第六天魔王
迫害され続け、堀、塀、土居を増やして強度を増し、いつの間にやら要塞と化した寺。この乱世を象徴するかのような、城と言って良い建物を俺は見ていた。
「摂州第一の名城と言われた石山も、守る人間が浮き足立ってれば、その辺の砦よりも貧弱そうね」
そう呟きながら石山を見る俺、石山は完全に織田軍により包囲されていた
「強欲似非坊主には先が見えてないんだろぅ。上人さん追い出したまでは良かったが、民がいうこと聞かないってな感じかねぇ。上人さん捕まえて、監禁出来なかった時点で詰んでるのが、理解できない馬鹿な奴らだよ」
相槌を打つかのように話し出す鴉
「姫さんはこうなることわかってたんだろ?本願寺が割れることがさ」
「・・・・・・」
おれは黙って鴉の話を聞く。
「別に姫さんを責めてる訳じゃない。力を付け過ぎて、旨い汁吸い続けて、腐敗してる生臭坊主が、守るはずだった民を騙し戦に駆り立てる。遅かれ早かれ本願寺は叩かれてただろうさ。泣くのは何時でも弱い奴らだ。それは勘弁ならねぇ。でもあんたは上人さんの心を動かした。そして被害を最小限にしようとしてくれた!感謝してるんだぜぇ、上人さんだってわかってるよ。全てわかった上で動いてこうなった、出来たら戦にしたくは無かったんだろうがな」
苦笑いしながら俺を見る鴉
「潰さなきゃならないものは遠慮なく潰す!でも時間が許す限りは説得したい。それぞれの事情がある事などわかっている。誰かがやらなければならないのよ。どんなに笑われようが、どんなに無謀だと言われようが、乱世は終わらせなきゃならないの!そのためにはあたしや兄様は天魔と言われ、憎まれてもかまわないわ!その覚悟をこの戦で見せなきゃならない」
「・・・・・・」
鴉は悲痛な表情をして俺を無言で見つめていた。
俺は降伏を促すために使者を石山に送った。
「あの石山にも弱い民が残ってるわ。出来れば助けたい、勧告して出て来た者は助けるわ。でも勧告を無視し徹底抗戦すれば皆殺しにする!それが女子供であろうとも!それがあたしの罪、いつかその罪の重さで狂うかもしれない。もし狂ったら私を殺してね、孫市」
俺はそう言いながら心の中で泣いていた
「俺はヤタガラスだぜぇ、外道に落ちないように導いてやるよ!姫さん」
石山に篭った連中は降伏を拒否、徹底抗戦の構えを見せた
その際、逃げ出した民は少なからずいたが、残った者も多くいた
俺は石山本願寺を総攻撃し、立て篭もった人々を皆殺しにして、石山本願寺を焼き尽くした。
石山の反乱に同調しようとした織田領内の本願寺拠点は、顕如の表明もあったが、この一連の顛末を聞き、武器を捨て大人しくなった。
そして俺も信長と同じく、敵対勢力からは第六天魔王と呼ばれることになる。
「市、すまない。重荷を背負わせてしまった」
信長が俺を前にして頭を下げている。
「いいのよ兄様、覚悟もしてたし、兄様だけに重荷は背負わせないわ」
「わしも市も死ねば、地獄行きじゃのう」
「兄様と一緒に地獄巡りなら退屈しないですみそうだわ!」
「ふっ、言うわ」
二人は出来るだけ明るく振舞おうとしていた。




