父上の死
お父ちゃんが流行り病でぽっくり逝っちゃいました
そんでもって葬式しちゃうんだけど、兄様あまりの不機嫌さで、お父ちゃんの位牌に焼香投げつけて帰っちゃった
まっ気持ちは分かるのよ。まだ働き盛りの40前半で途中棄権だもんね
最初に言っちゃったけど、流行り病っていうのもきな臭い感じなんだよね
俺もこの一件は覚えてたから(年号とかしらんから時期は予測)それとなく目を光らせてたら引っかかりましたよ!
信勝兄上と土田御前がめっちゃ怪しいってか、黒幕だったという
多分、兄様は知ってると思う。防げなかったことがきっとあの行動をさせてしまったんだと思ったわけよ
うかつに動く兄様ではないと思いたいけど、そこでお濃さんと相談すべく会いに来たというわけです。
「兄様はどうしてる?」
「信長様は部屋に篭りっ放しで、何度呼んでもお出にはならないの」
さすがのお濃さんも今回の凶行はびっくりしたらしく、どうしたらよいものかと考えあぐねていた
「そっか、じゃあたしが呼んでくる!」
俺は気楽な感じでお濃さんに許可を得て、信長の部屋にたどり着いた
「兄様、聞こえる?」
「・・・・・・・」
返事がない。でも人の気配はするのでいるのだろうが本人でない場合、今から話すことは限りなく危険な言葉となる
しかし回りくどいことが嫌いな信長だから直球で行く
「父上の死は暗殺だから引きこもってるの?」
「がたがたっドンッ!」
襖が開き俺は部屋に引きずり込まれた
「おまえ考えて物はしゃべれ死にたいのか!」
俺を抱きしめながらそう言う信長は震えていた
「兄様には言われたく・・・」
「お前だけは危険な目にあわせたくはないのだ!」
俺は抱きしめる腕を解きながら言う
「兄様、私は死にませんよ?兄様が天下を治めるまでは」
「天下・・・」
信長の震えが止まる
「首謀者は信勝兄上と母上です!」
「そうか」
信長はそういって背を向けた
「兄様、まずは清洲を落とさねばなりませんね。清須の信友は信勝兄上に付く」
俺は信長の背中に呟いた
がばっと振り返り俺を見る信長
「兄様の葬儀でやっちゃったことは家中に不安を残しちゃいました。なので彼らは使えませぬ。平手の爺様すら使えないでしょう」
「いかにする?」
鋭い視線で俺を見る信長
「兄様の郎党だけでやっちゃいましょう!」
「なっ・・・」
はとが豆鉄砲食らったような顔をする信長
「普通に戦をしたら負けまする。なら戦にしなければ勝てまする。私にお任せいただけませんか?」
俺が信長に策を伝えると信長はにやりと笑いながら
「おもしろいな!やるか、市」
「はい兄様!」
これが歴史を少しずつ変えていくことになるとは思いもつかないお市だった