5時限目 学級崩壊 のちの平和〇〇
5時限目 世界史
本日最後の授業、世界史。教師は吉田静雄。今日も声が小さく存在感がない。だが教室に入ってくるのを気づかれないほどではない。だが今日に限っては誰も彼が教室に入ってきたことに気付かない。
「今日こそ妹ちゃんの名前を決めましょう」
学級崩壊である。
5時限目 世界史
本日最後の授業、世界史。教師は吉田静雄。今日も声が小さく存在感がない。だが教室に入ってくるのを気づかれないほどではない。だが今日に限っては誰も彼が教室に入ってきたことに気付かない。なぜなら
「今日こそ妹ちゃんの名前を決めましょう」
昨日に引き続きクラス委員の女子、足立が教壇に立って話を進める。
「はい、鈴木が良いと思います」
「佐藤が良いです」
「石川です」
「スターです」
こちらも昨日と変わらない。どんだけ意思が固いんだ。
これじゃ今日も名前は決まらなそうである。ふと隣の赤髪ツインテの様子をうかがってみる。
「何を読んでいるんですの?」
今日も疲れて寝ていると思いきや、席を立って教室左前の席に座る女子生徒に話しかけていた。相手は松岡だ。
「えっあの、誰?」
いきなり話しかけられた松岡が困惑している。どうやら5時限目の現在まで赤髪ツインテがいることに気付かなかったらしい。
「わたくしは、アレの親戚ですの」
そう言って俺を指差してくる赤髪ツインテ。
「立花君の?じゃぁこれに興味を持ったのも不思議じゃないね。読んでみる?」
松岡は俺と初めてブラッディフェスティバルの話をした時のような顔をしている。これは駄目だ。もう逃れられない。
「神に布教をする気ですの人間。望むところですわ」
挑戦を受け取ってしまった。お終いである。
赤髪ツインテは最初から自分の呼び名に興味はない。だが本人の意思とは関係なく、議論はヒートアップしていく。
「やはりここは立花という苗字から考え直す必要がありそうだ。つまり日本で1番オーソドックスな苗字、鈴木で決まりだ」
「それを言うなら佐藤だって」
「田中だって多いぞ」
「斎藤だって」
今気が付いたがこのクラスの男子、日本で多い苗字トップ30くらいには入っていそうな苗字ばかりである。なんか作為的なものを感じる。
「いいだろう。こうなったら誰の苗字が1番偉いか決めようじゃねーか」
そう言いだす鈴木。それに賛同する俺と西白以外の男子。女子は女子で勝手に赤髪ツインテの名前を考えている。
40分後
「いい拳じゃねーか」
「お前もな」
「だがどんなにきつい1発をくらったってこれだけは譲れない」
所々でバトルを繰り広げる男子。拳とか言っているけれどもちろんコイツ等は殴り合ってはいない。勝手に誇張しないでもらいたい。
「第2ラウンドと行こうかぁ!」
だから殴り合っていないよね?口先ばっかり。混沌とした議論が続こうとしていた。その時
「女神だん。女神が舞い降りたん」
1人の男子生徒、木下光太郎が教室の窓側、左隅を見てつぶやいた。木下の声は小さかった。教室では各々の譲れない戦いが繰り広げられていた。しかし木下のつぶやきが聞こえたのだろうか。一斉に言い争いをやめ、視線を木下に、次に木下の視線の行く先を追いかけた。そこには
「女神が2人...」
「癒される」
「あぁ、許してください」
生徒たちの視線の先にはお互いの体に寄りかかり合いながらうたた寝をする松岡と赤髪ツインテの姿が。そこに日の光が当たり、まるで女神の後光のようになっていた。
「なんて醜い争いだったんだ」
「平和だ。平和が訪れた」
「まさに平和日和だなん」
平和日和…なかなかいい響きだ。それにピンときた。
「皆、俺の親戚の名前なんだけれどさ、日に和むで日和って言うのはどうかな?」
俺の提案に対し、無反応なクラスメイト。あれ?いいと思ったんだけれどな
「おい立花」
今まで無言を貫いてきた西白が突然声を掛けてきた。
「何だ西白?」
西白の顔を見る。何だか困惑しているように見える。
「こいつら全員寝ているぞ」
「は?」
ぐーぐー
すーすー
ぐわっぐわっ
確かに誰も彼もが寝息を立てて寝ている。1人だけ無呼吸症候群みたいな寝息を立てているのが気になるが。
「全く平和なクラスだよ」
とりあえずそう言って締めくくる。ちなみにクラスの皆は気が付いていないようだったが、赤髪ツインテ改め日和は寝ているのではない。ブラフェスのあまりの邪気に当てられ気絶しているのだ。誰だってあのパクリ量では気が滅入る。例え知らない元ネタだとしても当てられてしまうのがこの漫画の怖いところである。
この話し合いの末、赤髪ツインテのクラスでの呼び名は日和とはならず、結局妹ちゃんで収まったのであった。
「日和か。いい名前ではないか。太陽は月と決して一緒にはならない」
平和なクラスをはるか高みから見下ろす美月が満足そうにつぶやく。




