分岐点二
「浅井を潰すとはどういう意味ですか」
顔付きが変わりやがった。この感じ、どこかで、あっ信長に似てるのか
信長を素直にさせて礼儀正しくしたらこいつになるのか!やべぇ好きかも
いやいや・・・そういう意味じゃなくてね。ほら男が男を好きになるみたいな
いやいや・・・違うよ勘違いしちゃう駄目よ。中身は男だけど外は女だから!
いやいや・・・おかしいねそれも、う~ん中身が好きなのよって相手も俺も男だわ
あっ肉体関係は嫌だけど好きなタイプ、それでいこう!
「言葉が分からないような人じゃ無いと思ったんだけど、あたしの勘違いかしら?」
そんな感情は抑えて挑発するように長政に問いかける俺
「そこまでじゃ市!それ以上は・・・」
市が言いたいことも分からぬでもない。今の織田家は尾張、美濃を完全に支配できている。それに比べてたった近江半国しか持っていない、浅井に対しての織田家の行動は、市からすれば弱腰外交だとうつるのだろう
お歯黒や甲斐の虎を気にして動かなければいけないが、浅井や北畠を気にする必要など市が思うように確かに無い。攻めるのは二ヵ所伊勢、近江(飛騨は虎との中和地帯と考えたほうがよいか)しかし一斉には伊勢も近江も相手に出来ない。お歯黒や虎が面倒だからな
市は伊勢と近江を天秤にかけながら話してるな、いやお犬の為か!
ならば市の行動と発言が納得できるわ!
しかし、我は長政を気に入った助け舟を出すか
「越権行為ぞぉ!下がれ市!」
俺が現れた時に起こった動揺から立ち直った信長は俺を抑えにかかる
「今回は兄様のお顔を立てて下がりましょう。長政殿これにて失礼」
そう言いながら長政に微笑んでから部屋に戻る
「すまぬな、あれが市じゃどう思う」
「素晴らしき女性かと、この短いやり取りで伝わるほどに、この長政、今回の一件を一生の不覚と思う事になるでしょうな」
「それは市に嫌われたからか?それとも市じゃなく犬にしたことか?」
「どちらともです。上には上がいるのだと、即決即断は良い事でございますが、思慮浅く物事も確認していない状態での決断は、後々後悔することになると痛感致しました」
「そうか我にとって市は特別よ、だから少し小細工をした。ただし犬が劣っておるわけでもない。まして犬を泣かすような事があれば俺よりも市がこわいぞ!」
鋭いが何処か優しい感じのする目で長政を見る信長
「肝に銘じておきます!」
頭を軽く下げ、生涯手に入れることが出来ないだろう人の後姿を見つめる長政
しばらくして、長政とお犬は祝言を上げ、織田家と浅井家は完全な同盟国となった