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Rainy day
雨の中 傘もささずに歩く
頬を伝う滴 涙のようで
道行く人が振り返る
雨の日は素敵 少しの雨なら傘はいらない
水中に没した街 古代の遺跡が眠る
穏やかな波の間で 銀の鱗を閃かせ
泳ぐ魚になりたい私
時は静かに永遠を刻み
街は深い沈黙を宿す
雨の日は素敵 少しの雨なら傘はいらない
濡れたコンクリート 幽かに海の匂いがする
雨の音だけが遠い波の記憶のように
潮騒の囁きを繰り返す
濡れそぼったブラウス 張り付いた髪の毛
生温い羊水に浸かり 胎児に戻る私
ぼんやりと霞む街並みは
遠い過去と未来を映す万華鏡
幼いあの日の私 お気に入りの赤い傘と長靴で
水溜まりの向こう側から手を振る
雨の日は素敵 少しの雨なら傘はいらない
空を見上げれば灰色の雲は流れ
青い窓が開く 雨が上がれば
ほら 西の空に道標の虹が・・・




