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お市の天下  作者: 女々しい男
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本能寺

徳川の援軍が京と丹波の国境にさしかかった時に、家康は一時進軍を止め、休息をさせる

「半蔵!」

家康は半蔵を呼ぶ

「はっ」

半蔵は家康の直ぐ目の前に現れた

「龍と玉は何処だ・・・」

「京の本能寺にて宿泊しておるとの事」

顎を触りながら座っていた家康は話し出す

「して数は・・・」

「少ない供回りのみ」

行き成り立ち上がり叫ぶ

「我、天命を得たり!重臣達を集めよ!」

「御意」

半蔵に呼ばれた重臣達が居並ぶ前で家康はこう叫ぶ

「我らはこれより京に向かう!」

重臣達はあっけにとられたような顔をして家康を見る

「信長と市を亡き者とする!これは武家を蔑ろにする織田家への天誅だ!」

それを聞き、慌てた様に声を出す本多正信

「殿!それはなりませぬ!織田に逆らえば一族全て滅ぼされますぞ!ご再考を!」

そう言って土下座して頭を土に擦り付ける正信

「殿!某も正信の言に同意ですぞぉ!無謀で御座る!おやめなされ!」

酒井忠次も正信に同意する

「喧しいわ!そのような臆病者などいらぬ!士気が下がるわ!三河に帰れ!顔も見たくは無い!下がれ!」

家康がそう述べると正信と忠次は肩を落としながら家康の前から去る

「殿!その時が参ったのですな!」

涙を流しながら話す鳥居元忠

「今まで苦労が報われまするな!」

大久保忠隣は興奮しながら家康を見る

「今川、織田と散々こき使われてきた報いを返しましょうぞ!」

大久保忠世は怒鳴るように家康に話しかける

「我が武で信長と市を成敗してくれましょう!」

本多忠勝が勇ましく家康に話しかける

それを見た家康は号令をかける

「敵は本能寺にあり!皆の者続け!」

「「「「おう!」」」」

こうして家康は軍勢を転進し、京の本能寺に向かって走り続け、本能寺を徳川軍が取り囲む

「んっ?何故こんなに静かなのだ、人の気配がせぬ・・・」

そう思案している家康に旗指物を指した武者が家康の前に躍り出る

「本能寺及び、この周辺に人がおりませぬ!」

家康は思わず、軍配を落として叫ぶ

「謀ったかぁ!この家康が・・・」

そして放心状態になる家康

「殿、兵を三河に戻しましょう!三河、遠江、駿河が危険です!」

元忠が叫ぶ

そんな時、血まみれの兵が家康の前に現れる

「殿、囲まれております・・・」

そう家康に告げると血まみれの兵は力なく地面に崩れ落ちた

今までの静寂が嘘であったかのように鳴り響く火縄の音

勇敢に立ち向かう三河兵は次々と現れる織田の大軍と火縄により、逃げる事も出来ず倒れていく

方々で聞こえる悲鳴と共に

「織田を裏切る者の末路がどうなるか見せつけよ!」

「根絶やしにせよ!一人も生かすな!皆殺しじゃ!」

「降伏など許されぬ!蹂躙せよ!踏み潰せ!」

その声と光景を見て家康は、脳裏に浮かぶ信長と市の言葉を思い出していた

「竹千代、織田は裏切りを許さぬ!裏切れば一族全て死に絶えると覚悟せよ!」

「家を大事にするのはかまわないけど、足元の民を泣かせば潰すわよ・・・ふふふっ」

家康は極限の恐怖を感じ、ただ立ち尽くしていた


その頃家康の指示により、三河、遠江、駿河に残した軍勢を尾張、信濃、甲斐、伊豆に侵攻させていた

越後侵攻をする予定だった信玄率いる武田本隊は、急遽出された市からの命令変更で信濃三河の国境に待機していたのである

そこに火急の知らせが入る

「徳川の軍勢が尾張、甲斐、信濃、伊豆に侵攻しております!」

その報告を聞いた信玄は、座っていた椅子から立ち上がり、話し出す

「お市様の言ったとおりか、お市様を甘く見すぎじゃ、我を手玉にとった女子ぞ!代償は己の命だけではすまぬじゃろうな・・・」

信玄は心の中で思う。裏切りを織田はけして許さぬ。我ですら裏切る事など考えもしないものを若さとは恐ろしいものじゃ

「お館様、兵は整って御座います!」

昌景が信玄に話しかける

「駿河と遠江から来る軍勢は北条にまかせよ!我らは三河を攻める!武田の力見せてくれよう!」

信玄は越後侵攻を上野にいる真田幸隆に任せ、自らは転進して三河に侵攻した


伊豆の小田原城に二人の男がいた

「お市様の予想通りですな、徳川の命運つきましたな・・・」

「あれほど麻呂が忠告したのに無視するとは案外馬鹿でおじゃったな」

氏康の言葉を聞きながら笏をフリフリして答える雉麻呂

「伊豆、甲斐、信濃に侵攻しておる遠江と駿河の者たちは、麻呂が口説き落としたでおじゃる、逆に佐竹と里見に対する援軍をしてくれるでおじゃるよ」

「雉麻呂殿がいらっしゃった時点でこうなると思っておりましたのでな、心配はしておりませなんだ・・・はっはっはっ」

「そうでごじゃるか・・・ほぉほぉほぉ」

そう言いながら笑いあう二人


三河に戻った忠次と正信は岡崎城に立ち並ぶ、武田菱を見て徳川の最後を悟った

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