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お市の天下  作者: 女々しい男
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半蔵と段蔵

徳川の仕置きが終わり、岡崎城の中に入った俺は、極度の緊張と衝撃で疲れたであろう奇妙と鶴を寝かせ、頭を撫でていた

「辛いものを見せてしまったわ・・・」

俺は次期の織田を背負っていくであろう二人に重い責任を押し付けたようで心が痛んでいた

「我にも責任はあります・・・」

そう言って姿を見せた半蔵は俺に謝罪する

俺は半蔵の目をしっかり見て話し出す

「貴方には責任は無いわ、家康を誰よりも諫めたかったのはあなたでしょ」

「・・・・・・」

半蔵は何も答えない

「それをあたしがさせなかった、御免なさいね。半蔵、あなたを悪者にしてしまったわ。闇の世界を否定して、一緒に歩こうといったのに嘘をついてしまった形になったわ。」

俺は半蔵の手を握って涙を流しながら詫びていた

「我に後悔はありません、信長様と家康様の前で言った。某の言葉は全ての伊賀ものの本心に御座いますれば、それにあのお二人でもお止め出来ませんでしたので・・・」

そう言って半蔵が後ろを振り向くと、そこには酒井忠次と本多正信が平伏していた

「貴方達にも辛いものを見せてしまったわね、恨むならあたしを恨みなさい。私は武士を疎かにしようなど思ってないわ。ただ民百姓にも心があると知ってもらいたいだけ、強き者が守るのは誇りや名誉や家ではなく、民なのだと分かって欲しかっただけ」

俺はそう言って彼らを見る事が出来なかった

「お市様のお気持ちは分かっておりまする。殿をおいさめ出来なかった、某たちの不手際に御座いますれば、お市様の心が痛まれるのを見るのはつろう御座います」

忠次は涙を流しながら話す

「民を敬う気持ちを、殿に植えつけられなかった責任は私達にありまする、けしてお市様の事を我らは恨んでなどおりませぬ」

正信も泣いていた


三河の仕置きが終わると俺は岐阜に帰る道中で襲撃を受ける

「姫!某の後ろに!」

熊が俺の前に来て槍を構える

「熊殿!」

虎は熊を補助するように槍を構える

「姫!」

雉が俺の後ろに隠れた・・・何してんだこいつ!

キラッと何かが光った時に熊は槍を振って光った物を弾き落とす

「棒手裏剣!」

虎が叫び

「伊賀は何をしておじゃる!姫の近くまで忍びを入れるとわ!怠慢でおじゃる!」

雉が俺の後ろに隠れてそう叫ぶ・・・お前、前に出ろよ!

「あっ!半蔵!」

俺は手傷を負った半蔵を見つけ駆け寄ってしまう

「「「姫!」」」

熊達は俺の動きについていけず、俺は目の前に現れた男に刀を突きつけられた

その時、一発の銃声が響く

「姫さん、いきなり動いたらあぶないぜぇ」

俺に向けていた刀が、鴉の打った弾に当たり折れていた

「鴉!殺したら駄目!」

「へっ?」

俺は鴉がすぐに謎の男を狙って撃とうとするのを止める

「何故?我を殺さない?」

謎の男は俺にそう問いかけた

「貴方に殺気がないもの、それに近寄ってみて、半蔵が偽者だと分かったからよ」

謎の男は刀を投げ捨て片膝を付いて俺に頭を下げた

呆気に取られる獣達

「流石はお市様、よく見破りましたな」

「それであなたの目的は果たせたのかしら?」

「中々に優秀な者たちを周りに置かれていますな」

「自慢の家族よ」

そう言って獣達を見る

獣達は恥ずかしそうな顔や誇らしげな顔をする

「噂は本当であったか、これをお渡しするようにと言付かって参った」

そう言って男は俺に文を渡す

俺は文を読み男に話しかける

「あなた、加藤段蔵っていうのね」

男は驚いた目をして俺を見る

「何故分かったのかって顔してるわね、この文に書いてあったわ、定満殿は貴方の行く末を心配してたのね・・・」

俺は膝を曲げて段蔵と同じ目線で語りかけた

「我のような者にそのように同じ目線に立たれるとは!」

そう言って驚愕する段蔵

「あなたもあたしも同じ人だもの、そんなに卑屈になっちゃだめよ」

そう言って俺は微笑んだ

段蔵は少し顔を赤らめて目を逸らす

そんな時に半蔵が三河方面から走ってくる

「くっ、鳶加藤か!よくも我らを巻いてくれたな!お市様はこの半蔵、命をかけてお守りする!」

段蔵に切りかかろうとする半蔵

「半蔵!やめなさい!」

「はっ!」

すぐに刀をしまう半蔵・・・猿並みの行動力だな

「半蔵、まだまだだな、そのような事ではお市様の身を守れるのか?」

段蔵は半蔵を馬鹿にしたように話す

「くっ!」

「我は姫様に興味が沸いた、姫の近くで見守っても良いですか?」

断られたらどうしようというような顔で俺を見る段蔵

「なっ!お主がそのように言う事など無い!何を企んでいる!」

半蔵は慌てたように段蔵に噛み付く

「それが貴方自身が出した答えならいいわよ」

俺はそう言って段蔵を立たせた

「なっ!」

立たせようと段蔵の二の腕を掴む、俺の手を驚きながら見ていた

「今日から貴方も私の家族よ、よろしくね鳶」

「我がそのような言葉を聞くとは、思いもよりませんでした。よろしくおねがいします、姫」

俺たちは笑顔で微笑んでいた、半蔵を除いて

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