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お市の天下  作者: 女々しい男
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パンドラの箱

織田が奥州平定の軍を動かしていた頃、九州の大友は戦慄を感じていた

「お館様これはまずいことになりましたぞ」

「道雪言うな、儂も分かっておる・・・」

二人は顔を合わせて共に苦しい表情を見せていた

「フロイスとやらが中央から、面倒な者を持ち込んだお陰で、当家は織田に睨まれておりまする」

「分かっておる・・・」

「これもお館様の異教に没頭したがゆえですぞ!」

「そう言うな道雪・・・」

道雪に諌言され、苦虫を噛んだような顔をする義鎮

「いかがなさるつもりか、織田はもうそこまで来ておりますぞ」

「そこじゃ、フロイスが国を動かしてくれると申しておる」

義鎮は笑顔になりそう道雪に伝える

「まっまさか!異国の力をお使いになるつもりか!それはなりませぬ!おやめなされ!」

道雪は強く義鎮を諌める

「儂もその手は使いとうもないのじゃが、この期に至っては致し方なかろう」

「そのようなことをして勝ったとしても、日の本を異国の好きなようにされるだけで御座いまする」

「ええいっ!決めたのじゃ!お主はそれに従えばよい!異国の艦隊が来る前に九州統一は果たさねばならん!肥前の龍造寺が面倒じゃ、速やかに平定してこい!」

「・・・御意」

道雪は暗い顔をしながら義鎮の前から去った

「ヨロシイデスカ」

「んっフロイス殿か、如何致した?」

フロイスは満面の笑みを浮かべながら義鎮を見て話し出す

「ホウオウサマカラ、ジュウジグンノ ハケンキョカガ オリマシタ。コチラニ エンセイグンガ クルマデ、オダヲオサエレバ、オオトモノ テンカト ナリマス」

「おおっ!左用か、あいわかった。それまで織田を食い止めてくれようぞ!」

「ソノイキデス、イタンシャデアル ノブナガト イチヲ ケサナケレバ、コノヒノモトニ、カミノクニ デキマセン」

「任せておけ!」

二人は高笑いをしていた


京に滞在していた信長は四国から来る上洛の使者の対応に追われていた

「四国は殆ど織田に靡いたか、一条は来ておらんがな・・・」

顎を撫でながら話す信長

「一条は大友と婚姻しておりますからな。義理立てしておるのでしょう」

十兵衛が信長に話しかける

「長宗我部に落とさせるか・・・」

「それがよろしいかと」

十兵衛は信長に相槌を打つ

そんな時、二人の男が入ってくる

「上様、播磨、備前、備中、備後、美作の仕置きが終わりましてございます」

「おおっ半兵衛、官兵衛、ご苦労じゃったの」

そう言って信長は二人を労う

「それほどの苦労はございませぬ。上様と姫様の名前を出せば、直ぐに終わる仕事でしたので」

笑いながら話す半兵衛

「中々に言うの、半兵衛、市が聞いたら拗ねるぞ・・・はっはっはっ」

「それは困りますな、今の話は無かったことにして頂きたい」

二人はそう言って笑い合っていた

そんな二人に水を差すように官兵衛が口を開く

「九州にて不穏な動きがありまする」

その言葉を聞いて三人は真剣な表情に切り替わる

「大友が異国の軍を動かしたとの情報がありまする」

官兵衛の言葉に追従するかのように半兵衛が話し出す

「フロイスか・・・」

「恐らく」

信長の呟きに官兵衛が相槌を打つ

「異国の船は大砲と足が早うございます」

十兵衛が話す

「日の本の船では太刀打ち出来ますまい」

半兵衛が悔しそうに呟く

「それなら大丈夫じゃ、市が考えた船がもう出来ておる」

信長がそう言うと三人は驚いたような顔をした

「伊勢の九鬼嘉隆に命じて作らせた船がのう、市に抜かりはないようじゃ・・・はっはっはっ」

「「「・・・・・・」」」

三人は心の中で思っていた姫様にだけは逆らわない様にと


月日は流れ、奥州平定を果たした。お市は北条の小田原城に寄っていた

「信玄、長旅付き合ってくれて助かったわ」

信玄を見ながら俺は話しかける

「いえいえ、姫様と共に奥州平定出来た事、武田の誉れとなりましょう」

「そんな大げさな、あっ付き合ってもらったお礼に信濃、上野あげるわ」

驚いて俺を見る信玄

「もう織田に逆らったり、民を泣かすような事はしないでしょ?」

「姫の期待は裏切りませぬ」

信玄と家臣一同は泣いていた

「じゃ、あたしは氏康に会ってから帰るから国元に戻っていいわよ」

「はっ!では姫様これにて失礼致します」

信玄は去っていった

「犬!兵を国元に戻しといて」

「御意」

織田の兵も国元に戻すと俺は小田原城に入っていった

「お市様、お出迎えもせず申し訳ありません」

「いいのよ、戦後処理が終わってないんでしょ?」

文官がバタバタと走り回っている中で俺は氏康に話しかけていた

「里見との戦であの船、役に立ったかしら?」

そう言いながら俺は梵天丸に乳をあげていた

「なっ!いつの間にお子が!三郎が・・・泣きまする」

肩を落として暗い顔になる氏康

「あっ、この子はあたしの子だけど違うのよ」

「へっ?」

成り行きを氏康に伝えると納得したように微笑んで話し出す

「ようございました。姫様に連れが出来たと知れば、三郎が自害しかねませぬ・・・」

「そんなことないわよって、三郎!いたの・・・」

三郎は俺の乳を吸う梵天丸を親の敵のように見つめていた

「・・・羨ましい」

俺は聞かなかったことにしようと思っていた

「そうそう、船の話でしたな」

氏康がなんとか話題を変えてくれようと必死になっていた

「そうよ、どうだったかと思ってね」

俺もその話に乗る

「里見水軍が手も足も出ませんでした。あのような船を用意しているとは思いもよりませんでした」

思い出すように話し出す氏康

「あれはね、南蛮船との戦で使うつもりなのよ」

「なっ!」

氏康は驚いたように俺を見る

「多分、大友は使ってはならない禁断の箱を開けるつもりよ」

「・・・・・・」

氏康は俺を見て震えていた

「潰してあげるわ・・・異国ごと」

俺は込み上げる怒りに対して、何故か笑顔が出ていたのに気付いていなかった

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