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お市の天下  作者: 女々しい男
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裏切りの代償

「姫、家康を捕らえましたぞ」

縄で縛られた家康が、熊に引きずられながら俺と信長の前に連れてこられる

「何か言いたい事はあるか?竹千代・・・」

声は優しいが寒気すらする雰囲気で話しかける信長

「兄上ぇ、これは何かの間違いに御座います!この竹千代けして兄上に逆らったわけではなく、全ては家臣達の事を思えばこそ!全ては半蔵等の家臣の致した事、この竹千代止めきれず、面目次第もございませぬ・・・」

何とか言い逃れようとする家康

「ふむ、半蔵が唆したと?」

優しい声で呟く様に話す信長

「そっそうで御座います、あの者が私を誑かしたので御座います!」

何とか成りそうな手応えを感じたのか、顔色が良くなり話し出す家康

「そうなのですか?半蔵?」

俺がそう言うと俺の横に半蔵が片膝を付いて現れる

「全ては家康の命にて」

そう言って家康を見る半蔵

「半蔵!お主裏切っておったのか!あれほど目をかけてやった恩を忘れおって!」

冷めた様な目をして家康に語りだす半蔵

「恩?まるで道具のように我ら忍びを使い、蔑んだお主に恩など御座らん」

「貴様!幾らで市に買われたのじゃ!伊賀に領地を貰ったからか!」

怒鳴る家康を前に半蔵は冷めたように話す

「もはやそのようなものでは我らは動かん!我ら忍びを、お市様は同じ人だとおっしゃった。この闇にしか生きれぬ、我ら忍びを自分と同じ人だと仰ってくれたのだ。一緒に歩もうとまで仰ってくれた。そんなお市様は我らにとってかけがえの無い希望そのもの!失う事などできん!」

それを聞いた家康は笑いながら話す

「何を言っておるのだ。お主等忍びなど、我ら武士と同じ人ではない!そんな口車に乗ったのか?民百姓など武士の奴隷ではないか!それを民を大事にして、家を武士を蔑ろにする織田など、認めるわけにはいかぬのがこの世の通りじゃ!」

それを聞いた信長が静かに話し出す

「ほう、織田の政策が気に入らずに裏切ったと?」

家康は我に帰り、震えながら答える

「兄上ぇ、命ばかりはお助けくだされ・・・お市様の奴隷となってもかまいませぬ、助けてくだされお市様ぁ」

泣きながら許しを請う家康

「あんたのような者はいりません、しかるべき場所で自分のした事の愚かさをかみしめながら・・・死ね」

俺は冷たい目で見つめながら家康にそう言い放つ

そして引きずられるようにして俺たちの前から消えた


後日、徳川に連なる親族郎党、織田に歯向かった三河、遠江、駿河の豪族、家臣、重臣を家族ごと全て捕らえて、岡崎城の正門の前に縄をつけた状態で座らせる。その数1000人以上、その周りには三河の民百姓が事の顛末を見守っていた

俺はそんな縄で縛られた皆の前に、家康を放り投げた

縄で縛られた者たちが必死に命乞いをする

その中には幼い子供や女も多く含まれていた

男達は必死に女子供は許してほしいと声を荒げる

女子供は泣き叫んでいた

「奇妙、鶴よく見ておきなさい。これが上に立つ者の責任の重さです。民も武士も同じ人ではありますが、責任の重さに違いがあるだけなのだと、肝に銘じなさい」

そう言って奇妙と鶴を見ながら話しかける

「「はい・・・」」

そう言って二人は緊張した面持ちで望もうとしていた

そして俺はこう言い放つ

「家康、己がしたことの愚かさをお前の目の前に見せてやろう・・・」

「なっなにをするつもりなのだ!まさかわしの前で殺すつもりか!」

「お前の妻子は全ての顛末を見せてから、お前の前に殺す、それがお前の罪だ」

俺は手で合図をしながら刀を持った武士を子供達の前に立たせる

「苦しませるな、ひとおもいにやれ・・・」

子供達の首が飛ぶ、女は泣き叫び、男達は目を背ける

「苦しいか、悲しいか、その気持ち民百姓にもあるとしれ!」

おれは叫びながら指示を出す

「次は女子じゃ、やれ!」

そして女の首が飛ぶ

「武士は偉いのではない、民百姓がいるからこそ!守るべき者があるから、敬われるのじゃ!守るべき者を間違え、織田を裏切ればどのようになるか思い知れ!」

縛られた男達が怨叫の声を上げていた

「男は苦しませながら殺せ!己の間違いをかみしめ、後悔ながら死ぬが良い!」

そして俺は家康と妻子を見た

家康は恐怖の余り、失禁と脱糞していた。瀬名姫は幼子を二人抱きしめながら気丈な目で俺を見る

「何か言いたい事はありますか?瀬名姫」

「夫、家康の裏切りを気づかなかったとは言え、止める事が出来なかった罪は私にあります。この子達は何も知りませぬ。無理は重々承知しております。ですがこの子達だけでも助けては貰えないでしょうか。お願いいたしまする」

死の間際でもなんとか子を生かしたいと願う、親の心に触れて、俺は苦痛の表情を浮かべる、助けてやりたいと思ってしまう。心が揺れ動いたとき、隣から声をかける男がいた

「瀬名、姫を困らせるでない、お前も武門の出ならば分かるじゃろう!我が介錯してやる」

そう言って刀を持って瀬名姫に近づく雉麻呂

「義父上、取り乱してしまいました。申し訳ありませぬ、お市様困らせてしまい申し訳ありませんでした。」

俺に頭を下げる瀬名姫

「よろしければ、この子達は我の手であの世に行かせとう御座います。なりませぬか?」

「・・・・・・」

そう告げる瀬名姫に俺は無言で頷いて瀬名姫と子供の縄を解き、自分の懐刀を手渡した

「お市様、かたじけのう御座います。竹千代、亀、先に行っていなさい、すぐ母もくるゆえ」

先に竹千代を刺し、赤子の亀を抱きしめるように刺した

「義父上、介錯をお願いいたしまする。来世では戦の無い世が良いですね・・・」

瀬名姫は胸に刀を刺して前に倒れこむ、雉麻呂の刃が振り下ろされた

俺は苦しさで張り裂けそうになっていた、奇妙も鶴も泣きながら、それでもしっかりと前を見つめていた

「お前で最後だ、竹千代・・・」

家康は首を左右に振りながら許してほしいと叫んでいた

「苦しめて殺せ・・・」

俺はそう呟くと悲鳴を発する家康の声を聞きながら、子供達を連れてその場を後にした

その後、家康達の首は岡崎城の前にさらし首とされ、墓も作られる事は無かったが、お市の命により瀬名姫と二人の子供の墓は駿河に作られたという

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