そのさん
「お前たち仕事はどうした?」
声の主はきれいな女の人だった。
肩のあたりで切りそろえられた銀色の髪と透き通ったグリーンの瞳が印象的だ。
ただ、今はその瞳は怒りの色に染められている。
「お前たちは今の時間ここを離れられないはずだ。どこへ行こうとしているんだ?」
「はっ!この者が何かを隠して門を通ろうとしたため止めておりましたっ!」
「ほう?そうなのか?」
隊長と呼ばれた人はボクに質問してくる。
門番二人もそうだったがこの隊長もNPCだが驚くほど自然だ。
特に隊長さんなどは威厳すら感じる。
「門番の方たちには説明させていただきましたが、町の外で魔獣を倒した際に服が破けましてそれを隠しているのですよ。なかなか分かっていただけなくて」
さっきはボクを裏切ったゼンジが今度は門番を裏切る。
門番たちは あっ!この野郎!共犯のくせに!という顔をしている。
「服が?」
「はい、獣化をしたら」
「獣化?ああ獣人の方ですね」
「は、はい」
「ひょっとして初めて獣化を?」
「ええ、そうなんです」
「ちょっと失礼」
ぴらりマントをめくられる。ほかの人からは見えないようにだ。
「ひわっ!」
「ああ・・・・これは隠しますよね?」
「す、すいません」
あー、見られちゃった。うう・・・・・・
恥かきついでに獣人でも装備出来る防具か服が手に入るか聞いてみよう。
試しに聞いてみると獣人専門に取り扱っている防具屋があるとの事
行ってみることにする。
さて、紹介された防具屋まで来てみたが店先には野菜が並んでいた。なぜ野菜?
防具屋に来たつもりで八百屋に来ちゃった?
「へいらっしゃい!いかがっすか?!ヘングリン防具屋にようこそ!今日は大根が安いよ!!」
熊の獣人らしい男が出てきて声を掛けてくる
ここは防具屋らしい。そして今日は大根が安いらしい。
店の奥を覗いてみるとちゃんと防具が飾られていた。なにコレ?
「防具屋・・・?八百屋じゃなくて?」
ゼンジが聞く
「うちが防具屋以外の何に見えるってんですかい!?」
八百屋に見えます。
「うちは獣人専門なんですがね肝心のお客がいないんですよ!仕方なく野菜を売ってるんでさ」
「いや、人間用の防具を売れば?」
ゼンジだけではなく誰でもそう思うだろう。
「組合との約束でそれは出来ませんでね。食いあいになっちまうんで」
野菜は店舗ではなく台車で売りに来るのを買うシステムなのでいいらしい。
「獣人のお客さえって・・・・・・獣人だあぁ!!
」気づくの遅っ
「まさかまさかおきゃくさまですか??」
「ですよ」
「うおおおおおぉぉ!!!」
うわっ!抱き着かないで持ち上げないで見えちゃう見えちゃうよ!
「ミンちゃん!!この熊野郎その子を離せ!!それは俺のだ!!」
それは違う
ボグン!!すごい音がしたのでそちらを見ると熊の頭にカボチャが乗っていた。
カボチャはゆっくりと2つに割れて地面に落ちる。
「ジョン、いい加減にしないとせっかくのお客が逃げ出すわ」
熊の向こうに猫科の女の獣人がいた。カボチャで熊を殴ったらしい。
金色に輝く軽くウェーブのかかった髪とやはり金色の瞳の女性だ。
なんていうかかっこいい感じだ
しかし八百屋に見える防具屋からの返事はなかった。
気絶していた。立ったまま。そして僕をつかんだまま。
誰かタスケテ