表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/35

女子はいつでもどこでも〇〇で行動する生き物です

10分後、金組のお姫様たち(全員女子)が逃げるのを待ってから赤組の泥棒ととっつぁん(全員男子)のお姫様捜索が始まった。俺の役割は泥棒、相方のとっつぁんは木下である。


 「あんまりいい気分じゃないな」

 俺がお姫様を捜索しているその背後、20メートルくらい後ろを木下がつけてきている。まるでストーカー被害を受けているようだ。ストーカーダメゼッタイ。

 とにかくやることは1つ。金組の女子が頭に巻いているハチマキを奪い、木下が引導を渡すまで、ハチマキを奪い返されないように逃げるだけだ。

 そう考え、女子が隠れていそうな校舎に入ろうと生徒の下駄箱がある正面入り口に入ろうとしたその時


 「っぐがー」ドンガラガッシャーン

 下駄箱の奥の通路を左から右へ1人の男子生徒が横切っていった。正確には吹き飛ばされるような形、即ち九の字で。


 「どうしたっ」

 俺は状況を確認しようと吹き飛ばされた男子生徒の元へと駆け寄る。男子生徒は廊下に置かれていた清掃用具入れにもたれ掛かるように座っていた。その手にはハチマキが握られていた。


 「…これを、俺はもう駄目だ。相方がやられた。捕まえる手段がない。お前も気を付けろ。奴らは自分たちが逃げる側だと思っちゃいなぃ」

 この言葉を最後に男子生徒は息を引き取った(死んではいない)。俺は男子生徒が持っていたハチマキをとりあえず持つことにした。これで俺がこのハチマキを奪ったことになり、後は木下がこのハチマキの持ち主に引導を言い渡すだけとなった。それが間違いだった。


 「赤矢、危ないん!」

 俺から20メートルほど離れた廊下の反対側から木下が叫ぶ。俺は咄嗟に木下の声がした真後ろを振り返る。するとそこには


 「っく」

 俺の視野に映ったのは俺目掛けて飛んでくるとっつぁんの背中。恐らく清掃用具にもたれ掛かっている男子とペアのとっつぁんだろう。これでこのペアは失格となった。俺は飛んできたとっつぁんを受け止め、床に下ろす。その直後、俺の顔面目掛けてグーパンチを食らわそうとしているお姫様の姿が目の前にあった。俺は咄嗟に首を右に傾け直撃を避ける。美月の力を受けている女子の拳はそのまま俺の顔横を突き進み、清掃用具入れに拳をめり込ませた。その女子の頭にはハチマキがない。どうやらこの男子を殺ったのはこの女子のようだ。


 「嘘だろっ」

 この競技は赤組の男子が金組の女子を追いかけ、ハチマキを奪うだけだ。つまり追いかけるのは男子、追いかけられるのは女子だった。だが実際には追いかけられるはずの女子が男子を狩り始めている。自らのハチマキをワザと渡し、それを奪い返すことで相手を退場させようと。


 俺はとりあえず体制を立て直そうと女子から距離を取ろうとする。だが足がよろけて転んでしまった。まさに絶体絶命。神の力を受けた拳でボコボコにされる未来が脳裏に浮かぶ。

 だがいつまでたっても俺は生きている。取りあえずその場から距離をとる。そして女子がいる方に目を向ける。そこには


 「くそ、取れない」

 俺に拳を食らわせようとした女子の拳が清掃用具入れに突っかかっていて取れない。いったいどんな力の入れ方をしたらそんなことになるんだ。まぁ神の力を借りた結果だけれども。だがチャンスだ。


 「木下っ」

 俺は木下を呼ぶと同時にその場を離れていく。しばらくしてその女子の近くに木下がたどり着き、タッチする。そして引導を渡す。



 俺は先ほどの女子生徒の襲撃をやり過ごし、教室棟の2階へと上がっていた。そこには信じられない光景が広がっていた。


 「うぅ」

「いってぇ」

 「容赦がねぇ」


 そこには30名15組の男子生徒がいた。廊下に倒れこんでいる者、壁にもたれ掛かっている者。そこにはその2者しかいなかった。誰も彼もが体のどこかに傷を負っている。恐らくもう手遅れ。競技の舞台から降ろされた選手たちだ。


 「誰にやられたんだ」

 俺は同じクラスの男子生徒に状況を確認するために問いかけた。


 「あぁ、立花。悪いな俺たちは退場だ。気を付けろ。奴らは個で行動していない。集団で行動しているんだ」

 集団?常に何人かで行動しているという事か。

 「そうか、ならこちらも残っている者で小隊を作るか」

 そうと決まれば生き残りを探さなければ。そう思って動き出そうとしたとき。


 「違う立花。奴らは50人で行動している。全員でだ」

 俺は絶句する。普通ケイドロなどの遊びは1人で行動するものだ。なぜなら大勢で行動すればするほど鬼に見つかる可能性が上がるからだ。しかし今回はそうではなかった。お姫様はあろうことか赤組の全滅を狙ってきたのだ。制限時間を逃げ続け、ハチマキさえ奪われなければ、又は奪われても奪い返せば勝てるというのに。敵はわざとハチマキを盗らせ、盗られたところを集団で襲い、競技から退場させているのだ。


 「じゃぁさっきの女子生徒は?」

 つい先ほど、俺は1階、下駄箱前の廊下にて1対1で戦っている男女を見た。それは一体どういうことだ。


 「あぁ俺たちの中の1人がこの階で金組の集団に会った時に真っ先に逃げていった。それで追いかけていったんだろう」

 「そうか、ありがとう。安らかに眠れ」

 「死んでねーし」

 まずい。どうやら先ほどの女子生徒だけが男子を狩っているわけではない。金組全員の意向のようだ。


 俺は単独では危険と知りつつも生き残っている白組の男子生徒を見つけられず(後ろには木下がいるが)1人で行動を続ける。


 「ここもか」

 3階に上がった俺の目に入ってきたのは2階と全く同じ光景だった。退場させられた選手は24名、12組の男子生徒だった。これで27組が退場させられたことになる。赤組は残り23組、それに対し金組は俺が知る限り49人が残っている。人数的には赤組、金組はほぼ同数だが、とっつぁんはハチマキを盗った後にしか動けない。実質倍近い戦力差が生まれていた。そう考えていたその時


 ガガッザー


 突如校内放送のマイクが入り、スピーカーから雑音が聞こえる。戦況報告か何かか。そう思ったが違った。


 「赤組男子生徒に告げます。私たち金組はすでに98名49組の男子生徒の制圧を完了しました。つまり残りはこの放送を聞いているであろうあなた方1組だけだということになります。勝負は決まりました。金組は体育館にいます。直ちに投降してきなさい」

 そう言い残し、放送が終わった。


 「嘘だろ。だってまだ30分しかたっていないのに」

 いくらなんでも早すぎる。それに金組の女子にとって他人に暴力を振るうことは非日常な筈だ。だがしかし、最初に遭遇した女子には暴力を振るうことに対しての負い目や戸惑いの色が全く見えなかった。廊下にいた男子たちを見てもそれは明らかだ。


 「気づきましたか人間」

 突如、俺の頭の中に声が響き渡る。

「その声、女神さまですか」

「はい、どうやらお姉さまが仕掛けてきたみたいですね」

「美月さんが?」

「美月?お姉さまのことですの?よくお姉さまにそのようなありきたりな名前を付けられたものですね。今すぐ謝りなさい」

話が脱線する。


「いやいや、今はどうやって勝つかが先ですよ。それに仕掛けてきたって?」

 「金組の女子、どうやら感情操作を受けているみたいですわね」

 感情操作?すごく危ないひびきなんだけれども。

 「感情操作はその名の通り対象の感情を増幅したり減少させたりできるんですの。もちろん誰にでもできることではなく、さすがはお姉さまなんでもできるなんて素敵ですますますわたくしはお姉さまの…」

 また話が脱線する。

 

「えっと女神さま、戻ってきてください」

 「つまり、お姉さまは女子の何らかの感情を刺激して、戦うことへの抵抗を少なくしているんですの」

 「感情ってどんな?」

 「そうですわね。仲間の女子同士戦わないところを見ると、男への憎悪と言ったところでしょうね」

 女子って憎悪であそこまでできちゃうんだ。さようなら俺が思い描く女子像。

 「どうしましょう女神さま。金組はまだ49人も残っていて赤組は俺と木下の1組のみ。このままじゃ正面から戦っても勝てないし、かと言って何もしなければ時間切れで負け」

 そうなったら俺は裏切った罰としてきつい調教、赤髪ツインテは大好きなお姉さまと会えなくなる。


 「わたくしに秘策がありますの」

 ギリギリな状況であるのに女神さんの声には余裕が見て取れた。

 「秘策ですか?」 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ