フロイス
毛利討伐の軍勢を国元に戻して、俺と信長が京に滞在していると信長に会いたいという異国の宣教師が来た
信長は興味を持ち会うことにしたが、俺はその時に嫌な予感を感じて同伴していた
「我に会いたいとはその方か?」
物珍しそうに異国の男を見る信長
「ハイ、ルイス=フロイス、トイイマス」
カタコトの言葉で話すフロイス
「何用じゃ?」
「ノブナガサマニ、キリストキョウフキョウノキョカヲ、イタダキタクテマイリマシタ」
信長は熱心に話を聞いていた
「キリスト教とは如何なる、教えなのだ?」
フロイスは手応えを感じたのか。キリスト教の教えを話しだした
信長は聴き終わると目を輝かせながら話しだした
「神の元、皆平等とは素晴らしい教えじゃな!」
「ハイ、コノスバラシイオシエヲ、ゼヒヒロメタイノデス」
許可を出そうとする信長に、俺は待ったをかけた
「あらっ?おかしいわね?」
「んっ?いきなりどうした?市」
俺はフロイスを見ながら話す
「じゃなぜ?貴方達は奴隷を扱ってるの?人は皆平等なのでしょう?」
「ソッソレハ、ツミヲオカシタカラデス・・・」
困ったように話すフロイス
「罪?先ほど話した内容だと、神に懺悔したら罪は消えるのではなかったの?」
「ソッソレハ・・・」
言葉に詰まるフロイス
「宗教とは矛盾しているものだと、私も思うわ。でもね弱い民の心を利用しようとしてるのなら許さないわよ・・・」
俺はそう言ってフロイスを睨めつける
「貴方達キリスト教は他の宗教を認めないでしょ?」
「ソッソノヨウナコトハ・・・」
ゴミを見るような目でフロイスを見る
「貴方が遥か遠い異国から必死になって、この日の本に来た。その覚悟と苦労は評価するわ」
「オオッソレデハフキョウヲ・・・」
フロイスが話しきる前に俺は被せるように話す
「評価しただけよ。キリスト教の教え自体は嫌いではないわ。でもね扱う人により変わる宗教なんて認めない!あんた達どれだけの民を、異国に連れ出した!」
「ソッ・・・」
フロイスは体を震わせながら目を泳がせる
「銀も大量に持っていってるのも分かってるわ。九州の大名たち、特に大友を丸め込んでるのも分かってるのよ?」
「・・・・・・」
フロイスは黙り込む
「この日の元を異端の国として、遠征軍でも出すのかしら?あなたの親玉であるローマ法王様は?」
「ナッ!」
驚きを隠せないフロイス
「どういうことだ?市?我にもわかるように言ってくれ」
信長は困惑したように俺を見る
「兄様、昔の一向宗門徒の異国版で御座いまする」
「なっ!」
信長は驚きと共に怒気を纏う
「それも日の本の何倍もある西洋の国々が、他の未開の地を攻めて、地元にいた住人を奴隷や虐殺するのでございます。神の名においてと言う免罪符を使って・・・」
「ナゼッ!ソノヨウナコトヲシッテイルノダ!」
フロイスは驚きと共に口走ってしまう
「フロイス、貴方、ポルトガルの人でしょ?」
「ナゼッ!シッテル!」
「ポルトガルはアフリカとかインド洋だったかしら?植民地にしてるわよね?スペインはフィリピン抑えてるから、あんた達仲悪いでしょ?」
「クッ!」
フロイスが俺を恨めしそうに睨む
「舐めるな!異国が愚かな蛮族ばかりだと思うなよ!自分本位な考えでこの日の本を扱うのならば・・・潰すぞ国ごと」
「・・・・・・」
フロイスは肩を落として俺たちの前から居なくなった
その後、フロイスは足利義秋に謁見し、義秋を九州の大友に連れ出すという行為を行う
俺は事前に情報を掴んでいたが、そのまま好きな様にさせた
「兄様、これで大友と共に義秋を潰せますね」
「怖い女子じゃのう・・・はっはっはっ」
「帝を動かし、将軍職剥奪を手配いたしまする」
「うむ・・・」
「これを気に兄様には新たな将軍職と摂政関白の位を貰ってまいりまする」
「なっ!」
「帝は日の本の象徴としての意味しか持たせませぬ」
「・・・・・・」
「公武合体させ、織田の政策を浸透させまする」
「全て市に任せよう・・・」
「兄様の期待は裏切りませぬ・・・」
そう言って俺は信長に微笑んだ
近衛前久を使い、帝に信長は謁見し、足利義秋は将軍職を帝により剥奪され、武家を束ねる者として征夷大将軍職を拝領し、公家を束ねる物として天皇が幼ければ摂政を、成人であれば関白位を信長は常に貰うことを天皇に了承させる
これにより天皇は完全に象徴となり、信長が実質全ての政を行うことを認めさせたのである
後の話になるが信長はこれを世襲制にし、公武合体を推し進めることになる
そして徐々に民に教育を施し、緩やかな民主政治へと移行する事となる