5時限目 ロングホームルーム 〇〇〇〇ネームに込めた思い
5時限目はロングホームルーム。話し合いたい議題を自分たちで出して話し合う。もちろん今回の議題は妹ちゃんこと赤髪ツインテの名付けだ。そこで各々がつけたい名前を出し合っていき...
5時限目 ロングホームルーム
ロングホームルーム。毎週火曜日の5時限目にはロングホームルームの時間があり、クラスで議題をだし、それについて話し合う。もちろん今回の議題は
「妹ちゃんの名前を決めたいと思います」
クラス委員の女子、足立が議題を出した。これに反対する生徒はいなかった。
「では案がある人―」
「はい」
1人の男子生徒が手を挙げた。
「鈴のような樹木で鈴樹が良いと思う」
鈴樹?意味合いは分からないが字面はなかなかきれいな感じがする。まぁ最近のキラキラネームのようではあるが。
クラス委員の伊藤が黒板に「鈴樹」と書き込む。
「はい」
板書が終わり、続いて違う男子生徒が手を挙げる。
「砂の塔で砂塔が良い」
砂塔?聞いたことがない響きだ。まぁ本人がこう名付けたいと思ったなら良いが。
「はい」
続けざまに更なる男子生徒が手を挙げる。
「カタカナでスターちゃんが良い」
スター?これはないだろ。キラキラネームっていったって本当に輝いてどうする。
黒板に書かれている案は3つ。鈴樹、砂塔、スターだ。正直言ってどれも嫌だ。特に3番目、スターとかどこのアイドルだ。
「ん?」
ふと違和感を覚える。その正体を見つけるためもう1度名前の提案者を思い出す。
鈴樹→鈴木
砂塔→佐藤
スター→星
こいつらこっそり自分の苗字を入れてやがる。俺は嫌だぞ。赤髪ツインテの苗字は立花ってことになっているんだ。なんだんだよ立花スターって。この事実に気付いている人間は果たして何人いるのだろうか。そのとき
「はいん」
特徴的な語尾と共に手を挙げ、席を立つ木下。
「木下という苗字が良いと思いますん」
木下の暴挙に教室が騒めきだす。おい木下。俺たちが今考えているのは名前だぞ。苗字じゃない。しかも自分の苗字って。もはや狂気を感じる。
「はい、石川が良いと思います」
「いや、ここは北村で」
「工藤が1番」
木下の暴挙を皮切りに各々の欲望を爆発させる。お前らそんなに自分の苗字を付けたいのか。
そんな謙遜の中、騒ぎの元凶となっている赤髪ツインテはというと
「すーすー...んにゃ」
寝ていた。寝ているのを隠そうと頬杖をついてとか俯いてとか、そんな小細工はしていない。見事なまでに机に突っ伏していた。
結局名前は決まらずにロングホームルームが終わった。