奥州震撼
信長は地理的に日の本の中心になる近江、安土の地に城建てようとしていた
自らが城の縄張り等を考え、壮大な計画を実行に移していた
そんな信長の元に次々と各地から報告が上がっていた
「上様、松永弾正様が四国の三好残党を全て駆逐し、淡路、讃岐、阿波を平定したとの事」
菊は信長に伝える
「気張っておるな弾正め、大和は寺社が多いからな。よし国替えで大和を召し上げ、そのまま淡路、讃岐、阿波を与えると申せ!そのまま土佐の長宗我部を牽制せよと伝えよ!」
信長は微笑みながら菊に返答する
「御意」
「上様、毛利家、小早川殿の勧めで伊予の河野通直が織田に降りたいとの事、上洛し、謁見を求めておるように御座います」
十兵衛が信長に伝える
「四国も動いておるの、わかった京にて会うと伝えよ。十兵衛、土佐の長宗我部、一条、伊予の宇都宮、西園寺に上洛せよと伝えよ。せぬなら潰すと伝えよ」
「御意」
信長は少し思案してからその場を去ろうとする十兵衛を呼び止めて話しかける
「十兵衛、大友にも使者を出しておけ!多分従わぬじゃろうが、市ならばそうするじゃろう。忠告も兼ねてな、毛利には大友を牽制しておけと伝えよ」
「御意!」
それらの手配をして京に行こうとした時に、猿が信長の前に現れる
「上様、姫様が越後に散歩に行かれたがや!」
一気に喋る猿
「ほう、市ならば越後だけではすまぬじゃろう。東北奥州を散策に行くな・・・」
そう言って奥州の方角に目を向ける
「猿、今から儂が文を書く。それを先に東北の大名に渡しておけ、市が歩きやすいようにな」
「御意だがや」
そう言って歩き出すと思い出したかのように近習に話しかける
「三郎と氏真それと権六を呼べ」
「はっ!」
近習は急いで呼びに行き、一刻も経たぬうちに三人は現れる
「上様からのお呼びと聞き、罷り越しました」
頭を下げて信長に挨拶する三人
「三郎は氏康殿の元に行き、里見、佐竹を潰せと伝えよ。勧告はするがどうせ受け入れぬじゃろうからな。市が東北奥州を回って関東に来るじゃろうからな。出迎えてやれ・・・はっはっはっ」
「・・・御意」
三郎は赤い顔をして信長の命を了承して信長の前から去る
「氏真、お主は三河、遠江に行き兵を纏めて北条の援軍を致せ。用兵は苦手じゃろうから人を付けてやる。権六を連れて行け」
「はっ御意に御座います」
「御意」
二人は揃って頭を下げて信長の前から去る
そして信長は京に向かった
越後の内乱を利用し、越後に侵攻しようとしていた最上は、瞬く間に織田が内乱を鎮圧した為に、動くに動けない状況となっていた
「手を打つのが早すぎる・・・」
一人、最上義守は途方に暮れていた
「父上、どうするおつもりか?」
そう言って一人の男が義守の前に現れる
「義光か、越後が織田に落ちた」
「そうですか、織田と隣接してしまいましたな」
「伊達と婚姻を結んでおいて良かったわ」
「まさか、織田とやり合うおつもりか・・・」
まるで馬鹿を見るかのような目を義守に向ける義光
「ここは奥州じゃ、地の利もある。中央の貧弱な兵など相手にならぬわ!」
強気な発言をする義守
義光は首を振りながら答える
「織田は新たな将軍となっておりますぞ。逆らうおつもりか?」
「最上は足利将軍家より羽州探題を受けておる。由緒正しき家柄ぞ!織田の成り上がり等、奥州で大きな顔はさせぬわ!」
顔を真っ赤に染めて義光に噛み付く義守
「最上が消えまするぞ・・・」
義光は暗い顔をする
「うるさい!お主は黙ってこの父の言う事を聞いていれば良いのじゃ!」
「ここは引けませぬ!越後に滞在しているのは、あの武田ですぞ!」
「武田など織田に敗れた負け犬じゃ!甲斐の虎などと呼ばれても誇張した風説じゃ!」
「武田だけではございません、あの女宰相お市が織田の兵を率いて越後にいるのです!間違いなく東北奥州を平らげに動きまする。ここは先手を打って織田に降り、奥州平定の先方となるのが上策に御座います!」
義光は声を荒らげて説得する
「煩い!お主最上の武門の誇りがないのか!」
「誇りなどで、あの織田に立ち向かえませぬ!出羽を三河の二の舞にするおつもりか!」
そう言って義守に掴みかかる義光
「誰かある!義光を捉えよ!」
「なっ!」
義守に呼ばれた近習達が義光を囲み捉えた
「父上、この事をきっと後悔なされますぞ・・・」
「お主は廃嫡し、弟の義時を世継ぎとする!連れて行け!」
義守はそう義光に言い放つ
「・・・・・・」
義光は近習に囲まれながら部屋を出ていった
その後義光は義守に偽りの謝罪をし、これに気分を良くした義守を食事に招き、父義守と弟義時を同時に毒殺して、一気に家中を纏めようと画策したが時間が足らず、家中が割れて内乱が勃発
お市率いる織田軍が出羽に侵攻すると義光は織田に降伏し、反織田は全て根絶やしとなる
この一件は東北奥州全土に激震となり走り、織田の驚異を感じさせる事となる