街とメルヒェン
ユーザー様からのリクエストに応えたおまけです。
これは昨日と明日の狭間の
ある街のお伽噺
そこにはお城がありました
サンドベージュの外壁に
赤煉瓦色の屋根と 連なるアーチの窓
物見塔をリボンで取り巻く円の斜路
お城を行き来する人達は
大人の事情で頭が一杯
お城から飛び出してくる君たちは
お姫様と 彼女を守る小さな騎士
ねぇ 嫌なことは忘れて
今だけ自由でおいでよ
石畳みを駆けて行く
軽やかな桃色のトゥシューズ
膝の周りで揺れる
重ねた白いシフォンのスカート
手に入れた時間を零さないように
大事に そして急いで
お城の鐘が鳴るまでに
不思議な街に遊びましょう
ショウケェスに飾られた
踵の高い華奢な赤い靴
鏤められた光のジュエル
甘やかな香りを立てる焼き菓子
見ているだけでも心が弾むけれど
欲しいと言えば
何でも手に入れられそうな気持ちになれる
特別の極上時間
「大人になったあなたにいつか贈って上げるよ」
繋いだ手の騎士の無邪気な約束の上に
朱鷺色の花弁が柔らかに降り注ぐ
失われる今が長く続くことを祈って
儚いからこそ美しい今を祝福して
昨日にも明日にも紡がれていく
そんな ある街のメルヒェン
2016.3.13




