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お市の天下  作者: 女々しい男
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官位の価値

義秋による織田討伐の御内書に近畿周辺の大名は戸惑っていたが、執権という権威と強大な武力、広大な領地を持つ信長の圧力に逆らえず、丹波の波多野、若狭の武田、丹後の一色は屈服し、信長に臣下の礼をとり、完全に信長の傘下となった。

比叡山延暦寺、興福寺共に武力放棄を信長は命じ、本願寺顕如の取り成しもあって、心ある僧侶は京に用意された寺に移ったが徹底抗戦の構えを見せる僧侶、僧兵は織田の兵によって攻められ皆殺しにあい、建物も全て燃やされてしまう

その苛烈さに力の弱かった人々は希望を持ち、欲に塗れた者達は戦慄を覚えていた


「何故じゃ!何故、朝倉は動かん!」

義秋は朝倉が織田討伐の兵を出さない事に苛立っていた

「朝倉が治める越前は、重税による一揆が多発しており、国許を離れられないのでございましょう・・・」

「近畿は完全に織田の領地と化してしまった、こうなれば!甲斐の武田や越後の上杉、西国にも文を出して織田を討伐してくれるわ!」

目に狂喜を浮かべ、高らかに宣言する義秋

それを見ていた藤孝は諦めきった顔を表に出しながら義秋に直言する

「公方様、もうおやめくださいませ、織田には勝てませぬ!命は取られずとも死よりも恐ろしい末路が待つ事になりまするぞ!この細川藤孝、最後のご奉公と思い諫言いたしまする・・・」

そういって義秋の元を去り、藤孝は信長に臣従した


その頃、俺はある公家の下に要望を聞いてもらうために来ていた

「信長殿の使者がお越しと聞いておじゃったが、織田の姫様ではないでおじゃるか!お久しぶりでおじゃる」

そう言いながら笏を口元に当てて話す男

「関白様に顔を覚えて頂いているとは、大変嬉しく存じます」

俺はそう言いながら頭を下げた

「その美しさをこの前久が忘れる事、出来ようはずが無いでおじゃる!」

前久はニコニコしながら俺を見ている、言葉遣いが雉麻呂と似てるけど本物の公家さんは違うなと感心しながら返答を返す

「関白様はご冗談もお上手ですのね」

「冗談ではないのじゃがのう、海千山千の公家の世界を渡ってきたのじゃ、そう思われても仕方ないのう・・・ホッホッホッ」

そう言いながら二人で微笑んでいると前久が真剣な眼差しとなり俺を見ながら話しかける

「それはさて置き、何か用件があるとのことで参られたとか?この前久に出来る事でおじゃるか?」

首を傾げながら話す前久

「単刀直入に申し上げます、信長に右近衛大将の位を賜りたく、関白様に御助力願えないかと恥を忍んで参りました」

俺は頭を深々と下げながら前久にお願いをする

「ふむ、右近衛大将でおじゃるか・・・確か公方様が求めていらっしゃる官位でおじゃるな」

「・・・・・・」

俺は何も喋らず前久を見つめる

「よいでおじゃる!帝にお伺いをたててみるでおじゃる」

「関白様にはお手を煩わさせてしまい申し訳ございませぬ」

「よいのでおじゃる、麻呂も今の将軍は好きではないでおじゃる・・・ほっほっほっ」

「ふふふっ」

二人は顔を見つめあいながら愉快に笑っていた

関白近衛前久の力により、信長は右近衛大将となって、現将軍の官位を上回る事となった

そのことにより、将軍の力は底辺まで落ち、将軍が持っていた名声と権威は全て信長の下に集まる事になっていた

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