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あくむ
目覚めたのは午前12時
瞼を開けばヴィジョンは散逸して
薄暗い天井に収縮した
Bad Trip
視聴者はチャンネルを変えて
脚本家の悪趣味に舌打ちをする
ボトルに詰まった水で身体を満たせば
洋盃の底に沈んだビー玉を
白い月が冴え冴えと照らしていた
増殖したゴミの山と荒涼とした世界
ひとっこ一人いない無限の静寂
錆びた鉄条網に逆さ吊りになりながら
腐っていくマネキン人形の首
開いた眼窩から流れ出た茶色の液体
ブイヨンゼリーの脳味噌が
捨てられたシンクの隅で震えていた
目覚めたのは午前2時
アングルが突然切り替えられ
思考が断絶する
Bad Trip
デッキの再生ボタンを押せば
フラッシュバックする場面
陳腐な日常とは隔離された世界
シーツの隙間で窒息しそうになって
冷えた床に立ち 街の灯りを見下ろした
扉を開ければそこには覆面の男
黒い衣装から蛇のように狙う銃口と
下腹部に打ち込まれたペイン
反転する視界と死の予感
窓の外に転がる兵士たちのパーツ
積み木崩しのように歪んだ街
赤く燃える空は沈黙を守っていた
目覚めたのは午前4時・・・




