半蔵の涙
「竹千代、忙しいのにわざわざ来てもらって申し訳ないね」
「いえいえ、今川もまだ纏まっておりませんし、三河のような田舎より、武田も今川の方に甘みを感じておりましょう。して動かれまするか?」
そういいながら俺に挨拶をして、今後の動きをどうするのか尋ねる家康
「まだ動いたとの報告はないしね。こちらも事と次第によってはそれらしい戦も無いかもしれないわよ・・・フフフッ」
「またなにやら動かれますな、お市様」
「あっそうそう竹千代にお願いがあるのよ、いいかしら?」
「お市様からのお願いとは、この竹千代に出来る事で御座ればどのようなことでも」
「伊賀の服部、藤林、百地を諜略して!」
「畏まりまして御座います、おい半蔵を呼べ!」
「呼ばれずとも推参仕りました」
どこからともなく、家康の後ろに片膝を付いて頭を下げる半蔵
おおっ、さすが戦国の闇を生き抜いた男、忍者半蔵すげぇ~って思う俺
「聞いておったか、半蔵出来るか?」
「条件次第で御座ろう、松永よりも報酬が良ければ寝返りましょう」
この時代の忍者は金で動く、主家を持つ忍びの里もあるが伊賀や甲賀は主家を持たずに報酬のみで動く忍び里であった
「報酬?少ないだろうけど各3万石でいいかしら?」
「「なっ!」」
驚く家康と半蔵
「そっそれは我が服部本家を大名として扱うと仰せか!」
「うん、百地と藤林も各3万石で話させるつもりだけど、少ないから無理かしら?」
「百地や藤林も大名にされるという事に御座いますか!我ら忍びは日陰者、足軽にも劣る立場の者に御座いますれば!それに合わせて9万石の采配などお市様の一存ではできぬ事かと!」
半蔵は先ほどまでの冷静さを完全に失っていた
「あっ采配なら大丈夫、あたし兄様から伊賀と甲賀貰えるからさ。それあげるから!それに織田が費用を全て受け持って、都から伊勢に跨る街道を作るから、伊賀は街道の中間地点となるから実石高はそれ以上になると思うけど無理かしら?」
半蔵は涙を流し、泣きながら平伏して答えた
「この半蔵、命をかけて伊賀を説き伏せて参りまする!」
「よかったの!半蔵、お市様の期待背くでないぞ!」
家康も涙を流しながら半蔵に声をかけていた
これにより伊賀の忍びは織田家に臣従した
信長は岐阜を出立し、六角家居城である観音寺城を通過した所で三好軍と対陣した際、六角家が予想通りに反意し、織田軍に対して攻勢をかけるが供えをしていた織田軍に抑えられたところを浅井が後方を攻め立てたため壊滅し、その勢いのまま三好軍を粉砕し、都を占拠し上洛を果たした
伊賀は伊勢を攻めず、逆に大和の僧兵達を攻めて追い払った
俺は別働隊の全権を家康に渡して、遠江を攻めるように指示してから僅かな共を連れて都に着いた。その時お市一行の周りには、一行に気付かれない様に伊賀の忍びがひしめく様に俺の警護にあたっていたと言う