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記憶の断層
思い出は 夜に見る夢よりも脆く
時々 自分の人生が分からなくなる
不可侵な幻に支配された 不可解な私
唯一理解できるのは
閉じた扉は 待っていても開かれないと言うこと
ノブを回す勇気の持ち合わせもなく
ふと気が付くと
私一人が囚人服のままだった
教室から流れ出て行った友達や
見知らぬ
通り過ぎる人の 顔 顔 顔
忘れていくばかりの記憶と
何の意味も持たない 記号化された言葉の羅列
滞り 澱んだ時の中で
酸素不足の金魚のように
喘ぎながら 息をすることすら忘れて
何を求めるのか・・・
何を求めていたのか
思い出は 掴めば手を離れる逃げ水
過去と現在と未来と言う時間率により
断層と褶曲を繰り返し
継ぎ目さえ失われた
それは既に 私ではないもの




