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お市の天下  作者: 女々しい男
33/62

孫市

信長は近畿内の三好方の残存勢力を駆逐すると、将軍に謁見し、周辺大名に上洛するように要請していた

義秋はその要請を聞き入れ、周辺大名に使者を出していた。そんな時期

「市、どれだけの大名がくると思う?」

信長は俺を見ながら楽しそうに話しかける

「今、上洛するということは、織田家に下る事と同じだと、わかってるだろうからね。来るなら丹波の波多野、丹後の一色、若狭の武田、北近江の浅井、大和の弾正位かしら?まっその辺の豪族も、それなりには来るだろうけど、大手はそんなもんじゃないの」

「越前の朝倉はこぬか?」

「来ないでしょう、織田家は格下だと思ってるだろうからね。それに自分達だけの生活を豊かにする為に、重税して、民を泣かせて、一揆が多発してるから動けないのもあるでしょうね」

「なれば次は朝倉か」

「あそこは潰さないとならないでしょうね。ただ心配があるとすれば、浅井が裏切る可能性が高いわ

「なっ!それはない!浅井が裏切るなどありえぬ!長政が我を裏切るなどありえぬわ!」

信長は立ち上がり、怒りに震えながら俺を見る

「あたしもそう思いたい。でも浅井は朝倉に恩義がある。長政は義理堅いわ。兄様が好きになってしまうほどに・・・でも非情になれない男、選択を誤る可能性が高いわ」

「・・・・・・」

「どうする?兄様、浅井潰せる?長政を切ることが出来る?」

「・・・・・・」

「長政の心がどうであれ、長政の周りが兄様に戦いを挑めば、長政は彼らを見捨てることが出来ないわ。そんな男よ長政は・・・」

「お前はどうするのだ?長政を切れるのか?犬を悲しませることが出来るのか?」

信長は悲しそうな目で俺を見る

「切れるわ、いや切らなきゃならないわ!それがこの乱世を終わらせる為だと思うもの!でもやれるだけはやってみるつもり、たとえそれが無駄になろうとも、やるだけやって後悔は残したくはないもの!」

俺は信長の顔を見つめていた

「そうか、市に任せる。もし長政が裏切れば、我が引導を渡してやろう」

信長の目に深い悲しみが映っていた

そんな時、火急の知らせが舞い込む

「お館様!本願寺顕如様がお見えです!」

菊が慌てた様に信長に話しかける。その後ろに顕如と数人の人がいた

「信長殿、この様な姿で申し訳ない」

煤だらけで、ところどころ破れた法衣を着た顕如が信長の前にきて話し出す

「どうした!顕如殿、何があった!」

「この顕如、詰めがあもうござりました。強行派に石山を乗っ取られました」

「なっ!」

「・・・・・・」

信長は驚き、俺はやはりそうなったかと思っていた

顕如は俺と会ってから、私服を肥やしていた僧侶を次々と破門にしていた

それなりに注意はしていたのだろうが、本願寺内部はほとんど腐れていたのだろう

「後ろにいる孫市や頼廉の手助けで命からがら落ち延びた次第、面目次第もございませぬ」

顕如はそう言いながら頭を下げていた

「いや、顕如殿が無事でなにより、この京に寺を用意させる。そちらに移り、民や心ある僧侶を導いてやれ。石山にいる生臭坊主は、この信長が成敗してくれる!」

「ありがたきお言葉、この顕如できる限りの事はいたしまする」

「市!兵を集めよ!石山本願寺に兵を出す!急げ!」

「はっ!」

俺がその場を去ろうとした時に顕如から声をかけられる

「お市様、この孫一を連れて行ってもらえぬやろか?役に立つ男やで」

そう言って顕如は孫市を指差しながら笑った

「雑賀衆の孫市や、人にはヤタガラスの孫市とも言われとるが、役に立って見せるぜっ姫さん」

顔は笑っているが目は笑っていない孫市が俺を見る

「あんたが有名な雑賀の孫市なのね。役に立たなかったらその辺に捨てるわよ、鴉!」

「そいつは手厳しいな、まっ見てから判断してくれ。よろしくな姫さん」

「こちらこそよろしくね、急いでるからいくわよ!鴉!」

「あいよ!姫さん!」

そう言って俺たちは石山本願寺に向かった

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