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雨の博物館
突然の雨に降られて
傘もない君を迎えてくれた
古い屋敷を改造した博物館
ホールに飾られた水槽の
ホルマリン漬けの人魚に
目を見張るのはまだ早いから
キューピッドに
山羊の足の悪魔に一角獣に
ここは幻獣博物館
夢か 幻か
それともタチの悪い冗談か
テーマに沿ってまとめられた
部屋の展示物の剥製に
君は息を飲むばかり
スフィンクスにアヌビス神に
河童に猫又にカラス天狗
魔訶不思議な生き物たちを見る君を
いつの間にか見ていた男に気付くはず
彼はこの館の主であり 蒐集者でもある
この舘の秘密が見たくないかい
手招きする男に導かれて
君は博物館の深部に達する
その扉の向こうは幻獣の園
見てはいけない禁断の園
真っ白な実験室のタイルの上
血まみれの獣の死体が転がっている
嗅がされた薬品の臭いが
君の意識を急速に奪っていく
男の羽織った白衣が
君がこの世で見る最後となる
雨の博物館に迷い込んだ
誰かが消える度に
幻獣博物館の展示物が
また一つ増えていく




