分岐点五
「姫、あちらこちらで、きな臭くなってきたがや」
猿が俺の前に来て行き成り、そういい始めた
「毛利が動いたのかしら?」
そう言いながら四人の子供達を寝かしつけていた
「毛利本隊が尼子攻めを強行してるようだがや、それに因幡の山名が毛利と同盟したがや!備前の三村と播磨の別所が織田派よりの城にちょっかいかけてるようだがや」
「あらっ毛利は織田とやり合うつもりの様ね」
少し意外そうな顔をしながら話す俺
「それに謙信が兵を集めながら、越中に動いてるがや」
「それは上洛を考えてるのかしら・・・無謀ね」
奇妙の頭を撫でながら話す俺
「佐竹、里見も武蔵の北条にちょっかいかけ始めてるとの報告もあるがや」
「謙信も織田の戦力を分散しようと考えてるのだろうけど甘いわね」
鶴の頭を撫でながら話す俺
「四国の三好三人衆の残党が讃岐で兵を集めてるそうだがや」
「あらあら、連動してるわね、毛利の謀神さんが動いてるようね。義秋には出来そうに無い手の回し方だわ」
「これはちときつくないきゃ、織田の戦力が分散するぎゃ」
「まっ兄様と相談してからになるとは思うけど、山名がそのままだと尼子がやばいから犬!先に兵を率いて山名を潰しときなさい!」
「御意!」
「播磨と備前は猿!あんたが兵を纏めて反織田を潰しなさい!半兵衛と官兵衛の言う事良く聞くのよ!」
「御意だがや」
四人の頭を撫で終わってから俺は信長の下に向かった
「兄様、起きてる?」
そう言って信長の部屋を開ける
信長はなにやら文を書きながら顔を俺には向けずに話し出す
「市か、来るだろうと思っておった」
「大掃除の時が来たわ」
信長は筆を起き、俺を見る
「動いたか」
「ええっ、毛利の翁が纏めて動かしてくれたそうよ」
俺は信長を見つめながら続けて話す
「謙信は長政に補佐で義父を付けて相手させるわ、武田には越後に侵攻してもらう、北条には守戦防衛、四国の三好残党は弾正にやらせる」
「毛利の相手はどうする?」
「あたし達の本隊と暇そうな竹千代を動かして潰しましょ」
「あと少しだな・・・」
「そうね、あと少しよ・・・」
こうして俺たちは少ない手勢を率いて一路、京の都に向かった
「織田様からの文が届きましてございます」
そう言って家康に文を渡す近習
「・・・・・・」
文を読んで家康はにやりとした顔をして話し出す
「信長様の援軍要請じゃ!我はこれより兵を率いて京に向かい、因幡にて織田本隊と合流して毛利を討伐致す!急げ!」
ふはっはっはっ!面白いように毛利の言ったようになるとは、さすがは毛利元就!謀神の名は伊達では無いな!
半蔵の報告で毛利、謙信、佐竹、里見、三好、山名が動いたとの報告がきておる
北条は佐竹と里見の相手で伊豆は空になる、甲斐も同様じゃ!武田が信濃の軍勢も連れて越後に向かうから領地が取り放題じゃ!笑いが止まらぬ
越中に動いた謙信が中部の各領地の兵も釘付けにしてくれるはずじゃ!
それになんと言っても、信長と市が少ない手勢で動いておる
これは天が与えた、好機ぞぉ!天はやはり武家の天下を望んでいる証拠じゃ!
最後の最後に慢心したか!将軍の御内書もこうなれば、色々と役に立つわ!
馬鹿な奴らめ、民などに目を向けるから消されるのだ
「半蔵!」
「はっ」
家康は周りに誰もいないことを確かめてから話し出す
「信長と市を見張れ・・・」
「御意」
家康から指示を受けると半蔵は消えた、もうすぐじゃ!これでわしは誰の顔色も伺わず生きていけるのだ!
「はっはっはっはっ!」
家康の高笑いが辺りに響いていた
安芸の吉田郡山城の庭で一人、元就が佇んでいた
手は回した、後はどのような結末になるか
時代は民を取るのか、それとも武士を取るのか
それにより、この毛利の行く末が変わるな
「元春に伝えよ、月山富山城は囲んでけして攻めかかるなと」
近習の一人がそれを聞き、この場を去る
「隆景には備前と播磨に援軍の兵は出すなと伝えよ」
近習の一人が、またこの場を去る
「父上、我らにも内緒で動きましたな・・・」
そう言って笑いながら元就を見る隆元
「謀とはたとえ、身内と言えども話せぬものよ」
隆元は困った顔をして元就に話し出す
「そんな父上をもった私の苦労も分かってもらいたいですな」
「はっはっはっ、精進しろ隆元!お主には期待しておるのだ」
そう言って空を見上げる二人だった