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それぞれの戦争4 そこにサ〇〇イとガ〇〇ンはいない

立花赤矢たちばなあかやの戦争


 部長のアソコをモロダシさせてしまった俺はひたすら部長に土下座をして謝っていた。


 「すいませんでした部長!部長の部長をモロダシさせてしまって」

 「貴様、それで謝っているつもりなのか、やはりスパイだったか」

 部長の隣に立ち、オレを見下しながら罵る高野志たかのし先輩。


 「まぁまぁ、立花くんも悪気があったわけじゃないし、僕は怒ってないよぉ」

 さすが部長。器が大きい。(アソコは…ノーコメントである)

 

「それよりも立花くん、次の競技、何やるか知ってる?」

「いえ、知りません」 

そうなのだ。普通、体育祭の競技は事前に知らされるものである。もちろん今年の体育祭も例外ではなく、最終種目は組別対抗リレーだった。30分前までは。


 「全校生徒の皆さんにお知らせがあります」


 白熱の騎馬戦が終わり、土下座を開始する少し前、校長の声でマイク放送が入った。

 「今年の最終種目は組別対抗リレーを中止し、別の種目を取り入れます。種目の内容、詳細は追って放送で連絡しますのでしばらく待機していてください」

 

その放送が入ってから30分。少し心配になってきた。もしや女神2人が代理戦争に業を煮やして直接戦いだしたのか。ついに戦争ラグナロクが現実のものに。怖くなり、女神たちを探そうとしたその時


 「みなさん、お待たせしました。最終種目について説明します」


 良かった。戦争ラグナロクは始まっていなかった。安心した。だがおかしい。マイクから聞こえる声の主は校長のものではない。女性のものだ。どこかで聞いたことがあるような。そう思い、マイクの声の主がいるであろう朝礼台の方へ顔を向ける。そこには


 「3年A組所属、生徒会長の関根蛍せきねほたるです」


 なんと朝礼台に立っていたのは漫研部部員である女子生徒で髪は腰まで伸びている黒髪。前髪を白のカチューシャで上げているお姉さん系女子。関根蛍であった。

 

「そう言えば立花くんは知らなかったっけ?」

 俺の驚く顔を見た部長が説明をしてくれた。

 

「関根さんはね、月・水・金は漫研部の活動している傍ら、他の曜日は生徒会長としても活動しているんだぁ。関根さん、アニメや漫画が好きでねぇ。漫研部がひたすら漫画を読んで、議論しているだけでも部活として認められているのも彼女のおかげなんだよぉ…ぐじゅじゅふ」

 あれ、なんか今部長の黒い部分が見えたような?いやいや、美月みつきならいざ知らず、この温和な部長に限ってそんなことはない。


 「急な競技変更申し訳ありません。校長先生からの提案で今年の体育祭は例年とは違うものにしたいとのことで最終競技のみ種目の変更とさせていただきます」

 校長は現在赤髪あかがみツインテに操られている。となると競技変更は赤髪ツインテが指示した事になるのだが。とてつもなく不安だ。


 「校長先生は私に新競技を考えるようにおっしゃいました」

 えっ、赤髪ツインテのやつ、この短時間に新競技を考えろって?悪魔か!

 

「そしてつい先ほど、新競技の考案が終わり、準備が整いました」

 嘘、こんな短時間で?関根先輩あなたは神か!

 

「発表します。体育祭最終種目はズバリ、ケイドロです」

 生徒会長の発言を聞いた生徒たちが騒めきだす。それはそうだ。ケイドロとは恐らくあのケイドロのことを言っているのだろう。まず警察と泥棒の2チームに分かれる。警察は泥棒をタッチすることで捕まえられる。泥棒は牢屋に入れられるが仲間の泥棒がタッチすることで泥棒は脱獄できる。ざっと説明すればこんなところか。しかしケイドロが体育祭の最終種目とはどういう事だ。


「もちろんただのケイドロではありません。私がルールを改変したケイドロです」

 いやな予感がする。女神絡みだからだろうか。


 「ズバリ、キーワードは泥棒どろぼう・お姫様おひめさま・とっつぁんです」

 生徒の間で騒めきが一層強くなる。それはそうだ。泥棒・お姫様はまだいい。だがしかし、とっつぁんって何だ。

 その後、関根先輩からケイドロ改め「とっつぁんの名言」のルールがあった。

 

 ・制限時間は1時間

・赤組は泥棒ととっつぁん、金組はお姫様になりきって競技を行うこと

 ・競技範囲は学校の敷地内ならどこでも可。建物に入っても良い

・参加人数は泥棒50人、とっつぁん50人、お姫様50人

・泥棒ととっつぁんは2人1組で行動すること

 ・泥棒の役割はお姫様の持つ指輪(ハチマキ)を盗むこと

 ・お姫様の役割は指輪(ハチマキ)を盗まれないこと

 ・とっつぁんの役割は指輪(ハチマキ)を盗まれたお姫様に引導を渡すこと

・とっつぁんはペアの泥棒がお姫様の指輪(ハチマキ)を盗むまでペアの泥棒の半径20メートル以内に近づかないこと。もしも盗む前に近づいてしまったらそのペアは失格となる

・泥棒が指輪(ハチマキ)を盗んだ場合、必ずそのペアであるとっつぁんが引導を渡さなければならない。もし違うペアのとっつぁんが引導を渡した場合、無効とする

 ・赤組は泥棒がお姫様から指輪(ハチマキ)を盗んだ後、とっつぁんがお姫様をタッチし、引導を渡すことでお姫様を競技から退場させることが出来る

 ・金組はお姫様が泥棒に盗まれた指輪(ハチマキ)をとっつぁんに引導を渡される前に、奪い返せたら、泥棒ととっつぁんを競技から退場させることが出来る

 ・勝敗は相手チームの全滅か、制限時間終了時に残っている人数(赤組はペア数)で決める


 関根先輩から様々なルールの説明がされる。はっきり言ってあまり頭の中に入ってこない。


 「そして最後に」

 関根先輩は一息置き、決定的な言葉を紡ぐ

 「お姫様を競技から退場させるためのとっつぁんの名言、それは『――――――――』です。


 決定的なひと言だった。そんな男前なことを言うとっつぁんはこの世に1人しかいない。世界を駆けまわり、たった1人の泥棒を追いかけ続ける、あのとっつぁんである。となると泥棒とはあの3世の泥棒で、お姫様はあのお姫様になるのだが。いったい何で?好きなの?

 俺の疑問を解消してくれる言葉はなく、競技開始までの時間が告げられる。


 「説明は以上です。何か質問は?なければ各組参加者を決めてください。10分後に競技を開始します。それと」

関根さんは言葉を止め、ある方向を指さした。関根さんの前方、俺達は朝礼台を向いているので後方になる。

 

「赤組のとっつぁんとなった生徒はあの服と帽子を着用して競技に参加してください」

 そこには茶色の帽子と茶色のコートがあった。もう完全に寄せに行っている。


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