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白サギ旦那
白サギ旦那を知ってるかい?
用水池の取水口の囲み
そこが白サギ旦那のお決まりの場所
白サギ旦那は哲学者だって
もっぱらの評判
ある命題にとり憑かれて
お陰で白サギ旦那は
寝ても覚めても考え中
日がな一日片足立ちで
頭ひねって首をひねる
なーぜ 生き物は食わねばならぬのか
なーぜ 食うものと食われるものがあるのか
なーぜ 生き物は死なねばならぬのか
誉れも高き白サギ旦那に師事しようと
蛙もタガメも小魚も
ザリガニなんかもやって来て
みんなで一緒になって考える
なーぜ 生き物は食わねばならぬのかと
白サギ旦那は頭をひねるついでに
蛙やザリガニ、小魚の首をひねる
ひねってそのままぱくりと飲み込んで
またひとしきり考える
蛙もタガメも小魚も
白サギ旦那の喉をツゥと滑り落ち
腹ん中に入ってもまだ考えている
なーぜ 食うものと食われるものがあるのかと
こんな命題にとり憑かれたのは
今まで食ってきたもの達の所為かも知らん
白サギ旦那は用水池の取水口の囲み
今日もやっぱり考えているそうな
なーぜ 生き物は死なねばならぬのか




