信長の覚悟
織田軍本隊を引きつれ俺は小牧に向かっていたが次々と情報が入ってくる
「伝令!清洲はまだ落ちておりませぬ、亡くなる前に平手様より臨時城代を受けた池田恒興様が現在清洲城にて防戦中とのこと!」
「小牧に森様、金森様、佐久間様到着、御指示を待っております!」
「尾張清洲周辺各城、亡き平手様の命により防衛に徹しております!」
「尾張末森城、亡き平手様の命により周辺豪族出立し包囲したとの事!」
「尾張三河国境付近での変化無し!」
「尾張伊勢国境付近での変化無し!」
流石は平手の爺様だな、こうなるかもって策を打ってるわ
三河、伊勢国境の報告まであると言う事は最悪な状況は回避できているのか
他国の介入があれば、早急には解決出来ないが信勝は用意も出来ずに爺様に動かされたな
東海道一の弓取りと呼ばれるお歯黒が動けばひっくり返されてしまうが俺が動く事も爺様には読めてたんだろうな恐れ入る流石信長を養育しただけはある
「小牧にいる軍勢は佐久間を総大将とし、佐久間の下知に従い清須に向かえ!信勝は生け捕りにしろ!ただし抵抗すれば、殺めてもかまわん!!!」
信勝には聞きたい事もある、生かせば害しかないのは分かっているのだが、信長には百害あって一利は有るのだろうな、そう思い込もうとしているか
俺も出来れば殺したくは無いがどうするかは信長が決めるだろう
「我らは先に末森を落とし、三河国境付近にて待機、お歯黒が出たら止めるぞ!急げ!!!」
お歯黒より先にあいつが来るかな?竹千代あいつ俺のこと覚えてるかな?
まっいいか、策も何個か仕込んでるしな、出たとこ勝負じゃ
全てがうまく収まった、お歯黒はおろか竹千代さえ動かなかったので俺だけ先に清洲城に入った
そこには捕縛された信勝、柴田勝家、林秀貞がいた
「市!この縄を解かせろ!わしは織田家の正当なる当主ぞぉ!」
足をじたばたさせながら暴れる信勝
「「・・・・・・・」」
勝家も秀貞もあきれたような目で信勝を見ていた
「信勝兄上、なぜ平手の爺を切ったのです?」
俺は出来るだけ冷静になろうとしながらそう問いかけた
「あの老いぼれはわしに向かってこう言ったのじゃ!」
(信勝様、信長様はこの乱世を終わらせる事の出来る素晴らしきお方です、出来ますれば兄弟手を取り合い助け合い天下を平定して頂きたい、このままでは織田家当主織田信長様を苦しめる事になるのです、伏して伏してお願い申し上げる)
「とな!俺が拒否するとあろうことか、わしに刃を向けよった!まっ脇差じゃったからな、勝家たちに取り押さえられたところをわしがすかさず大太刀の一振りであの世に送ってやったわ、最後にあやつが漏らした言葉が傑作よ、信長様いたらぬ爺で申し訳ありませんとな・・・はははっ!」
信勝はさも愉快に笑い転げていた、勝家や秀貞は苦痛な表情をしながら顔を下に背けた
「おまえ・・・!」
殺す!俺は初めて人を殺したいと思った瞬間、後ろに気配を感じた
「聞いたか?母上」
土田御前を連れて信長がそこにいた
「信勝お前は・・・」
土田御前は震えながらおろおろと泣き崩れた
「母上!早くこの縄を解いてくだされ、痛くてかないませぬ!早く早く!!!」
母親がいたので何とかなると思ったのか信勝はまた暴れだした
「信勝せめてもの慈悲じゃ我が介錯してやる!首を出せ」
信長は小姓から太刀を受け取ると切っ先を信勝に向けた
「ひっ・・・!!!」
信勝はその刃から逃れようとしたその時
「信長殿、後生じゃ信勝を許してほしいのじゃお願いじゃ信長殿」
土田御前が信勝を庇いながら信長にそう伝える
しばしの沈黙の後
「御免・・・!」
信長は太刀を振り下ろし信勝の首を飛ばした
「あぁ~のぶかつぅ~!!!信長ぁお前は鬼じゃ!実の弟を殺した鬼じゃぁ!!!」
土田御前は信勝の首を抱きしめ信長を睨みながら叫んでいた
「是非も無し・・・」
信長はそう呟くと俺に向かって微笑んだ、それを見た俺には泣き顔の様に見えた