堺
「雉麻呂様が体験した戦など教えてください!」
「んっ?鶴千代でおじゃるか。また勉強熱心じゃのう、しかしタダでは教えられないでおじゃる」
ニヤニヤした顔で鶴千代を見る雉麻呂
「何か対価が必要なのですか?」
「そうでおじゃる、何事も対価は必要でおじゃる」
困った顔をして答える鶴千代
「私には対価に見合う物をご用意できる気がしません」
「ふふふっ、できるでおじゃる。いやお主しか出来ないでおじゃる!」
「それは何で御座いますか?この鶴千代出来る事は致します!」
「良い心がけじゃ、それならのう(ごにょごにょごにょ)を持ってくるのじゃ!」
「えっ?そのような物に価値などあるのですか?」
「幼いそなたにはまだわからぬだろうが、世の男達はその物を大切にするのでおじゃるよ」
「そうなのですか!わかりました!すぐ貰ってきます!では!」
そう言ってダッシュで市の所に走っていく鶴千代
「なっ!待て!素直に貰ってくるものではっ・・・あっ!」
鶴千代を止めようとしたが無理であった
「お市様、欲しい物があるのです!駄目でしょうか?」
俺の前に鶴千代が来てお願い事を言ってきた。何か物を強請る事など無い鶴千代が俺におねだりするとは、うれしくなり笑顔で話しかける
「鶴千代が私におねだりするとはうれしいわ、何がほしいのかしら?何でも用意してあげちゃうわ!」
「お市様の下の毛を頂戴したいのです!」
笑顔で話す鶴千代
「「ぶっ!」」
驚く俺と虎
「どっどうして、そんな物が欲しいのですか!」
「雉麻呂様が持ってきたら、戦記を聞かせてくれると仰ったのです!」
「・・・虎、捕まえてきて」
「御意!」
ボコボコにされ、簀巻きになって庭に放置されている雉麻呂がいたという
雉麻呂のせいで気分が悪くなった俺は雉麻呂を除く、皆を連れて堺に遊びに行きていた
「さすが堺ね!活気が違うわ。こんな町がもっと増えればいいのにね!」
「津島と比べるまでもない賑わいですな!」
周りをきょろきょろしながら話す犬
「姫様!この簪など素敵ですよ!こちらの櫛もいいわ!」
虎が女に戻っていた
「なんと!真っ黒の人がいるで御座る!あっちには髪が黄金色の人が!」
熊は外人にびびっていた
「姫様、流石日の本一の町で御座いますね!異国の文化があちらこちらにありまする。ここを抑えた信長様の目は確かで御座いますね!」
鶴が話す言葉を聞いて、お前やっぱちがうわと思う俺がいた
そんな時、声をかけてくる恰幅の良い商人が俺に声をかけてきた
「失礼ですが、お市様ではございませんか?」
「どこかで見た顔ね?ごめんなさい、誰かしら?」
とぼけたように知らん顔をしてみる俺
「この宗久、顔と名前を覚えられていないとは商人として、まだまだに御座いますな」
それがわかった上でおどけたように話す宗久
「ふふふっ、ごめんなさいちょっとからかっただけよ。今井宗久殿」
「かないませぬな。この様な場所ではなんですので、我が屋敷にご招待したいのですが、よろしいですかな?」
「別に用事もないからいいわよ」
そうして俺は宗久の屋敷で接待を受けることになった
「そう言えば、宗久殿は弾正や顕如殿とも交流があるのよね」
「隠せませんな。弾正様は茶の友人でもありますし、顕如様はお買い物のお得意さんではありましたが・・・」
「どうしたの?歯切れが悪いわね?」
「近頃、本願寺はんとの商売があんまりありまへんのや、どうしてでっしゃろな?昔は大層鼻薬やら、硝石こうてもろてたんですが・・・」
「本業に戻ろうとしてるんでしょ。それにその商品もどうせちがう人に売るつもりでしょ。誰に売るのかなんて教えないでしょうけど」
「ほとんどが織田様や、信長様は火縄銃の有用性を良く知ってなさる」
「織田が火縄を有名にさせたら、あんた達は大儲けということね」
「火縄は織田様と本願寺様がお得意さんやったのに誰かはんが動いて、本願寺はんが買わんくなって、商売上がったりですがな」
顔は笑っているが目は笑っていない宗久
「ちょうどいいわ、本願寺は近いうちに大掃除するはずだわ。だから手伝ってあげて、タダでとは言わないわ!堺の代官職と織田家の御用商人にしてあげる」
「ほんまでっか!」
「でもね、裏切れば潰すわよ。堺ごとね・・・フフフッ」
「おおっこわっ、しかしおいしい話ですな。まかせとくんなはれ」
「頼んだわよ、宗久」
「畏まりました、織田の姫様」
それから宗久から持ちきれないほどの反物や南蛮品を貰って、うはっうはっで俺は帰っていった