そのじゅうよん
家に帰ってすぐに自分の部屋に行ってゲームの電源を入れる。
「女の子の自分」を見ておきたい気がしたからだ。
ベッドから起き上がる。
そういえばベッドの上でログアウトを試したんだった。
「自分の」身体を見てみる。手や足は変わっていない 腰周りもだ。
こうしてみるとボク自身の体型はやっぱり女性寄りだったんだな
夏のプールとかも海パンだけだったんだよなー
周りが何か複雑な表情だったのはそのせいだったのかな?
しかしこの体型 ゼンジにそそのかされたせいで胸が大きい。
自分が女の子だとわかった後だと見栄を張って大きくしたみたいでちょっと恥ずかしい。
今の所変更できる仕様にはなっていないので我慢する。
もし更新がきて変更できるようになったらゼンジがなんと言おうと変えさせてもらう。
それにしてもこの服装もなんか恥ずかしい。
これまでは自分とは違うゲームのキャラという感覚だったんだけど今は自分の身体になってるような気がするから ちょっとねー
ぱんつもはいてないし
尻尾を揺らしながら部屋を出て階段を下りる。受付の前を通るとき1泊のはずが2泊しているので何か言われるかと思ったが何も無かった。
ちょっとどきどきしてたのに。
町に出てブラブラしてみる。そういえば町の中も防具屋と広場、宿屋くらいしか行ってない。
冒険者ギルドにすら行ってない。自動的に加入したことになっているし。
ギルドは複数加入ができる。
冒険者ギルド+鍛冶ギルドとか +魔法ギルドとか
冒険者以外のギルドに関してはプレイヤーの技能が無限に近い枝分かれをする事もあってかゲームをスタートしてから自由に選択できるようになっている。
格闘技ギルドとかあったら入ってみたいな。
とりあえず冒険者ギルドに向かう。
うわ
全身に視線を感じる。尻尾がぶわっとなりそうだ。
視線の元はプレイヤーだろうか?
まあ、NPCがこんな粘っこい視線を向けてこれたらちょっとすごいが。
獣人珍しいしな~ ということはこの専用装備も珍しいもんな~
どこを見られているって案外わかるなあ。
って、「視線」があるゲームって何気にすごいな。
対プレイヤー戦とかで使うんだろうか?
町中で「隠密技能」を使って歩くわけにもいかないので我慢する。
スリ等と間違えられてしまうから。
隠密レベル低いし
それらしい建物を見つけて近づく宝箱に剣と杖?の絵が組み合わされた看板がかかっている。
冒険者ギルドと書かれたドアを開いて中に入る。
うん?
ざわついていた室内が静かになる。
室内はゲームなどで良くある冒険者ギルドの形をしている。
手前側が酒場のようになっていて奥がカウンターだ。
異世界物にあるような「ここはガキの来るところじゃねえぜ」とかそういうのは無い 皆多分プレイヤーだしね。
テーブルについてるいかつい顔のおっさんがこちらをチラチラ見ている。
傷だらけの顔の癖に恥ずかしがっているのか妙に赤い顔をしている
その割りに視線は胸やらむき出しの太もも向いているが
この男の中身はきっと若い。
他の視線も似たような感じだ。
居心地が良くないがしょうがない。
ボクはカウンターに向かって、一人でもできそうな依頼を探してそれを選択する。
弱めの魔物を数匹倒して来るだけのやつだ。
それにしてもここの受付のお姉さんのAIは防具屋などと比べると大分シンプルにできている。簡単な受け答え位しかしない。防具屋の2人は冗談ぐらい言いそうだったのに。 門番や隊長さんもか
まあ、その辺はなにか理由があるんだろう。魔物の生息地に向かう事にする。
「明ちゃん?」
声がかけられる。女の子の声だ ギクッとなる。
そちらを見ると白いローブを着た少女が立っていた。
少女も顔をあまりいじっていないようで見覚えのある顔をしていた。
声にも聞き覚えがあった。そちらも変更されていないようだ。
名前は エリー・ベルウッド ベルウッド? あっ!
クラスメートの鈴木 絵里か!!!




