21/51
たとえばこんな話
夜の繁華街
ネオンの煌めくその隅で
そこだけが暗く静かだった
闇の中から俺を呼び止めた占い師は
俺の目が死を求めていると言った
心臓が停止し
血が流れ出し
やがて腐り落ちていく肉の塊ではなく
自分の存在が消えると言う
死の概念そのものを愛してやまないのだと
存在が消える
なんと甘美な響きだろう
俺はようやく一つの答えを手にしたのだ
俺は意気揚々と占い師の前を離れた
街の雑踏の中に紛れ込んだ俺は
遠く背後で女の悲鳴を耳にする
ポケットに忍ばせたナイフに付着した錆びた赤い血
拍動が停止し
アスファルトに血溜まりが広がる
動かない占い師を遠巻きにして
人々は新しい見世物に酔うだろう
俺は雑踏の中
獲物を探す肉食獣の足取りで歩く
死を求める目をして・・・




