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お市の天下  作者: 女々しい男
55/62

毛利の仕置き

織田は毛利討伐の軍を国元には戻さず、出雲に入れていた

「何という旗指物の数なのだ!一歩間違えれば、この数と毛利は戦うことになっていたのか・・・」

隆元はその数と装備に驚きを隠せなかった

「急速な軍備と領土の拡大は弊害を生み易い、しかし奴らを見てみてみよ。皆何かを背負っている。そんな目と気迫を感じる」

「・・・・・・」

隆元は元就の言うことに間違いがないと感じていた

「我らが使う兵と織田の兵は明らかに違う。我らも変わらねばならん。変わらねば、毛利は織田に消される。しかと心得ておれ」

「はっ!」

元就と隆元は月山富田城に入っていった


思えば、わしは大内と尼子を行ったり来たりして、毛利の延命を図って来た

我が生涯はそれに費やされた。

この月山富田にも何度も来た。しかし今回の訪問は、我が生涯で最大の難所であろう。

この歳になって、これほどの緊張をするとはな。怖くもあり、何かを期待するそんな気持ちもある。

複雑じゃが、どうしても毛利の行く末、安寧にしなければならん

安芸一国となろうとかまわん。そのくらいの覚悟をせねばなるまい。

今から会う、女子が毛利にとって観音となるか、羅刹になるか。

「毛利陸奥守元就と申します。織田右近衛大将信長様に拝謁出来、恐悦至極」

「毛利大膳大夫隆元に御座います」

二人は信長に揃って頭を下げた

「中々、動き回ってくれたのう。して褒美は根絶やしが良いか?」

そう言って二人を見る信長

頭を下げて平伏していた元就は微妙だにしなかったが、隆元はその言葉と威圧に体が震えていた

「「・・・・・・」」

「なんじゃ、人形にでもなったか?一人は小刻みに震えておるが・・・」

信長がそう言うと横から話しかける者がいた

「わざわざ、兄様に会いに来てくれたのです。そのように仰れば、話そうにも話せますまい」

俺は毛利に助け舟を出す

「ふっ、儂にではなかろう。此奴らはお主に会いに来たのじゃろう」

信長は笑いながらそう俺に話す

「まっ!私が兄様を尻に引いているかのように、仰らないで頂きたいわ」

嫌な顔をするかのような仕草をした

「まっそう拗ねるな・・・はっはっはっ」

「もう、兄様は変わりませんね。元就殿、隆元殿、まずは頭をお上げください。下げたままでは話すらままなりませんので」

俺は二人に頭を上げるように話す

「「はっ」」

二人は頭を上げて信長を見る

「して、毛利はどうする?」

「毛利は織田に下りまする」

「ほう、下るか、天下の毛利が一戦もせずに下るのか?武門の誉や誇りはどうする?」

信長が探るように話すと元就は口を開いた

「毛利に武門の誉れも誇りもありませぬ」

それを遠目で見て聞いていた尼子家中が騒めく

「ほう、毛利には武門の誉れと誇りはないと申すか」

にやりと笑いながら信長は元就を見る

「元はこの地の小さな豪族でありました。民と共に田を耕し、共に生きておりました。されどこの乱世、強き者に振り回されるのが習い。尼子、大内と強大な力を持つ者達に囲まれて翻弄され、強くなっただけで御座いますれば、今で言う武門の誉れや誇り等、毛利には必要ない物でございますれば・・・」

信長は顎を触りながら元就を見つめる

「ほう、ならば毛利は何が必要なのじゃ?」

元就は信長の目を強く見て力強く話す

「人にございます。戦の無い、民が安心して田畑を耕し、子を育て生きる。その笑顔を守る為に国を広げたので御座います」

信長は目を輝かせながら話す

「織田と同じ考えか・・・」

「・・・・・・」

そう呟いた信長に何も答えない元就

「播磨、備前、美作、備中、備後、出雲一部は没収、長門、周防、石見、安芸は所領安堵致す!」

「有り難き幸せ!」

「・・・・・・」

思わず隆元は声を出し、元就は沈黙していた

「しかし、隆元の嫡男、幸鶴丸を人質として織田に連れてこい」

「なっ!」

「速やかに向かわせまする・・・」

隆元は驚いて、元就は了承の言葉を発した

「心配するな隆元、疎略には扱わぬ。市が面倒を見てくれよう」

そう言って俺を見る信長

「仕方ありませぬ。隆元殿、私が幸鶴丸を預かっても良いですか?」

そう俺が話しかけると隆元は頷きながら話し出す

「甘やかして育ててしまいました。お市様に育てて頂けるとあらば、毛利にとって栄誉な事となりましょう。よろしくお願い致しまする」

隆元は俺に深々と頭を下げた

「あっそうそう、隆元殿、他所に行ったら食事には注意なさい」

「へっ?」

思わず顔を上げて驚く隆元

「あなたはこれからの毛利を背負わねばならない方、食事には常に気をつけなさい」

隆元はよく分からなかったが、思わず答える

「食事はよく気をつけるように致します」

こうして毛利は織田に下り、西国は収まった


元就と隆元は安芸に帰る途中で話をしていた

「父上は知っておられたのですね・・・」

隆元は元就に話しかける

「そうじゃ・・・」

隆元は少し下を向きながら答える

「寂しくはありますが、毛利いや、幸鶴丸には良い話で御座いますれば」

「すまぬな、隆元・・・」

「いえ、お市様に育ててもらった方が良いと感じました。あの方は民を思いやる心を幸鶴丸に教えてくださりましょう」

そう言って隆元は笑い、元就も釣られたように笑っていた

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