げよった。ホンマこれからカントーに進出しようって時に怖気づきよって」
そういうカンサイ弁男。偉そうに語っているがここは日本で1番栄え、国の中心地であるトーキョーではない。カントー地方の北部である。コイツこそ怖気づいているのではないか?
「うおぉにーちゃん、とんでもない自転車持っとんなー。汗でベタベタやんか。スベるから近づかんといて―」
俺が持っているママチャリを見て距離を取るカンサイ弁男。だがこちらとしてもお近づきになりたくない。関わると怪我をしそうである。
「と言うかにーちゃんワイは誰や?」
何だ?記憶喪失か。俺はクラスメイトみたいにいい人ではないから名付けないぞ。
「カンサイでは結構有名なんやけどなぁ。ギャグ見たら思い出さへん?ほら、歯が抜けてもうた―」
あぁなんだ。記憶喪失ではなかった。ただカントーでの自分の認知度を確かめているだけだった。だが知るわけない。お前、これからカントーに進出するところだろ。歯が抜けてもうた―ってなんだ。キレイに生えそろっているじゃないか。
「知りません」
正直に答えると人をまるで非常識な人間を見るような目で見てきた。何だかイラついたので通常の100倍の力でツッコミを入れてやろうか。そんなことを考え始めたその時
「いた、あそこや!あの地味な男がワイの相方や」
そう言ってカンサイ弁男が指をさす。その先を目で追うと
「いけない見つかっちゃった」
そこには特大のアフロヘア―で首にピンク色のシャンプーハットを付け、ピンクの半袖、ピンクのスカートを穿いた男性がいた。どこが地味だ。あんなの世界の異物じゃないか。俺が白血球だったら真っ先に排除するわ。
「待て、ピンクデラマンデラ!」
恐らく相方の芸名なのだろう。全身ピンクの変態を追いかけようとするカンサイ弁男。だがピンクデラマンデラの足は速く、人混みに紛れてしまう…いや紛れきれていない。あんな派手な格好だ。見つからないわけない。
「くっ、足が速いな。流石陸上短距離のインターハイ覇者やな」
輝かしい経歴を持つピンクデラマンデラ。なのになぜ道を踏み外した。普通に良い企業に就職できたであろうに、ピンクデラマンデラなんていうブラック企業に就職しやがって。どうしてあなたはピンクデラマンデラなの?
「にーちゃん、悪い、そのベタベタしてて乗るもの全てをスベるマシーンにしそうな呪いの自転車にワイを乗せてくれへんか?」
脳内でピンクデラマンデラで遊び始めていた俺にカンサイ弁男が自転車に乗せて欲しいと言ってきた。いいやむしろ差し上げますよ。
「んー、とは言ってもタダで乗せるわけにはいきませんねー」
こちらも物々交換をして手に入れたブツだ。それが例え呪いの装備であったとしてもタダで乗せるわけにはいかない。
「ホンマ、トーキョー者は他人に冷たいのー。カンサイやったら一緒に捕獲してくれるっちゅーのに」
だからここはトーキョーではない。捕獲って、お前ピンクデラマンデラを何だと思っているんだ。絶滅危惧種は大切にしろよ。
「わかった。お礼はピンクデラマンデラを捕まえた後にする。だから乗せてーな。一生のお願いや」
一生のお願いと言われても恐らくこの男と今後再開することはないと思うのだが。
「分かりましたよ。日和さん、ちょっと出かけてきますから先に家帰ってくださーい。ほら乗って」
10メートル後方にいた日和に帰る様に伝え、カンサイ弁男に乗るように促す。
「なー、にーちゃん。何で荷台の部分に乗っとるんや?」
だってサドルの部分って絶対に汗が染みこんでいるし。俺は絶対に嫌だ。
「待つんや―ピンクデラマンデラ―!もうすぐお笑いのオーディションやっちゅうのに何で逃げるんやー」
現在、カンサイ弁男が漕ぐベチャベチャのママチャリの荷台に乗り、駅前商店街を逃走する珍生物、ピンクデラマンデラを追跡中である。幸い、周囲にいる人々は走ってくる珍生物と追跡するベチャベチャなママチャリに恐れをなし、自ら避けてくれている。
「嫌よー。アタシもうお笑いなんてやりたくない―。他にやりたいことがあるのぉー」
オネエ口調で答えるピンクデラマンデラ。と言うか外見からしてオネエである。
「なんやそのやりたいことってぇ。お笑いよりおもろいことかぁ!」
ベチャベチャとはいえ自転車で追跡しているのに一向に縮まらない距離。単距離の陸上選手はスタミナがないと思っていたが勘違いだったのか?
「言わないわ。あなた絶対に反対するんだから。昔からそう、アタシのやることなすこと全て違う、そうやないって頭ごなしに否定して。そのくせ自分の好きなことは押し付けてきて。お笑いだってそう。アタシは他にやりたいことがあったのに騙してこんなことを...」
ピンクデラマンデラの言葉からは今まで我慢していただろう感情が爆発して出ていた。というか
「あの格好ってアンタが無理やり着せているのか?」
全身ピンクの恰好を地味と言ったりする男だ。あの格好を強制するくらいするだろう。
「ちゃうちゃう。あれはアイツの私服や。地味やろ?」
違った。アレを普段着として着ている変態とアレを地味と言い張る変人のコンビだった。
「にーちゃんまずいで。前見てみぃ」
ピンクデラマンデラが走り抜けた建物から警官が出てきた。自転車を押しているところを見ると交番勤務のお巡りさんだろう。幸いピンクデラマンデラと言う珍生物は発見されずに済んだが、その後ろにはベチャベチャのママチャリを2人乗りしている男が2人。それにこれは他人から譲り受けたものである。このままでは職質を受けたのち、任意同行を求められてしまう。
「どーする。このままじゃマッポに見つかってまう。突っ切るか?」
お巡りさんから職質を受けていたんじゃ確実にピンクデラマンデラを見失ってしまう。かと言って突っ切ったら今後の追跡が困難になる。よって
「アンタは少し漕ぐスピードを落とせ。少し急いでいるくらいでいい」
俺の支持通り自転車のスピードが落ちる。
「それでにーちゃん、2人乗りはど―する気や?」
むしろこっちが問題だ。このままお巡りさんに見つかったら自転車を止められる。
「アンタはこのまま前だけ見ていろ。絶対にキョロキョロするな。バレるから」
そう言い残し、自転車の荷台部分に立つ。お巡りさんとの距離はあと20メートル。すでに自転車の鍵を外し、跨ろうと下を向いていた。
(いまだっ)
両足に美月から授かった力を籠め、ジャンプをする。もちろん荷台の上でだ。その勢いでママチャリを漕ぐカンサイ弁男がふらつくが何とか堪える。そして
「よし、マッポを通過したで。ってあれ、にーちゃんどこ行った?」
キョロキョロするなって言ったのに周囲を見回す。
ドシン
「うおっと」
再びママチャリに衝撃が伝わり、よろける。
「にーちゃんどこ行ってたんや?」
驚愕の声を上げるカンサイ弁男。
「何でもいいだろ。それより前を見てろ。見失うぞ」
荷台から飛んでまた着地しましたなんて言ったらお笑いのネタにされてしまう。
「くそ、見失ったか」
ピンクデラマンデラを追い駅前商店街の裏路地に入り、一本道を抜け、大通りに出るが、すでに姿はなかった。まさかあんな全身ピンクの変態を見失う日が来るとは夢にも思わなかった。あんな変態に出会うとも思わなかった。
「やっぱあんな地味な格好やと人混みに紛れやすいんやろうか。今度からはもっと派手で目立つような恰好をさせた方がええな」
アンタの目は大丈夫か?これ以上どこを派手にするというのだ。ここまで来たら逆に何も着せないくらいしかできないと思うが。
「ちょっと見たー?アフロにシャンプーハット?全身ピンクでスカートを穿いた男!マジウケるんですけどぉ」
裏路地から抜け出したその時、目の前を駅方面へと通り過ぎていった2人組の少女が笑いながら変態について話していた。
「どうやらあっちに向かったようだな」
俺たちは駅と逆方向へと自転車を走らせた。
「何あのチャリ。ベッタベタしてそうでマジウケるんですけど」
どこかの誰かのチャリが笑われている。俺たちではないことを願う。
行く先々では通りゆく人たちが全身ピンクのアフロについて話し合っていた。それを頼りに進むと、とある開けた広場に出てきた。そこでは
「5番キレてるよ!」
「3番でかい!」
「ナイスポーズ!」
野外ボディービル大会が開かれていた。ステージの上では6人の男性が黒のブーメランパンツ一丁で、鍛え上げた自慢の肉体を美しく見せるため様々なポーズを取る。その中に
「いいぞー飛び込みのアフロ―、仕上がってる!」
なぜかステージの1番右でポージングをしているピンクデラマンデラ。幸い服は着たままだ。それでも服の上からでも分かるほどピンクデラマンデラの筋肉量はすごい。ナイスバルク!
「やだ、こんなところまで追ってきたの?」
ポージングを決めて気持ちよさそうな顔をしていたピンクデラマンデラと目が合ってしまった。一生のトラウマである。
「待つんや。そのポーズめっちゃおもろいでー!ネタに入れようや!」
ステージから降り、再び逃走を図ろうとするピンクデラマンデラに対し、お笑い芸人として賛辞を贈るカンサイ弁男。だが
「おいクソガキ。あの漢たちは笑わせるために自分を苛め抜いてるんじゃねぇ…自分の限界を超えるためにやってんだ。それを茶化すようならお前の体で解らせてやろうか?」
カンサイ弁男の言葉を冷やかしと受け取ったのか、最後尾でひときわ大きな声を出していた坊主頭の大男がこちらへと向かってきた。
「ちゃう。違うでおっちゃん。俺はアイツのお笑いの相方で…」
必死の形相で弁明を図るカンサイ弁男。だが
「嘘つくんじゃねぇ!あんなナイスバルクな漢がお前みたいな奴とトレーニングパートナーだと?だったらなぜお前はそんなにヒョロヒョロのガリガリなんだ!」
どこをどう受け取ったのかお笑いが筋トレ、相方がパートナーと変わってしまった。犬猫バイリンガル並みの誤訳である。
「へっ?何ゆーてんねんおっちゃん。誰もそないなことゆーてへん」
必死の弁明虚しくシャツの襟首を掴まれ自転車から降ろされる。
「うるせぇ、痛い目見ねぇと解らねぇみたいだなぁ」
坊主頭の男が右手を握りしめ、腕を振り上げる。そしてカンサイ弁男の左頬目掛けて一気に振り下ろす。
「ひっ」
目を瞑り歯を食いしばる。恐怖で動けないようだ。仕方がない。
ガシッ
「!?なんだにーちゃん邪魔すんな。俺はコイツに一発入れなきゃ気が済まねーんだ。邪魔するならにーちゃんもただじゃ済まねぇ…アレ?」
現在、俺は自転車の荷台を降り、カンサイ弁男に殴りかかろうとしているボウズ頭の男の右腕を握っていた。片腕で。
「なんでだっ?にーちゃんのその細腕のどこにそんなパワーが!?」
驚きの声で俺の顔を見てくる坊主頭の男。それもそのはず、俺は神の力を使い、腕力を100倍にまで上げている。肉体派ハリウッド俳優ならいざ知らずそこら辺の坊主頭に負けるわけがない。
「すげーぞあのにーちゃん…」
「どうやって鍛えたらあんなことになるんだ?」
「ナイスバルク!」
騒動に気が付いたのか観客ならずステージにてポージングをしていたボディービルダーまでもがこちらを見ている。その間にピンクデラマンデラは会場を後にしようとしていた。
「まずい。おじさんすみませんでした。コイツアホで。許してやってください」
坊主頭の男の腕を離し、とりあえず謝る。
「あぁ、お前の秘められた神秘のバルクに免じて許してやる」
さっきからこの人たち何を言っているんだろう。半分以上は俺の辞書には載っていない言葉だった。
「それじゃ失礼します」
恐怖のあまり気絶しているカンサイ弁男を片腕で持ち上げたまま自転車に乗り、そのままピンクデラマンデラを追う。
「これからは細マッチョの時代なのか?」




