覚慶
「お姉様ぁ~」
少し見ない間に、大人の階段を高速エスカレーターで上り始めた美少女に俺、後ろから抱きしめられました
「んっ!お犬じゃないの!どうしたの?迎えに出向いてくれたの?」
浅井に預けていたお方を連れてくるように、信長から依頼されて、小谷に着いた俺は、最高のお出迎えに歓喜していた!その時、うちの駄犬が反応しかけた自分を一生懸命抑えて、悶えていたのは無視した
「うん、旦那様も一緒!」
溢れんばかりの笑顔で答えるお犬。俺は娘が嫁に行ってしまい、どうしようもない悲壮感を漂わせている父親の様な顔をして、その後ろにいる長政を見た
「なんだ、お前も一緒か、尾張の件は有難う」
「えっ!この長政、お市様に嫌われておりますかな!」
喜んでもらえると思っていたのに、違う反応でうろたえる長政
「いやいや、そうではない、そうではない、多分そうではない」
「いま、多分とおっしゃったような・・・ブッブッ」
そんな長政を無視して、気分を変えて微笑む俺と手をつないだお犬は城の中に入っていった
「ところで兄様が預けたお方はどちらに?」
「今こちらにお連れするようにしております」
そこに坊主姿の男が広間に入ってきて、長政は上座から下りて彼に上座を譲る
「お初にお目にかかります覚慶様、織田上総介信長が妹市と申します」
俺は深々と頭を下げた
「おおっ、そなたがお市殿か!長政の嫁も大層、予の心を驚かせる美しさではあるが、お市殿はまた一段上じゃのう。わらわの嫁に迎えたいほどじゃのう」
「またまたご冗談を」
「冗談ではない!誠の事ぞ!どうじゃ嫁の話考えてはみぬか?」
虫唾の走るような舐めまわすような視線で俺を見る覚慶
お前!まだ坊主だろって思ったが口に出せないもどかしさ
「信長が御身を岐阜に招く準備整いまして、お迎えに参った次第、そのような話はまた後ほど」
俺は鳥肌を立ててしまうほど気持ち悪かったが、堪えて話をした俺はすごいと自分を褒めたいというか、この頃多くないかこのパターンって思ったのは内緒
「であるか、ではそうそうに参るとしよう!」
「では猿、準備を急げ!」
「承知!」
「えっ!」
二人が反応した。なんで?長政が反応した?
どうやら長政は勘違いしたことに気づき、頬をかきながら話し出す
「それがし、幼名が猿夜叉丸なものでつい」
「いや、知らぬとはいえ、すまなかった」
気まずい空気が流れたが、そこは気にしたら負けだと自分に言い聞かせて、その場をあとにする。なんてややこしい夫婦だと思ったのも内緒
俺はもう少しお犬と居たかったが、そうはいかず一泊も出来ずに岐阜に戻る事になった。チッこんなことなら、獣達の誰かだけに行かせれば良かったと後悔しながら帰路についた
「兄様、ただいま戻りました」
「うむ、お前の目に覚慶はどう写った?」
「飾りには丁度いいかと、ただ良く見張らねばならぬ御仁かと」
「そうか、我もそう思う。十兵衛を付けるがそれでも良いか?」
「はい、それがよろしいかと」
「都が我らを待っておるの、楽しみじゃ」
「わたしも楽しみでございます・・・フフフッ」
俺は信長と笑いながら今後の対策を話し合っていた