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冬・雪・マジック
空を見上げれば
重く垂れ込めた灰色の雲から一片の雪
遥か宇宙に吸い込まれそうな
深い穴に何処までも落ちるような
雪は舞い散る
メリーゴーランドのように・・・
降り積もる雪は
街をオブラートに閉じ込め
沈黙する真白に
世界は180度転換する
歩道に敷き詰められた脱脂綿の上を
交錯し 乱れていく幾つもの足跡
車のボンネットに吹き溜まった
仄かに空の匂いのするシャボンの泡
淡雪のメレンゲに彩られた
クリスマスツリーの針葉樹の並木
空から降り注ぐ硝子の破片は
まるで砂時計のように
音も立てずに時だけを編む
空は魚眼レンズの中で歪曲し
口唇に触れた六角形の結晶が溶解する
凍った吐息のリズムが
真昼に輝く星の動きにシンクロするように




