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夜へ~窓の向こう~
ハンカチで織られたヒコーキ
空に線描きされる航跡が
世界を二つに分ける
空のキャンバスの東の山の端
張り付いた銅貨の三日月は
カクテルグラスに差したレモン
薄青色の液体に浮かんでいる
夜が近付いているのだ
東西に延びる川が赤く染められている
フラミンゴになった白鷺
中州に取り残されて つくねんとしていた
草に埋もれた堤防を
駆けて行く一匹の黒い犬
風に乗る飼い主の呼び声よりも
流れ出た血の夕焼けに魅せられたのか
町に夜が来るほんの一時のグラデイション
マーブリングされた世界
退屈でお決まりの日常に用意された
It's show time
茜色の雲は低くたなびいていた
赤から紅へ 朱に混じる紫 青は群青へと
空は着々と夜に侵食される
光と影のシンフォニカ
交響曲の楽の音に乗せられて
世界は夜に沈む