お歯黒の策
秘密裏に麻呂が描いた図面通りに、弾正が将軍を討ったか!たきつけた甲斐があったでおじゃる
将軍が居なくなったのう。空白の将軍職に名乗りを上げるとしようかのう
これでも麻呂は、血筋からも、役職からも、将軍となることは出来るのでおじゃる
それで上洛の大義名分が出来たというわけじゃが、まだ動けんのでおじゃる
偽うつけが伊勢に侵攻してからじゃのう。敵を増やせば戦力が分散するでおじゃる
いったい麻呂の相手は誰がすることになるのやら、楽しみでおじゃる
麻呂が動けば武田、北畠、本願寺も加勢するとの約定はもらったしのう。ただ三木が曖昧なのが気に食わないのう
策多きものが勝ち、策少なければ負ける。のんびりとしていた訳ではないのじゃ
外に武田、今川、北畠、内に本願寺では負けぬ。これで負けるわけが無いのう。信長の首貰ったのじゃ!
「元康、お主信長をどう思うでおじゃるか?」
笏を口元に当て目は相手を威圧するような目で問いかける
「好き好んで敵に回しとうは御座いませんな」
「素直じゃの、亡き雪斎も言っておったのう。奴はうつけの振りをしておるだけなのだと、中身は才気あふれる男なのだとな。奴はわしの考えと正反対、ぶつかるのは定めじゃろうて、上洛は建前じゃ、奴が持っている玉を奪いに行くのが本音でおじゃる!」
「お市様ですか」
「そうじゃ、必ず手に入れるのじゃ!手に入れる事が出来ないのであれば、壊すまでじゃ!」
「玉を奪われれば地の果てまで奪いに、壊されれば誰彼かまわず暴れる、竜となりましょう。よろしいので?」
「あれを手に入れたものが天下を得れる。麻呂はそう確信しておるのじゃ、それにその信長もあっさりいなくなるかもしれないでおじゃる」
雪斎は市には手を出すなと言っておったがのう。信長は始めに退場するかもしれんでおじゃる
「織田家との戦、先方は三河衆にやらせる大将はお前じゃ元康!」
「先方の誉れ、有難く頂戴いたします」
何が先方じゃ!お歯黒め、俺の三河を使い潰すつもりか
「姫!姫!!一大事じゃ。将軍が暗殺されたぎゃ!」
「うるさい猿!そんなの分かってた。時期が読めなかっただけ、これでお歯黒がいつでも動ける」
このまま時を重ねればこちらが不利になる。ジリ貧だ、伊勢侵攻の大義名分だって急いだんだけどな。危ういけど前に進まなければ天下なんて生きてるうちに取れない
「どうするぎゃ?姫」
「もう兄様は動いてる。もうそろそろ長島辺りか、長島一向衆の縄張りだから、一応は話し通してるから大丈夫だと思うんだけど」
そこにすごい形相をして、こちらに走って向かってくる犬
「姫!伊勢に侵攻した織田軍敗走中との事!」
「どういうこと犬!!!」
まだこの頃は信長は一向宗と敵対していない。だから大丈夫だと思った、そんな盲点をつかれた!読みが甘かった
「長島を通過して北畠軍との対峙した際、長島から一向衆が出陣し、お味方の背後を急襲、織田軍大敗とのことです!」
「兄様や十兵衛はどうなった!」
「お館様、明智殿共に消息不明との事!軍も被害が大きく、体制を整えるのは時がかかるようです!」
さすがはお歯黒一筋縄ではいかないか。信長すまない、今回の痛い授業料は倍返しで返してやる。だから生きてろよ!信長
「尾張に向かう!ここは頼んだわよ半兵衛!守り通して!」
「はっ、こちらはお任せください!」
「行くわよ、猿!犬!熊!」
「「「御意!!!」」」